第十六話『十回のコイントス』

 

 僕はガレーシャ含む三人に『未来視が出来る』と包み隠さず暴露した。兵は頭数に入れていないよ。


 別に僕は未来視をステータスとか思ってない。ただの忌み嫌われるべき力だから。


 ただ、見掛け倒しの強大な力として、僕は『未来視』を強調しただけ。そこに自慢や慢心などは一切ない。


 それの表だけを見て、その真意を知る事はないと判断したから、僕は暴露した。


 ……その甲斐はあったようで、


「未来視……?」


 三人が息を合わせた様に僕の言葉を真に受けた。


 いやぁ……疑う事を知らないのは良いね。


 王子、王女の背後に控えている兵達からも疑問の声が出ているのが分かる。


 だけども、疑いの感情が入り混じっているのが感じとられる。


「未来視など、あり得ない……」とか「伝説上の力じゃないのか?」とか。


 それらの兵達の言葉を代弁する様に、第二王子が僕に言った。


「それがホラ話じゃないのなら、それを証明してみろよ、少年さん?」


 は?……となりかけたが、第二王子の要望には答える事にしよう。


「分かった、証明しよう」


 でも、後で第二王子は背後からぶん殴っておこうか。


 僕は手品の様にコインを虚空から取り出して、第二王子に投げた。


「……コイン?」


「これから君に十回コイントスをしてもらう。その結果を僕が未来視を使って予想するから、頑張ってその未来を覆してみてね」


 僕は軽く笑った。上から見下ろす様に。


「……なんも仕掛けとかねえな。お前、仕掛けも何も無えのに十回分の結果を予想できるもんかよ」


 第二王子がコインを凝視している。魔力反応などから色々仕掛けがないかを確認しているのだろうか。


「まあまあ、先ずは見てみようか。今回は一緒に視てみよう」


 どうでもいいので僕は、そう言って未来視を発動させた。


 僕の未来視って、他の人物達にも見せることができるんだよね。


 これのお陰で僕が本当に未来視を持っているかという信憑性が上がる筈だ。


 僕が全員に視せた未来。


 それは、全てのコイントスの結果が表になる、というもの。


 側から見れば完全にあり得ない事だけど、この満目蕭条ノ眼ボーダムアイには出来るんだ。



『未来の結果の固定化』がね。



 僕の未来視ってのは、ただ未来を視るだけじゃない。


 視た未来を、任意で避けられない確定した未来として定着させることができる。


 そして、僕の満目蕭条ノ眼ボーダムアイは好きなタイミング、好きな結果の未来を自由に視ることが出来る。


 これがどう言う事を表しているか、分かるかい?


 そう。


 僕は望む未来を。望む未来の結果を。簡単に手繰り寄せることが出来るんだ。


 本当に分かりやすい例で言ったら、自分の持っている宝くじが一等当選する未来、とかね。


 それは、確実にあり得ない未来でも、ただ見れば解決する。


 さっきの宝くじの例で言えば、落選したと思われていたくじが実は一等だった、とかいう番狂わせを起こせる。


 つまりぼくの眼は、現実改変と未来改変、世界改変などの力を持っていると言う事になる。


 今、僕はその眼を振るったんだ。


 そして、僕は焦ってコイントスを繰り返す第二王子の顔色を伺った。


 既に彼は五回、コインを投げている。


 その顔からは、信じられないことが目の前で起きている事で、薄々信じてきているのが分かる。


 そして、六回目のコイントス。


 結果は……言うまでも無く。


「なんで……また表なんだ!?」


 表だ。これで六回目。後ろの兵達がざわついている。


 アーリは既に結果を分かってしまった、と言う微妙な表情で見守っている。


 そして、七回目……表。


「く……」


 八回目……表。


「はぁ!?」


 九回目。思いっきり地面に叩きつけたが……表。


「おい……」


 そして……十回目。


「……」


 無言で投げられたそのコインは、案の定……。


「……表、ですね」


 アーリのその言葉と共に第二王子は、狂う様に言った。


「あああ!?なんで表しか出ねぇんだ!」


 地団駄を踏んで全身で感情を表現する彼の表情は、行動とは裏腹に凍っていた。


「ありえ……ねぇだろ」


「何故表しか出ないんですか……」


 ガレーシャは僕の背中でそう呟いた。


 なので、僕は左眼を見せた。全員に見えるように。


「信じて貰えるかな?僕の力を」


 淡く光るその眼を、僕は全員に、隠さず。


 神秘的な輝きを放つ僕の眼は、見るもの全ての眼を奪う……と言われてる。


「居るんだな、こう言う奴は」

 途方にくれる様に彼らは言う。


 ……うん、もうひと押しと行こうか。


「じゃあそんな所で、創造神様にご登場頂こうか」


「……え?」

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