第13話 医療区画

警報が鳴る。今月既に3回目の出撃だ。セルリアンの出現には、規則性が見えない。どこから生まれるのかもわからないから、後手後手に回らざるを得ない。セルリアンが市街地に出現した例はないから、今のところ市民に被害はない。だが、それが今後も続く保証はなかった。

「今回は、医療区画だとさ」

サイドワインダーが車内でスクリーンを指す。

「医療区画は郊外にあるからな、既に被害が出ているらしい。大型1、中型2が確認されている。現場に一番近いのが我々の小隊だが、知っての通り、他の隊はキョウシュウエリアの大規模な戦闘に駆り出されており、支援は受けられない」

数日前にキョウシュウエリアのサンドスター火山が噴火し、それに伴いセルリアンが大量発生した。中隊からも第2小隊以下が抽出されていた。

「あっちは激戦らしいね」

カバがつぶやく。

「留守番組にも、仕事がまわってきたな」

はははは。乾いた笑い声が車内に広がる。

「そういうわけだ。こっちの戦力からすれば、中型はともかく大型はキツい。医療区画の民間人避難を第1目標とする」

『それは困る!施設も守ってもらわなきゃ』

スクリーンに映ったのは、白衣の女性だ。医療関係者だろうか。

「勝手に回線に割り込んでは困ります、リョウ博士」

ジャガーが答える。知り合いだろうか。

『施設には、あの病気の治験データや設備があるのよ!動かせない患者もいるの!あそこが失われたら、研究は最初からやり直しよ!』

あの病気。アムールトラは、幼馴染のことを思い出していた。

「それはわかるが…動かせない患者がいるのか」

『聞いてジャガー、もう治験は始まっているの。一度カプセルに入ったら、終了まで動かすことはできないの。そんなことしたら』

「わかった。やってみよう。だけど、避難を最優先にするのは変わらない。いいね」

『…わかった』

すがるような目をして、スクリーンから博士の姿は消えた。

「やむを得ん。作戦を一部変更する」

現場までは、もうすぐだ。

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