第6話 えんそく
バスは、渓谷を登っていく。木々は青々と陰を落とし、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。ジャパリパークの車輌は全て電動だから、野生動物もあまり警戒しないのかもしれない。
『どったんばったんおおさわぎー♪』
車内では園児たちがおうたを歌っている。ジャパリパークのテーマソング、「ようこそジャパリパークへ」だ。子供には少し難しい曲だが、歌い慣れているから、みんな元気いっぱいだ。音が外れている子もいるけれど、誰も気にしない。
「はいっ、到着ー!キャンプ場に着きましたよ!」
『はーい!』
「あれ?まーちゃん、なんかげんきない?」
あいちゃんがちょっとした違和感に気づいた。そういえば、一人だけ歌も歌っていなかった。
「ううん、だいじょぶ」
「バスによっちゃった?」
「そうじゃなくて…それより、カレーライス楽しみだね!」
まーちゃんは笑ってみせた。
先生と、一部参加した親御さんによるカレーができるまで、園児たちは広場で遊んだり、川遊びをして過ごす。ボランティアのアニマルガールたちが、ライフセーバーを務める。あいちゃんはまーちゃんを気遣ったが、どうやら杞憂だったようだ。
「さあ、ボートに乗って!」
ジャガーのアニマルガールが、子供たちを抱き上げてボートに乗せる。ラフティングにもつかえる大型のゴムボートだから、頑丈だし子供なら10人は乗せられる。
「たのしーい!」
川の流れは穏やかだけれど、局所的には速い。それがちょっとしたスリルになって、子供たちはキャッキャと歓声を上げる。
普通なら川下りした後は、ボートを引き揚げて車で戻るのだが、ジャガーは実にパワフルだ。オールを力強く漕いで、川を遡上していく。下りの倍ほどの時間をかけて、スタート地点まで帰ると、美味しそうなにおいが子供たちの鼻腔をくすぐり、お腹の音が鳴る。
「まーちゃん、へんなおとー」
「へんなおとー!」
まーちゃんはちょっと恥ずかしそうだ。
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