第12話 撃破

疾風が走る。どどうど、どどうど、どどどどど。

黄色い光が疾るたび、あの硬かったセルリアンが削られていく。剛の爪が、痕を刻んでいく。

「すまんアムール、1体行った!」

カバが叫ぶが、アムールトラには届いていない。が、振り向きもせず無造作に振った拳が、小型セルリアンを粉砕する。

「あいつ…ヤバいな」

カバは多数の小型セルリアンに翻弄され、黒い肌にいくつもの傷を作りながらも、着実に仕留めていく。

「オオオオオオオッ!」

咆哮が轟く。それは雷鳴のよう。

高く高く跳躍したアムールトラの瞳に、理性は感じられない。そこにあるのは、破壊衝動。

「ウオオオッ!」

再びの咆哮とともに、渾身の拳が振り下ろされる。落下のエネルギーをも込めた一撃が、ついに大型セルリアンの「石」を捉えた。

ぱっかーん。

気の抜けた音が響く。大型セルリアンは、宝石のような輝きを撒き散らして消滅した。

「やったな、アムール!」

「オオウ、オオウ、オオオオオ!」

アムールトラは荒ぶる。その目の輝きは消えない。

「アムール、こっちも手伝ってくれ!」

叫んだカバの方を、アムールトラが一瞥する。そのまま疾る。進路上の哀れな小型セルリアンは、全て粉微塵になった。アムールトラの爪が光る。

「アムール!?」

カバは目を見張ったまま動けない。アムールトラの爪は、カバが死を覚悟するのに十分な圧を放っていた。

ぶぉん

爪が宙を切る。

「待たせたな」

アグレッサーの部隊長の、ケープライオンが、カバを片手で抱き寄せていた。その間に他のアグレッサーたちがアムールトラを数人がかりで押さえつける。

「アムール!聞け!もう終わった!」

地面に押し付けられても、アムールトラは抵抗をやめない。

「仕方ないな」

ケープライオンは、軽く拳を握ると、アムールトラの顎先を叩いた。

「グッ」

アムールトラは気絶したようだ。

「ケープライオンさん…これって…」

カバが自分を抱いたままのケープライオンに問う。

「報告には聞いていたがな。こいつは、幼少の頃既に野性解放している。強力なアニマルガールだが、コントロールが出来ていないのさ」

「そんな…」

カバはケープライオンを見遣る。

「あの…そろそろ…」

ケープライオンは、カバを抱いたままだ。

「なーに、いいじゃないか」

「いえ、ちょっと…」

カバはケープライオンの手を、そっとほどいた。

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