第十五話『さぁ、尋問開始だ』

 

「ーーー何故、君達が古代兵器の事を知っているんだい?」


 僕は、静寂の最中言い放った。尋問開始だね。


「なんだ、てめぇ……冒険者か?」

 柄の悪そうな男が僕に向けてガンを飛ばす。


「姫さまっ……」


 それと同時に、背後に控えている兵達が第三王女を庇おうとするが、


「大丈夫です。背後で控えてて下さい」


「はっ」

 従順に引き下がった兵達。


 僕も、対応すべき人物が減ったのはいい事だ。


 そして、遠目からでも、第三王女が冷や汗を流しているのが分かる。緊張しているのか、僕のちょっと出しているオーラに怯んでいるのかな?


 僕はガレーシャに手振りで来るように告げた。


 彼女は仕方ないと意を決し、魔法を解き、すぐさま僕の背中に隠れた。


 その瞬間に、柄の悪そうな男が言う。


「何でお前も居るんだよ……ッ!」


 彼の赤い瞳から放たれる視線は明らかにガレーシャに向いていた。


「面識あるの?彼と」


「以前、魔法事象操作学校での級友でした……リアン王国第二王子です」


 ほー。


 やっぱり、第二王子が遺跡探索に来ると言う噂は本当だったのね。


 面白いね。利用できそうだ。


 そして、あっち側も第二王子に聞いている様だ。


「お知り合いですか?」


「ああ。腐れ縁だ。……あいつに主席の座を取られたんだよ」


「貴方すら越える実力ですか……」


「勘違いすんじゃねぇ!今戦ったら確実に俺の方が強いからな!」


 その第二王子の怒声を聞いて、ガレーシャは怯える様に更に僕の背中に隠れた。


 これ以上はガレーシャの精神衛生上良くない。


 僕は話題を逸らすように言った。


「実際、そんな事は良いんだよ」


「……確かに、お前が危険かどうか、しらねぇとな」

 そう言って、第二王子は僕に睨みを飛ばした。


 ああ、怖いね。若者のガンと言うものは。


 僕は笑うように言った。


「もう一度聞く。何故君達が、古代兵器の存在を知っているという事を」


「……!」

 ガレーシャがピクリと反応するが、やはり知らない事だったのか、口を噤み、黙る事を決めたようだ。


 そして、僕の威圧に引かず、第三王女は言い放つ。

「まず、何故貴方がここにいるかどうかを教えてくれませんか」


 そう言う彼女の手には、汗が握られていた。


 ……良いね。その若さを褒めよう。


「僕は、ユト・フトゥールム。ただ古代兵器を追い求める、しがない鉄ランク冒険者さ」


 と、僕は鉄のタグをちらつかせながら言った。


 そして、僕は聞き返す。


「君達は?」

 僕は常に怪しく笑いながら言っている。


 それが、彼女たちに形容し難い緊張感を与えている思う。


 だから彼女は……


「アーリ・メイゼラビアン。この国の第三王女です」

 偽り無く、自分の情報を提示した。


 僕は流れる様に、その横の第二王子を見た。


 が。


「……ふん」

 そっぽを向き、彼は黙秘した。



 ……意外と、この子状況を理解しているのかなぁ?



 ま、どうでも良いけど。


「……お互いの情報交換も済んだところで、聞かせてもらおうか。その『記録』ってモノの事を」


 そして、僕は再びアーリを見詰めた。


 息を呑み込み、アーリは答える。


「……『記録』というのは私の王家に伝わる、創造神モイラ様が作られた神の聖典です。その中に記されているのが、十三つの古代兵器の存在。そしてその一つがこの遺跡にある事が、その記録には記されています」


「おい、言い過ぎだって……!」


 第二王子が記録の事について包み隠さず話したアーリを止めようとするが、決意の篭った視線で黙らせられてしまった。


 そして、既に彼女は言い切った。


 それで僕は何故アーリ達が古代兵器の事を知っているかについて納得した。


 古代兵器の数は、僕の見たものと同じ十三つ。それだけで信じられる訳ではないけど、王家だけに伝わる記録だったら、情報体に記録されていない事についても説明がつくからね。


 しかも、彼女の動きや呼吸、癖などを見てみた結果、彼女は嘘をついていないと察することができる。第二王子の取り乱し方も、視野に入れてみての感想だ。


 そんな風に納得した僕に、アーリが聞いてきた。


「その筈なのに何故、フトゥールムさんは王族でも無いのに古代兵器の事を知っているんですか?」


 やっぱり、そう来るよね。


 話の限りだと、古代兵器の存在は王族などごく限られたものしか知らない……筈なのに、ただの冒険者の僕がそれを知っちゃってるもんね。


 怪しむのは当たり前だね……うん。



 ーーーここで、明かしてみようか。



 僕は小さく笑って、言った。

「僕がその創造神、モイラ・クロスティーの友人だと言ったら?」


「!!!?」

 一同に稲妻の如く驚愕が駆け巡る。


「そんな訳あるか!創造神って言うと、途方も無いほど昔だぞ!」

 第二王子が取り乱すが、僕は平静を保ち、更に言う。


「それが、モイラ・クロスティーの書いた聖典なら、創造神の特徴とかが記されてるんじゃない?」


「ええ……まあ……」

 歯切れの悪い返事をするアーリだが、僕はそれならば、と言う事で言う。


「その特徴、当てて見せようか?」


 アーリは答えに一瞬困る素ぶりを見せたけど、意見が決まった様で頷いた。


 これで完全に当てられたら、僕は多少信じられる事になる。


「腰に、因果を操る神剣を持ち、全ての物の運命を視る、神眼を持つ女性。それで間違い無いね?」


 第二王子とアーリの顔から洩れる驚きの表情。


 当たっていた様だね。


「本当に、お前は何者なんだよ!」


 第二王子の焦る声に僕はまた、笑った。


「ーーーやだなぁ。僕はただ、未来視ができる少年だよ」

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