第二十六『そうだ、観光しよう』
……一方その頃、アサナト達。
彼は流星の中、下の風景を見て地形を覚えながら周りの様子を伺っていた。
「無事か?」
周りにはエセウナ・ローレッジが居る。
キアも俺が抱えていて無事だ。
だが、一応聞いておきたいからな。
「……なんとか。キアはどうなんだ?」
エセウナの言葉に俺は抱えているキアの様子を見る。
「……大丈夫の様だ。ちゃんと呼吸できているが、体温が低い。魔法で乾かすぞ」
俺は流星の最中で熱乾燥魔法を展開し、全員に対して掛けた。
みるみる内に乾いて行く俺達の服。これなら大丈夫そうだ。
俺は安全を確認して下の様子を見てみた。
そう。俺達は流星の様に飛ばされている。
……恐らく、あの門によるものだろう、この流星は。
笑っていた様にも見えたあの門。
何なんだろうか、あの憎ったらしいあの門は。
だが、今ここで考えても埒があかない。でも、あの門の場所だけは覚えておきたい。
だから今こうして下の風景を記憶しているのだ。着地した後、問題なくあの門へと到着する為に。
……おっと。そろそろ着く様だ。
だが、俺はその先に人影が揺らぐのが見えた。
まずいな、この着地地点だと確実にその人間にバレる。
と思ったその時。その人物の左腰にあるものに目が止まる。
ーーーいや、あいつは……。
俺はその人間を見て笑った。怪しく。
そのまま俺達は勢い良く着地し、その『少年』と対する。
「おわわっ!?」
と気弱な声を上げて、その少年は腰を地面に引っ付かせ、不思議そうに俺達を見ていた。
少年の左腰には二つの長さが異なる刀が携えられている。
俺達は怪しく目を光らせて、無様に転がっている少年に手を伸ばし、言った。
「どうも」
「あ……どうも」
♢
時は過ぎ……翌朝。
俺達は『宮本武蔵』と名乗る少年の家に、勝手に泊まらさせて貰っている。
俺達は名を尋ねられたが、取り敢えずの偽名で俺は『
かなり雑だが、それで名前として武蔵に認められたから良いのだろう。
……出来ることなら現地人にバレたくはなかったが、なってしまったからには仕方ない。
この武蔵という少年を上手く使って、ユーリやネフリスと合流する。それで行くしか無い。
その為に、この武蔵と親睦を深める必要があるから、それを深める為に今は武蔵の元にキアを投入している。
キアが年端もいかない子供の所為で俺達が恋仲とか言われはしたが、多少ぶん殴ることで黙って貰った。
キアと楽しく遊んでいる武蔵を見ながら、俺はローレッジと共に今後の計画を立てていた。
「アサナト。お前ならどうする、あの門に行くか?」
「……行かない方が良いだろうな。他の奴らも、恐らく合流してからあの門へと行こうとする筈だ」
「まあ、そうなるな……だが、それが出来るかどうかが困りものだ」
ローレッジはそう溜息を吐きながら呟いた。
「そうだな」
俺は頷きながら、昨日の出来事を思い出していた。
……俺達が五つに分けられて飛ばされたあの時だ。
その時、各自が飛んで行った方角は分かるが、どこまで飛んで行ったのかが分からない。
主にネフリスとユーリ辺り、後イェネオスって言う馬鹿もいたな。
その三組は各自個々で飛んで行った挙句、俺達とは反対方向へと進んで行った。
つまり、捜索は厳しい。
合流できる可能性があるとすれば、俺達とほぼ同じ方角に飛んで行ったナミア・レフィナード達の所か。
だが、肝心の場所が分からない。
あいつらも同じく、俺達の目が届かない場所へと飛んで行った。
……方角は分かるが、探せる要因はそれだけだ。
しかも、あいつらが現地住民にバレない様に潜伏しているのだとしたら、もっと合流は厳しくなる。
ーーだが、希望がないわけでは無い。
魔導師連中のあいつらだけには、俺達を捜索する用に、捜索用の魔導コンパスを持たせている。
あれにはパーティー全員の魔力反応を覚えさせていて、効果範囲の三百メートル内にパーティーの誰かが入ると反応し、その仲間の位置を示してくれるという優れもの。
……つまり、どうにかしてあいつらの三百メートル範囲内に入れれば良いという訳だ。
そこで、この江戸の地を知り尽くした人物が欲しいんだ。効率良くあいつらと出会う為にな。
幾ら俺が上から見て頭の中で街の地図を作成したとはいえ、完成度は低いから。
だから、現地民で「江戸の事なら任せてください!」と豪語していた武蔵なら、良い案内をしてくれる、と思ってな。
……しかも、あいつは剣豪だ。見れば分かる。
それだけで面白そうだろ?
そこで、俺は言った。
「そうだ、観光しないか?……武蔵、お前の知る江戸ってものを見せてくれよ」
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