Calling7 奇妙

 扉を抜けて走ること数分、やはり監視の影も形もない。奇妙だ。

「オペレーター、解析は?」

『ダメですね。情報が足りなさ過ぎます』

『ボクの方もダメです。さっきの端末からはほとんどアクセス出来ませんでした。まるでスタンドアローンみたい……』

「りょーかい。もう暫く現地調達でやるわ」

 オペレーターとカイトが苦戦するとはなかなかやるじゃねぇか、この研究所。私を超える奴を作った、ってのに確信持ててくるぜ。

 さぁて、まぁ歩哨もカメラも無いんなら無いでそれ様にやるだけだ。この建物内を走り回って色々情報調達と転送、これを繰り返す。

「しっかし人っ子一人居ないってのもどうかしてら。もしかしてこの建物は廃棄でもされてんのかな?」

『うーん、映像からは新しい感じがするんですが……』

 カイトも訝しんでいる。と、その時……!


――シュンッ!


「うおっ! 危ねぇ!」

 突如として背後から飛来したナイフを後ろ手に掴み取り、あたりを見渡すが何も居ない。だがこれはトラップの類じゃねぇ、誰かが投げた物だ。

「何者だ? なかなか上手いじゃないか。姿を見せてくれよ」

 見えぬ敵にそう問いかける。軽い挑発のつもりだがノッてくるか?

(カイト、探り入れられるか?)

『入れましたよ。近いです』

 小声で通信を入れる。私が感知した相手だ。カイト側でも探れるはず。んで、カイトは信頼を裏切らない。

「どうした? 私はここだ、さぁかかってこい!」

 私の対処を一瞬だけだが遅らせた腕前は普通に褒めてやれる。少なくともかなり良い感じの生体兵器に違いない。


――カランッ


「そこかっ! 待ちやがれ! 勝負しろ!」

 音の出た方向に向かい、猫の如く跳躍する。距離は無ぇ、あの角の先に間違いなく居る。さあさあ出てこい、シケた場所だと思ってたがこういうのがあるなら結構結構……なんだが……

「おい、お前それどうしたんだ?」

 眼の前にいる奴、さっきナイフ投げてきた奴に違いねえが様子がおかしい。へたりこんでミリも動かん。動いてたのは確かだが……?

「返事しろよ。なんだ? ビビって声も出ねえのか? そんなんじゃねえだろ?」

「……」

「む……」

 後ろ向いてやがるし、マント被ってるから余計に分からん。だが無視決め込んでる訳でもないあたりやっぱ変だ。それに近くによってみたら分かったが何か凄まじい違和感が……

『け、ケイト……その目の前の者なんですが……』

『これはとんでもないですねぇ』

 私が違和感を感じた瞬間、カイトとオペレーターから同時に声がかかる。

「何がとんでもないんだ? まさかとは思うが……」


『はい、その者からはケイトと同じ様な反応があります』






 おいおい、冗談だろ?

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