第十話『僕が見た地獄絵図』

 

 僕の左眼には能力が備わっている。


 最近はあまり使っていなかったけど『未来視が出来る』という能力が。


 これは僕が自分の意思で見る『自意識型』と『無意識型』がある。


 今回の場合は、後者の無意識型が発動した。今さっきだ。


 無意識型と言うのはほぼ、大事である可能性が高い。


 僕がこの世界に来るきっかけとなった世界破滅の未来視とか無意識型の代表例。


 僕の満目蕭条ノ眼ボーダムアイが見る未来視は、音付きで未来が観れる。


 テレビのドラマとか映画みたいに。


 大体の場合は上空とかからの俯瞰視点での未来視となる。


 人の視点になる事も。


 今回見たのは、人の視点のやつだ。


 それの内容は……。


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「うわああッ……!!」


 僕の目に最初に移ったのは地面に亀裂が入り、そこから巨大な遺跡がせり上がってくるという光景だ。


 ……遺跡は縦に二十何メートルかはある。いや、せり上がってるからもっと。


 しかもその遺跡がせり上がって来たところが……これは貧民街かな。


 小さな家屋が殆ど押し潰され、人すらもそれに巻き込まれて死んでゆく。


 地獄絵図だね。


 しかも、この遺跡は地下にかなり伸びているようだ。


「はっ……は……ッ!!」


 僕の視点主が迫り来る遺跡から逃げて行く……が。


 視点主は転び、そのまま遺跡の餌食となった。


 ……今思った事だけど、逃げて行く貧民の様な人達の中に、僕の見知った人達が結構いた。


 僕が最初にリアン王国に来た際に見たあの移民貧民達だ。


 ……ここで、君達が関わってくるのか。


 数秒間暗転した視点。


 そして、視点は俯瞰視点へと変わり、せり上がり切った遺跡を眺めている様な構図になった。


 そのまま、視点は遺跡内部へと入っていく。


 凄まじい速度で奥へと進んでゆく視点。僕はそのルートの記憶に励んだ。


 苔が生い茂った石造りの通路が続いたと思ったら突然抜けた地面に落ち、そのまま滑り降りる様に視点は動いて行く。


 先にあったものは広大なジャングル。地下なはずなのに、だよ。


 そして視点は止まらずに木の間をかいくぐって奥へと進む。


 ある時は虹色の回廊を抜け、ある時は宇宙空間の様な空間を抜け。


 大きな扉を突き抜けて先へと進み……そして。


 突然、視点にノイズが走った。


 そしてそのままブチッ、という音が耳に鳴り響いたと思ったら、視点はリアン王国首都リリアンへと戻り、あの冒険者ギルドへと視点は入って行く。


 そして、映し出されたのはクエストボードに大きく貼られた、


【依頼元;メイゼラビアン王国】


 貧民街に突然出現した古代遺跡の探索及び踏破。


 報酬


 遺跡内の宝物を最初に見つけたものに報酬として捧げる。


 かなり簡略化したが、大体こんなものだった。


 そして、そのクエストが張り出される日は、まさかの明日。


 そのまま、視点は元の僕の左目の視点へとフェードアウトして行った。


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 ……少し考えよう。


 クエストなどは明日受けるから問題ないとして。


 遺跡内部を見ていた際に突然起こったノイズだよ。


 あんな物は過去全く遭遇した事がない。


 ましてや、ただの古代遺跡の探索時に。


 色々考えている時に僕は、あのノイズの正体について心当たりがある事に気付いた。


 以前、僕が古代兵器について未来視しようとした時のことだ。


 その時も同じ様にノイズが走り、未来視を強制終了されたのだ。


 あのノイズとこのノイズが同一であるならば。



 ……古代兵器があの遺跡にある確率はほぼ百%と言っても過言ではなくなった。



 ーーー僕は全身全霊で、あのクエストを受けることを決意した。


 それならば、あの子達にも行く事を伝えなければいけない。


 多少の嘘が混じっていたとしても、僕は行かねばならない。


 仕事の為に。世界を救うという誇りにかけて。



 ♦︎



 翌日の朝、僕は早速行動に移した。


 セリアとアンビ、そしてガレーシャを揃え、僕は「遺跡探索のクエストが貼られる様だから受けて国を発つとするよ」と言った。


 そう言うと、セリアとアンビは止めた。


「危険です」など「まだ教えてよ師匠」とかね。


 ガレーシャは既に僕の意見に賛同していた。その方が僕の実力を測れる筈だからと。


 そして引き留めようとする彼女達に向かって、僕は納得させようと、ある事象操作を放った。


 それは、他世界で見た最大級の規模の事象操作。


 空間をそのまま抉り取り、射程距離も絶大な事象操作だ。


 それを僕は手を空に向け、無詠唱でそれを放った。


 空の雲は全て消え去り、雷を纏った空気が僕達の周りを駆け巡る。


 勿論、危害など全く加えない良い雷さんだよ。


 木々は台風に煽られる様に揺らぎ、太陽の光さえも歪む程。


 そして僕は呆気に取られている彼女達にこう言った。


「これで満足出来ない?」とね。


 そして帰ってきたのはぎこちない笑顔だった。概ね了承してくれた様だね。


 僕は固まって動いていないガレーシャを姫さま抱っこで抱え、リアン王国首都リリアンへと跳んだ。


 途中ガレーシャは騒いで居たけど、気にしない気にしない。

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