Calling11 信託
ヴェインの口から出た言葉。それは意外でもない事だが、考えるべき事ではあった。
「仕事先で私に囲まれた、か……」
「ええ、厳密には仕事から帰ってくる時でしたが」
「初めて聞きましたよ、そんな話」
聞くことにゃ、ヴェインに別のバックアップがついてる時に偶然出くわしたらしい。そいつには口止め、というより感知した瞬間通信を切ったそうだ。
「カイト君やオペレーターさんでなければ私より早く感づくのは不可能ですからね。都合がよかった」
「……となると組織側に映像記録は一切ない訳だな」
「はい。あんな戦いを他者に見せたくはないです。お二人と御三方は別ですが」
私に囲まれて、それで殆ど無傷で帰ってきた。それを聞けばなんとなく想像はつく。
「……詳しく話たくなけりゃそれでいい。要点だけで良いぞ」
「……端的に言えば貴女なのに弱すぎました。もちろん、彼女達は紛れもなく化物ですが」
「ああ、私もそれは思った」
「それに彼女達は本能を奪われていた……おのれ、研究所の奴らめ……」
ヴェインもキレている。彼女らの扱いに。間違いなく化物の彼女らに対するクズ共の勘違いの甚だしさに。
「彼女らに託されました。『L』への手がかりを。だから貴女に渡します。貴女ならきっと直感する筈だ。これらの手がかりから、奴の居場所を」
そう言ってヴェインは小さなアタッシュケースに丁寧に並べられたガラス玉の様に綺麗なコアを見せてきた。
ああ、奴のコアと一緒だ。あの研究所の奴と。
「ヴェイン、すまないな。ホントに……」
「いえ、そんな。私は貴女にあの時救われた。なら貴女を超えるかもしれない化物を助けない訳にはいかないでしょう? 化物との戦いを求める貴女へのせめてもの手助けです」
はは、ヴェインは分かってるなぁ……
「あんたも十分化物だ。最高のな」
「ははは、お褒めに預かり光栄、です」
「……ケイト、僕は弱い。それこそケイトと戦うなんて絶対に無理だ。でもケイトを後ろから支える事は出来る! だからその『L』って奴を探すの、手伝ってもいいかな?」
……カイトも成長したな。嬉しいねぇ。
「ああ、よろしく頼むぜ! 負ける気なんか毛頭ねぇがカイトがいるなら余計に負けらんねぇよ! もちろんヴェインもな!」
「「ええ!」」
然らば! 作戦開始だ!
『L』よ、待ってやがれ!
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