第12話 射撃音痴
「おおぉぉ…
カガセオがミョーミョーを光る眼孔で睨み付けて戦闘態勢に入った。
これを受け、ミョーミョーは右手の銃をカガセオに向ける。
車の中で聞いたが、ミョーミョーの光線は一日に一発しか放てないらしい。だが当たれば威力は凄まじく、人的には殆ど影響ないらしいが、霊的な物には効果抜群で、どんな大物怨霊にも大ダメージを与えるそうだ。
カガセオはその事を知らない。
その距離なら外す事はまず無いと思うが…
しっかり決めろよ!ミョーミョー!
「行っくよー!えーとねぇ…〝んでぽっ〟んー違う!違う!〝んぱぽ〟ん?違うよー…えーと…何だたっけ?…」
〝んぱぽ〟?
多分冒頭から間違ってるんだと思うが、光線の名前なんて別に何でもいいぞ!とりあえず今だ!撃て!!
「あっ!あ~!!あれ何何?何だろう?」
んん?
ミョーミョーはカガセオと向き合ってたのを止めて、カウンター端のキャシュレジスターの元に走り寄って行った。
なんか好奇な目で嬉しそうに眺めているが…
「チャチャ!これ何メタメタ?どうやって遊ぶのー?」
こらー!!
ミョーミョー何してる。闘いに集中しろ!
今、真面に闘えるのお前しか居ないんだぞ!
レジスター何か見てる場合じゃ無いだろ!
「ミョーミョーねぇ、このメタメタとも合体出来るよー」
知るかー!!
そんな情報どうでもいいわー!!
レジスターと合体しても、せいぜい会計早く成るだけで戦闘力が上がる訳じゃ無いだろーがぁ!!
「おいっ!!ミョーミョー!後ろっ!!後ろぉー!!」
ビーの呼び掛けも聞こえて無いのか、レジスターを見ながらニコニコしているミョーミョー。その背後に石腕を振り翳したカガセオが迫り来ていた。
「逃げろぉーおっ!!ミョーミョー!!」
〝バッギギギギャーーーン!!〟
カガセオの肥大した右腕は、大きな破壊音と共にミョーミョーをレジスターごと押し潰した。
終わった…
どうする…
チャミさんだけでも抱えて一旦逃げるか…嫌、せめて俺が囮に成って…
「ぐわわわわぁぁ…」
えっ?
カガセオが顔面に百円玉や十円玉の硬貨を、雨霰のように激しく浴びせられている。アイツ、無事か!?
「おのれぇぇ…おのれぇぇ…ぐわぁぁ…」
カガセオは破壊したレジスターを何度も叩いてたが、今度は後方のシンクの蛇口から噴射された大量の水を顔面にくらっていた。
「くらえー!チャプチャプーだー!ミョーミョー!」
デフォスタイルのミョーミョーがカウンター上に現れた。左手が蛇口に変わって水を噴射している。よく見ると右脚はシンクと繋がっているみたいだ。水道管とも繋がっているのか?…
「こ、こやつぅぅ…くげぇ!んごぉ!」
今度は厨房の冷蔵庫の扉がカガセオの後頭部を殴り、続いて天井からエアコンが落ちて来て頭頂部を直撃していた。
「アイ、アイ、アイア~ン♪アイ、アイ、アイア~ン♪メタ~ルメタメタ♪メっためたッ~♪ミョーミョーメタメタするよー♪メっためたッ~♪…」
突然店内に流れていたBGMが、ジャズからミョーミョーの何か分からん変な歌に変わった。そのリズムに合わせながら、カウンター上をミョーミョーと共にティースプーンやフォーク達が曲がりくねりながら踊っている。
カウンター内だけじゃ無い、天井からぶら下がるペンダントライトや外の吊り看板まで形を変化させながら踊っているじゃないか…
その光景は、まるで古い幼児向けアニメを見ているようだった。
その間もカガセオは、電子レンジやガスコンロなどの金属類から絶え間なく攻撃を受けている。
どういう事だ?
ミョーミョーはいったい何と合体したんだ?
まさかカウンター内部…いや、店全体と合体したのか?
コイツの合体範囲って、そんなに広いのか?
だとしたら…
正直、幼稚で面倒くさい奴だと侮ってたが…
チート級に強いぞ!!ミョーミョー!!
「な、なんだぁぁ…この撫物の星位置はぁぁ…?なぜ星位置が変わるぅぅ…?魂が宿った日は変わらないはずぅぅ…」
カガセオが作り出したホロスコープの太陽や月のマークが、クルクル移動して安定していない。
恐らくミョーミョーのホロスコープを見ようとしているみたいだが…
ミョーミョーは今、色んな物と合体と解体を繰り返している。
だからホロスコープがミョーミョーの誕生日を特定出来ない状態なんだ。
「チャハハハ…星占いが出来ないみたいっチャね!どうやらオッチャンはミョーミョーと相性最悪っチャ!…ン?ワチャ!ワチャ!まだ虫が居るっチャ!!」
「まだ目を開けないで下さいよ!てかっ、これ全部追い払うの無理です!ここはミョーミョーに任せて一旦店を出ましょう」
「任せるって…無理っチャ。ミョーミョーじゃ、ヤミオコシを鎮められないっチャ」
「いや、でもアイツの強さチート級ですよ。それこそスーパーコンピュータや空母とかと合体したら、世界征服も夢じゃ無い位の強さです」
「ドウル君…買い被り過ぎっチャ。ミョーミョーがスパコンと合体しても、ミョーミョー自体が賢く成る訳じゃ無いっチャ。猫に小判っチャ。空母と合体しても戦闘機を紙飛行機みたいに飛ばして遊ぶだけっチャ」
「へっ?…」
「ミョーミョーは戦闘下手っチャ。今も半分遊んでいるだけっチャ。まだ人形としても若いけど、多分あれは治らないっチャ」
せっかくスペック高いのに…アイツ大人の思考に成れないから、折角の性能を持て余してるのか…
まあ、本当に世界征服に目覚めて『人類を滅亡させてやる!』とか、言い出すパニック映画みたいな展開に成らんのなら、その方がいいかな。
ん!?…しかし待てよ…金持ちの外人にも人形売ったとか言ってたが、こんな性能の人形達を外国に売っても大丈夫なのか?
売った人形がミョーミョークラスなら、凄い兵器になるぞ。使い方次第では国一つが滅びかねん。
「チャミさん!チャミさんが売った人形達が戦争に使われる事は無いですよね?こんな凄い能力だと危なくないですか?」
「売った子は殆ど寝てばかりの子っチャ。それに愛鷹もそんな危ない子は、流石に人に売らないっチャ」
「寝てる?」
「人形達は寝てる時間の方が長いっチャ。長眠に入ると数ヶ月は起きないっチャ。前にも言ったけど、棚の人形達は殆どが寝ていて、今は動かない状態っチャ」
そうか。あの棚の人形、全部は動かないって言ってたな。
今起きてる人形は何体なんだろ?
「それより虫っチャ!真面に目が開けれ無いっチャ。何か良案ない?」
「ですね…そうだ!ミョーミョー!!天井の虫をビリビリ出来るか?」
「ビリビリ?!ミョーミョー出来るよー!」
「やってくれー!!」
「行っくよー!」
天井にぶら下がる全部のペンダントライトから、剥き出しの電線が蛇のように延びてきた。そのまま芋虫達を舐めるようにしながら、〝バチバチ〟音を鳴らして感電させていく。芋虫達が蜘蛛の子を散らしたみたいに逃げて行くが、殆どが電気にやられて下に落ちる。落ちて来たのは俺とビーで蹴っ飛ばして払い除けた。
「ビー!虫の死骸を全部、扉の外に出すんだ!」
「テメェが手でやれよ!私は今、足しか無いから
え~…俺が手で触るの?…この突起部分とか毒無いよな…
何か見た目キショいし、かぶれそうで嫌なんだけど…
「コイツらは
分かった信じよう。
万が一死んだら怨霊に成ってビーを呪い殺す事を心に誓い、意を決して芋虫の死骸を両手で掴んでは扉の外に捨てていった。
その間にミョーミョーが銃を構えだしている。
「ん~と…〝んがぺ〟違うな~…何だっけ?まっ、いいや!」
「おのれぇぇ…それは銃砲という奴だなぁぁ…知っているぞぉぉ…」
「ミョーミョー!一発しか撃てないんだから、慎重に狙って撃てよぉ!!」
「馬鹿かテメェ!一発しか撃てない事をわざわざ敵に教えるなよ!!脳味噌に毛虫の毒が入り込んだのか?!」
…そうですね…教えちゃいけないよね…
ごめんなさい…
頼むビームよ、当たってくれ…
「くらえっ!〝しつこい悪霊、嫌~な怨霊に、これ一発ビィィーム〟!!」
本当にそんな名前か?…絶対に今、適当に考えただろうと思われる名前のビームは、変な音響と色彩を放ち…
「グワワワワワァァッッッアアアアァァ…」
おおっ!!
当たった!当たった!
しゃがんで避けたカガセオに、見事命中したみたいだぞ!!
「やったあー!!チャチャ!!チャチャ!!見て見て!ミョーミョー初めて当たったよー!!」
えっ?!〝初めて〟?
「チャハハハハ…馬鹿っチャね!ミョーミョーは射撃音痴だから、避けなきゃ絶対に当たらないのに。自分から当たりに行ったチャねっ」
上体を起こしたカガセオの右腕からは、煙が立ち
どうやら掠めた程度で致命傷では無いみたいだが、顰めっ面の表情から見ても、かなり効いているみたいだ。動きも鈍っている。
「ドウル君!早くチャミの視界から虫の遺体を
「分かりました!」
急いで床に転がる虫の残骸を両手で掴んで扉の外に放り投げていく。
何か運動会の時の玉入れ思い出した。
よしっ!粗方無くなったと、思った時…
「あっ!!マズいっチャ!!ミョーミョー!!アブラオキメを止めるっチャ!!」
それは一瞬の出来事だった。
霊力が切れたのか、絡まっていた糸人形から脱しったアブラオキメはヤミオコシ…いや、テオスの
「ケッシッシ…こりゃ分が悪りぃ、退散じゃ。また富士で会おうぞ、アワシマの!ケッシッシッシ…」
「しまったっチャ!せっかくのチャンスなのに…」
崩れ落ちて来る天井の破片を人形に変えて攻撃するチャミさんだったが、逃げたヤミオコシ達には届かず、大きく空いた天井の穴からアブラオキメの甲高い笑い声がフェードアウトして行くだけだった。
「バイバイー!!またねー!!」
「馬鹿っ!何、逃がしてんだよ!ミョーミョー!!私は今、翅が無いから追い掛けられないんだぞ!何か飛ぶ物と合体して追跡して来いよ!」
「ビー、いいっチャ。ミョーミョーだけで追わせるのは危険っチャ。向かった場所は分かってるっチャ。戦力整えて、もう一度闘うっチャ」
「でもチャミさん…奴等、富士山に向かったとしても、富士山は範囲広いですよ。逃げた場所は検討付いてるんですか?」
「愛鷹達に探して貰うっチャ」
そうか。環境省って言ってるが、その為の部隊みたいな連中だもんな。なら早速連絡を…
「あっ!俺、愛鷹から預かった携帯をビーに壊されたんだ。チャミさん携帯持ってます?」
「チャミ、ホテルから勝手に抜け出して此処に来たっチャ。携帯置いて来たっチャ」
俺はカウンター上の自分の荷物を手繰り寄せて中を調べた。
困ったな…自分の携帯は無事だったんだが、名刺を家に置いてきてしまった。環境省に問い合わせても秘密部隊だから繋いでもらえ無いかも…
「愛鷹の携帯番号知らないですか?」
「覚えて無いっチャ。携帯のメモリーには入ってるっチャ」
「じゃあ、一旦そのホテルに戻りましょう。送ります」
「嫌っ!このまま家に戻りたいっチャ!ドウル君、家まで送って欲しいっチャ」
「えっ?!今から戻るんですか?!灯りの無い樹海ですよ!お化け出たら、どうするんですか?!」
「鎮めるっチャ」
「…ですよね」
それがチャミさんのお仕事ですもんね…
しかし…
あの家が有る場所まで暗闇の中を帰るのか?
一応、懐中電灯は持って来てるけど…
アブラオキメ達が待ち伏せしてないだろうか?
そんな心配を余所にチャミさんは、壊れた愛鷹の携帯と植木鉢の土を捏ねくり合わせて、小さな泥人形を作りあげていた。
「
園児が砂場で作ったような即興の泥人形は、チャミさんの掛け声と共に動き出し、店の外に出て夜の小路へと走り去って行った。
「あの人形に事の顛末を知らせに行かせたっチャ」
愛鷹の元に行ったのか…
あんな小さな人形が、人目を忍んで愛鷹の元に着くには流石に時間掛かりそうだけど…
「さぁ!樹海に一刻も速く帰るっチャ!何か嫌な胸騒ぎがするっチャ…」
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