ただ、見るだけ。

てくの

今日

 世の中は新年度で賑わっている。自分は去年の今頃と何も変わってない生活をしているのに。日々に刺激を感じなくなったのはいつからだっただろうか。お金は貯まる一方でも使う当てがない。


 拷問とも言える満員電車に揺られて家に着くまでの時間を過ごす。短くはない時間だが帰ってから何をするか考えているとそう長くは感じない。一日の中で楽しい時間はこのひと時だけだろう。


 家のドアを開けると猫がちょこんと座って自分の帰りを待っていた。いつもさみしそうな顔をして待っているのを見ると心が締め付けられる。今のご飯のストックがなくなったらいくつか上のグレードのご飯に変えてあげようかな、それとももう一匹くらい飼うのがいいのだろうか。

 どっちにせよこの猫に救われている面があるのは否定できないのでもう少しいい環境にしてあげなきゃ夜遅くまで放置するのはさすがに申し訳ない。


 猫用のおもちゃを腰につけて家事を済ませる。こうすると勝手に遊んでくれて楽なのだ。少し不満そうだが平日は我慢してほしい。


 気づくと猫はおもちゃを追いかけるのに飽きたのかパソコンの前の椅子でこっちを見つめていた。こいつは何故か自分がゲームを積んでいることを知っているのだ。仕方ない、少しなにか進めようか。

 時間は11時。朝が早いから12時には寝たいがまだ一時間ある。遊ぶには十分だろう。慣れた手つきでライブラリを開いた。

「そういえばついったーを見てなかったな」

 気づいたら11:30だった。

「猫よ、なんのゲームをするのがいいと思う?」

 悩んでたら11:40だった。


 ......。

 ............。

 ..................。


 寝よう。

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ただ、見るだけ。 てくの @techno

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