21.種馬生活
「タスクくん、生理が20日も遅れてるの」
「ということは!」
「たぶん出来てると思う」
「良かったですね! カルミアさん!」
「ありがとう。でも、しばらく相手出来なくなるとおもうと残念ね」
「そ、そうですね……」
カルミアともう子作りを当分やらなくていいと思うと、ホッとする。
前の月の10日間は、まさに生気を吸い尽くされる感じだったのだ。
最初のうちは、楽しめたけど、一日何度も求められただけでなく、しんどいのに無理やり起たせられたり、激しい腰振りを要求されたりとサッキュバスを相手にしてるんじゃないかと言うほど精魂尽き果ててしまった。
カルミアとの子作り後は、効率のいい子作りをしたいと考え、基礎体温法やオギノ式などを参考にして排卵日前に数回、同じ女性と子作りするプランを導入した。
効率的子作りといったが、詳しく話すと、一人の子に対して予測排卵日の5日前くらいから一日おきに10回程度相手をするというものだ。
相手の体調もあったり、ヤル時になって、急に泣き出して出来なかったりも有って、その回数をそのままできるわけではなかったけれど。
この方法は、あのロリコンのおっちゃんからニウブが魔法で引き出した知識だ。
おっちゃんは、ヒストリアの魔法を掛けるときに、わざとロリものAVを思い出したり、それ以前に、寺院に勉強にやってくる女学生たちをいやらしい目で覗いたりしていて、評判は最悪だった。
大体が、効率のいい子作りを考え出したのも、一人だけ良い思いしている僕のヤル回数を減らして嫌がらせしてやろうという魂胆らしかったのだが、今となっては、逆に感謝したいくらいだ。
はっきりいって、あれだけ魅力的な肉体をしているカルミア相手でさえ、好きでもない女に10日間毎日5発ヤリ続ければ心底ウンザリしてくる。
カルミアは、その優先的に相手をした10日間でなんとか妊娠することが出来たから良かったけど。
また同じようにブートキャンプさせられるのは御免こうむりたい。
「タスクさん、最近死んだ魚の目をしていますよ」
などと、ニウブが最初のうちは心配したくらいだ。
そんなニウブも、慣れてきたら、
「タスクさん! 今日はあともう一発頑張りましょう!」
と、隙あらば一日5人6人を相手にさせようとする、やり手ババア化がヒドイ。
最初の頃、相手をした女にヒドイ拒絶のされ方をして落ち込んでいた僕は、その夜、ニウブの膝に泣きついた。
「うう、辛いよニウブ。もうヤリたくないよぅ」
「よしよし、大変だったわね」
と、頭をナデナデしてくれながらも。
「今度相手するときは、目隠して待ってるようにアドバイスしておくから大丈夫! だから、明日は今日できなかった子も含めて4人相手をしてくださいね」
などと言ってきたのだ、それもとびっきりの笑顔で……。
それ以降、僕は彼女に泣きつくのは止め、ユキかハルに落ち込んだ時は慰めてもらうようになった。
寺院の並びに建てた姉妹の家は、湖に張り出したデッキを伝って寺院から直接行くことが出来る。
姉妹の家は鉄筋コンクリート造平屋建ての2LDK。
約10畳の3部屋が横に繋がっている。
朝昼おやつ時夕方計4回のお勤めを終えた僕は、姉妹の家を訪れた。
「お帰りなさいタスクさん」
「ただいまユキ。あれ、ハルは?」
「クマちゃんのところにお泊りに行ってます」
ちっこい同士で気が合うのだろうか? いつの間にかクマとハルは仲良くなっていた。
この家が建ったのも、二人が仲良くなったお陰で、クマが建ててくれたのだ。
そのことがまわりまわってクマが僕のことをちょっとは許してくれるようになったみたいだけど。
「ひとりで寂しくなかった?」
「今日は来てくれるって言ってたじゃないですか。ハルは気を効かせてくれたんですよ」
そう言って、ユキは僕に身体を預けてきた。
僕は、ユキのアゴに手を添えて持ち上げ、唇を合わせる。
薄く柔らかな感触を味わってから、舌を差し入れようとすると。
「はむぅ、もう、お腹を感じて欲しかったんです!」
「あ、そうだったのか!」
彼女はほっぺを膨らませ、どこかあどけなさの残る大きな瞳で見つめて来た。
僕は、彼女を離すと、お腹にそっと触れた。
服の上からでも、少しポッコリしてきたのが判る。
「だいぶポッコリしてきたね」
「やだ、恥ずかしい」
「自分から見せて来たんじゃないか」
4回のお勤めで精魂尽き果てたと思っていたが、上目遣いで見上げて来たユキの艶めかしい表情に、しばらく感じなかったドス黒い欲望が立ち上がってくる。
「痛いですタスクさん」
「あ、ごめん!」
無意識に肩に沿えていた手に力が入ってたみたいだ。
ユキは察したのか、恥ずかしそうにうつむいて呟く。
「しても良いですよ……」
「ダメダメ、お腹の赤ちゃんに良くない」
「じゃあ、お口でしましょうか?」
「いや……、でも、今日は一緒の布団で寝よう」
「……はい」
その夜は、ユキの部屋で一緒に横になりながら、たわいもない会話をしながら眠りについた。
翌朝。
「起きて下さい! 今日は研究ミーティングの日ですよ!!」
「うぅぅん、こんな早くに……、って! グレタ?!」
ベッドの横に仁王立ちしているグレタ。
てか、ここはユキの部屋だよな?
となりで、ユキも目をこすりながら起き出している。
「自分の部屋に居ないから、ここだと思いましたよ。イチャイチャするのは勝手ですが、仕事はちゃんとしてください」
「今日は、休みじゃなかったっけ?」
「休みなのは子作りだけでしょ? せっかく一日空いているのだから、全体の進展状況を確認して、今後の方針を練り直しましょうと言ったじゃないですか!」
「そうだったかなぁ~」
僕の居ない間、ナインシスターズ出身の神罰のグレタが研究所を取り仕切っていた。
アンシンメトリの金髪でクールビューティーな彼女。
神罰とあだ名されるほどの、雷を操る電撃魔法使いかつ、超が付くほど真面目ちゃんの委員長キャラでもある。
特にここのところは、僕は子作りに疲弊し、ニウブは子作りのマネージメントに夢中で、新たな技術開発に積極的には関わっていなかったのだ。
そんなわけで、僕が戻ってきてからもグレタが実質的に取り仕切っているのは変わらなかったのだ。
急いで着替えてから、研究所に引っ張られていく。
すでに、会議室には全員集まっていた。
最初は掘っ立て小屋だった研究所も、今では会議室や複数の小部屋を備えた立派なな鉄筋コンクリート造の建物になっていた。
コの字型の机を20数人からなる研究員が囲んでいる。
一応、僕が真ん中に座るが、横にいるグレタがどんどん会議を進行していく。
島田の爺さんが参加している農業班では、コンバインの様なモノや脱穀器、農薬などの開発状況が紹介され、アレクサの医療班では、カビから抗生物質の培養をテストしていることが、グレタの電気班からは、炭素フィラメント電球が完成したことと、水車で発電した電気を村まで送る送電線の導入が報告された。
「では、最後は航空班からお願いします。ミュクス」
「はい」
グレタに促され、個性派ぞろいの村人の中では影の薄いおしとやか系女子のミュクスが立ち上がった。
「ジュラルミン製グライダーは完成しました。雨が止んだらテストしたいと思ってます。上手く行ったら、今度はモーターを付けたテストに進みたいです」
僕が居ない間にアルミを製造出来るようになったとは、聞いていたけど、ジュラルミンまで作ってグライダーを作っていたなんて知らなかった。
空を飛ばすのは大変そうな気もするけど、風魔法でバランスを取れるから大丈夫ということだろうか?
でも、気球が有るのにわざわざ飛行機を目指すのは何でなんだ?
僕は気になったので、質問をする。
「なんで、いきなり飛行機を作ろうとしているんだい?」
「それは、近辺にない資源を採取するためです。所長も新たな材料を作るためにもゴムが必要だと常々仰ってましたよね?」
僕の問いにグレタが答えた。
グレタは僕の事を所長と呼ぶ。
最初そう呼ばれた時、君の方が実際のところ所長みたいなんだから、君が所長で良いじゃんと言ったんだけど、創始者はあなたなんだからあなたが所長ですと押し切られてしまっていたのだ。
「え、ああ、そうだけど……。って、東南アジアまで飛行機で遠征するの?!」
「船では何ヶ月かかるか分かりません。そんな悠長なことではダメなのです。なので、飛行艇を完成させて、教皇都に圧倒的な戦力差を見せつけるのです!」
「え? なんか後半話変わってない?」
「すみません、つい興奮して端折ってしまいました。要するに、教皇都がこのまま黙っているわけが有りません! 今の技術でも十分対抗できますが、爆薬を使うのでは、相手を傷つける恐れが有ります。それなら、飛行機を完成させて、制空権を握ったことを見せつければ、平和的に解決できるんじゃないかと思うのです」
エルの件は引き下がったけど、どんどん勢力を増している僕らを教皇都が潰しにこないとも限らない。
確かに、普通に戦争になって殺し合いするなんて僕も御免だ。
僕と違って、先々の事まで考えて研究を進めるグレタを、尊敬のまなざしで見つめざるおえなかった。
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