第3話 ジャパリパーク

「わぁい!」

待ちきれなくて、まーちゃんはゲートに向かって駆け出そうとするが、すぐにお母さんに止められる。

「走っちゃダメでしょ!危ないから!」

「はぁい」

「まーちゃんおこられたー」

今日も、あいちゃんが一緒だ。まーちゃんの両親は共働きで、フレンズ保育園の園児の親のほとんどがそうであるように、ジャパリパーク に勤務している。

今日はお母さんがまーちゃんを迎えに来て、これからお父さんのところに一緒に行くのだ。そのときにアニマルガールであるあいちゃんを、パーク内の宿舎に連れて行くのが常だった。

閉園間近のジャパリパークは、夕暮れ色に染まっていく。ゲートに向かっていく来園者たちと逆方向に歩くのが、なんだか特別な感じがして、まーちゃんはとても好きなのだ。

「あ、イエイヌさーん!」

まーちゃんが叫ぶ。視線の先にはアニマルガールのイエイヌがいて、まーちゃんのもとに駆け寄ってきた。

「おかえり、まーちゃん、あいちゃん」

「ただいま!」「ただいまー!」

二人はイエイヌに抱きつく。人間の数倍の膂力を持つアニマルガールだから、そんなことで揺らぎもしないはずだが、イエイヌはわざと倒れこんでみせる。もちろん二人は安全に抱えて。

「わあったおれたー」「たおれたー」

「あははは、二人とも大きくなったからねー」

心配そうなお母さんに、イエイヌは目くばせする。

「さて、今日は何して遊ぶ?」

「んーとね、んーとね。フライングディスク!」「フライングディスク!」

「よーし、じゃあ待ってて、今持ってくるから」

イエイヌが駆け出そうとすると、後ろから呼び止める声。

「あー、イエイヌ!遊んでてずるいわよ!」

カラカルだ。

「わたしも一緒に遊びたーい!」

これはサーバル。

ジャパリパークは広いから、お母さんも入れて6人でフライングディスクを投げ合っても誰の邪魔にもならない。こうして閉園時間まで遊んで、お父さんを迎えに行くのだ。

「あははは!」

「ちょっと、待って、よ、サー、バル…」

まーちゃんが膝をつく。顔色が悪い。胸を押さえて苦しそうだ。

「まーちゃんっ!」

お母さんが叫ぶ。

すぐにイエイヌが駆け寄り、抱き上げる。

「だいじょぶ、だから」

まーちゃんはそう言うが、イエイヌはお構いなしに担ぎ上げると、走る。まーちゃんに振動を与えないよう注意を払いながらも、診療所まではあっと言う間だった。

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