第4話 びょうき

「いつもの発作だね、もう心配いらないよ」

診療所詰めの医師が柔和な表情で答え、お母さんは胸をなでおろす。この医師とももう顔馴染みだ。

「だいじょぶ?」

あいちゃんが心配そうにベッドを覗き込む。

「へーきへーき、もう落ち着いたから」

まーちゃんは顔色も戻って、静かに寝息をたてている。

「やっぱり、運動なんてしたから」

「何度も言うようですが、これは運動のせいじゃありません。まーちゃんは別に、身体が弱いわけじゃないんです」

「でも…」

「お母さん、心配なのはわかります。この病気が発症するこどもは、年々増えています。研究も進んでるんです。どうか、もうしばらく、もうしばらく時間をください」

医師は深々と頭を下げた。


まーちゃんが病気を発症したのは、4歳の時。最初は喘息や心臓病が疑われた。だが、臓器にも免疫系にもなんら問題はなく、もちろん感染症でもない。発症するのは子供に限られ、一時は集団ヒステリーすら疑われたものだ。

「でも、亡くなった子が出たってニュースで」

「はい。重症者だったと聞いています。ただ、この病気で亡くなったわけではないんです。合併症で亡くなったそうです」

発症者は次第に増えており、なかには命を落とす子供もいた。

現在では世界中の発症者は10万人を超えるという。とはいえ、発症者が増えれば研究も進む。サンプルが増えるということもあるが、こういうセンセーショナルな病気には予算がつくからだ。

サンドスター。動物をアニマルガール化させることで知られる、ジャパリパーク一帯で見られる物質。いや、物質かどうかさえ不明なそれが、発作に効くことが発見され、研究は加速した。ここジャパリパークの医療施設が充実しているのには、そんな理由もあった。

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