エピローーーーーグ
目が覚めると、僕は、鴨川デルタに全裸で、そしてうつ伏せで寝ていた。僕は隣に置いてあった服を慌てて着て、周りに人がいなかったかを確認する。よかった、いないようだ。とりあえず家まで帰ってシャワーを浴びて寝ることにしよう。
昼ごろに目が覚めると、今まであったことがすべて夢だったかのような感覚に襲われた。しかし、あの帰れなかった日から、確かに日付けは進んでいて、あの日々は現実に起こったことだと自分に言い聞かせた。
携帯電話を確認すると、友人からの心配のメッセージが入っていた。終電に乗れなかった日の、ちゃんと家に帰れたかというメッセージから、最近の、生存報告ヲセヨとのメッセージまである。とりあえず生存報告のメッセージを返信しようとしたが、今回のあの世界の話をしてみよう、あのかわいい子たちと一緒に暮らした日々を自慢しなければならないと思って、ついでに友人らと会う約束を取り付けた。
昼ごはんを食べるために大学で友人と待ち合わせをした。彼らと会ってみると、彼らにはやはり耳や尾はなくて、それまで何度も確認したことだけれども、やはりこの世界に戻って来たのだと実感した。むしろ、いろいろ頭やお尻のあたりをじろじろ眺めたので、不審がられていそうである。
昼ごはんを食べながら、友人らに例の話をしたところ、その写真を見せろと言われて、改めて全く写真を撮ってなかったことに気づいた。写真がないせいか、冗談半分で聞かれてしまったかもしれない。あのかわいさを伝えられないことは非常に残念である。
自分の家に戻ったとき、ふと、あの「日本の神話」という本が古都大学の図書館にあるか気になってインターネットで蔵書検察をしてみたが、なかった。大学の図書館にも直接行って確認してみたが、あのときあったと記憶している場所にはなかった。こちらの世界ではあの世界の存在が知られていないのかもしれない。
このとき僕は、そうであれば自分が知らせてみてはどうだろうかと思った。小説形式で書けばいろんな人に読んでもらえるかもしれない。僕が語ることができるのは、ほんの一面にすぎないかもしれないし、誤解を生じさせてしまうかもしれない。しかし、少しでも知ってもらうことで、彼らを理解してくれる人や受け入れてくれる人も出てくるだろう。共生の可能性を見出すことができるかもしれない。なぜ見えないのかも分かるかもしれない。それに、我々にとっても、彼らを知ることは重要だ。
では、その小説のタイトルは何にしよう。「気がついたら猫耳の街に転生していたのであえて帰還しました」? 「僕とタイツとねこみみ少女」? なんだかしっくりこない。
そういえば、あの人の日記では、鬼を見たと書いてあった。それに、僕も、あのとき、あの扉の向こうに、確かに鬼を見たのだ。では、こうしたらどうだろうか。「鬼のいる町」。素晴らしいタイトルだ。おもしろいに違いない。どんな美少女を登場させようか。もちろん美夏さんやその他の女の子にはモデルになってもらおう。天狗の館長にも登場してもらいたい。これで書いたらおもしろくなること間違いないだろう。あとは僕の天性の文才に任せるしかない。
彼女たちの存在が少しでも多くの人に伝わりますように。
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