Calling26 決心

――研究所、Kの自室にて。

 私らは私の自室で何を言うでもなくただ静かに時を過ごしていた。

 しかし、やはり今回ばかりは……

「なぁ特務官さんよ」

「ここならオペレーターで大丈夫です」

「そうか。なぁオペレーター、私はちょっと考え事がしたい。暫く放置しといて欲しいんだ」

「……珍しい事もありますね。カイトくんには伝えておきます」

「ああ、頼む」

 今はカイトと話せる自信がない。カイトもまたおもちゃにされていた事を私が思い出してしまうからだ。それにカイトもあんな事は思い出したくはないだろう。


 どうするべきか?

 まずはLと戦う、これは揺るぎ無い。これがないと始まらない。

 戦った後は? 

 負けるつもりはないがどっちにしても大怪我はする。私もLも。組織に帰ってドクトルに診てもらう必要はあるだろうな。

 帰りの足は?

 まぁオペレーターかカイトに手配して貰うか、或いは自力か。


 Lをどうする?

 決まっている。本能を叩き起こして本当の化物きょうしゃになってもらう。


 叩き起こし方は?

 言うまでもない、か。


……

…………

……………………


「よし! やるか! 戦いだ、戦い!」


 そうだ、それこそ一番に必要なものだ。

 手配しよう。

 幸い鈍りはあの取っ組み合いで取れた。


――数日後

 私はだだっ広いトレーニングエリアに来ていた。野球ドーム何個か分くらいはある大きさだ。これなら暴れるに丁度いい。

 そして何やら変な装置のついたバトルスーツを着せられた。恐らくは計測機器の類だろう。窮屈な事この上ない。

 が、Lと戦う為だ、甘んじて着けてやる。んで暫くするとLも来た。

「よぉ、L。調子はどうだ?」

「状態は良好。Kも良好の様に見える」

「ああ、そうだな」

 Lにあの時の様子はない。だが同時に目から光が少しばかり消えている様にも見えた。恐らく薬を強めに打たれたんだろう。


「なぁ、戦う前に一つ賭けをしないか?」

「賭け?」

「ああ、戦って負けた方が酒を奢るって賭けだ。悪くないだろ?」

「……ギャンブルはあまり益のあるものとは思えませんが」

「何だ? 負けるのが怖いか?」

「むっ……良いでしょう、受けます」

「ははっ、そうこないとな」


 よし、これでいい。これくらいがいい。今はそう。ガチガチに固まったLの思考を多少なりとも崩してやる必要があるからだ。


「さあて、始めるとするかねぇ」

「では、いきます」


――ピー! <スタート、シマス>


 Lは一回壊す必要がある。

 丁寧に、な。


 

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