第14話 信頼
小隊の半数を囮として大型に、残りで中型を1体ずつ斃すのが基本スタイルだ。
「大型はサイドワインダーたちで抑えろ。私とカバ、アムールで中型を斃す。とにかく建物に近づけさせるな」
「はいっ」
降車と同時に散開。各自が為すべきことを理解している。数度の実戦を経験し、アムールトラも仲間たちに、背中を預けられる信頼を寄せていた。
「むしろ、信用できないのは、自分、か」
アムールトラは独り言つ。野性解放した結果、意識を失い、あまつさえ味方を攻撃しようとしたことを、仲間は誰も責めなかった。無論、アムールトラはその時のことを覚えてはいない。だが、破壊衝動と高揚感だけは思い出せる。そしてそれは、以前にもあったような気がしていた。
「いくよ、アムール!」
カバが中型の足元に突進する。ぐあっ。中型の腹部は大きく裂けた。直径1mを超えるギザギザの破口は、牙の生えた猛獣のようだ。そのままカバを飲み込もうとする。
「大口勝負で私に挑もうだなんて」
カバは中型の口の端をがしっとつかんだ。
「十年早いのよっ」
突進の勢いのまま、カバが中型を押し切った。横転した中型を、ジャガーが鋭い爪で引き裂く。そのジャガーを背後から襲おうとした小型をアムールトラの拳が貫く。ジャガーは振り返ることもなく、中型の石を一気に破壊した。
「次っ」
もう1体の中型は、大型に合流しようとしている。そこにははっきりと、意志を感じる。
「合流されたら厄介だ。その前に斃す!」
ジャガーが樹上を走り、アムールトラも地上からそれを追う。カバも意外に速いが、さすがに二人には少し遅れていた。
カタタタタタタ…遠くでカスタネットを叩くような連続音が鳴っている。サイドワインダーが尻尾の先で音を鳴らし、セルリアンを威嚇しているのだ。大型の一部が樹上から飛び出しているのが見えるが、サイドワインダーの威嚇にも関わらず、その行き脚は止まる様子がない。
中型が見えた。アムールトラはさらに加速する。
「きゃあああ」
後方で絹を裂くような声。
「カバっ」
アムールトラは急停止しようとするが、その横をジャガーが走り抜けた。
「私が行く!お前は中型を斃せ!」
アムールトラは止まりかけた脚をまた回転させ、突き進む。ジャガーに任せておけば間違いない。
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