5.資源を求めて

 資源調査隊が去り、いよいよ白金探しに北の島を目指すことに。

 気球に缶詰などの少量を満載して、早朝に飛び立つ。

 広大な原生林の平野を東に抜けて海に出る。

 そこからは、海岸線沿いを東北方向に飛ぶ。

 途中いくつかの村を通り過ぎたが、次第に険しい断崖になってきてからは見なくなった。

 日が暮れる前に、適当な砂浜を見つけて着陸する。

 

「少し肌寒いわね」

「テントさっさと、建てちゃおうよー」

「あれ? 小さいテント二つしか持って来てないんですか?」

「ええ、荷物は最低限に減らしたの。なので、二人ずつで寝てもらうわ。タスクくんは、誰と一緒に寝たい?」


 カルミアがイタズラっぽい笑みを見せた。

 彼女は僕をからかってるのだ。

 だって、選択権なんて僕に無いし。

 どうせ、カルミアさんが一緒に寝て、初めての時にみたいに僕にイタズラしてくるんだろう。

 ……ああ、夜が待ち遠しい!

 そんなことを考えていると、カルミアからは意外な言葉が口にされる。


「シギ! 今夜は、タスクくんと寝てちょうだい」

「うん、わかったー」


 ……あれ? 嫌がらずに受け入れたな。

 僕は、それほど関わりのないシギと同衾することに。

 動物よけに、大きな焚火を焚いてそれぞれのテントに入る。


「手、前に出して!」

「は、はい」


 シギは僕の両手首をヒモで縛り上げた。


「ヒドイですよ。僕何もしませんよ」

「そんなの信じられるわけないじゃん!」

「だって、シギさんはカルミアさんと出来てるんでしょ?」

「な、いきなり何言い出すのよ!」

「この前の鉛鉱山を探しに行ったとき、二人がキスしてるの見ちゃったんですよ」

「変態! のぞき見してたの!」

「違いますよ。トイレから戻ってきたら、その、声が聞こえて……」


 そこまで話すと、シギの顔がみるみる真っ赤になったのが薄暗がりの中でも分った。

 そして、ポカポカと僕のことを殴打する。


「もう、ばかばか! 変態! エッチ! スケベジジイ!」

「痛い! 止めてくれ! 手を縛られて反撃できない!」


 滅茶苦茶に殴りつけるシギの拳を耐えていると、ついに僕の側頭部にクリーンヒット!


「痛ってぇ~! 今のは無いですよ!」

「ふん!」

「だからレズビアンの人を襲ったりする人でなしじゃ有りませんよ僕は」

「はぁ? なにそれ! それじゃまるで私が男とエッチ出来ないみたいな言い草じゃないの?」

「違うんですか?」

「見てなさい!」

「え?ちょっ、まてっ!」


 シギは、僕のズボンを無理やり引き下げ、パンツに手を掛ける。

 両手を縛られた僕は、抵抗するすべが無い。

 そして、おもむろに右手を僕の股間へ突っ込み、そこにあるモノを握った。


「きゃう!」

「ここが気持ちいいんでしょ?」


 シギは僕のモノを握ると上下に動かし始めた。

 しかし、僕は。


「痛い痛い! や、止めて、そこは、違っ!」

「え? 違うの……」


 シギはバッドではなくボールを捏ねてきたので、僕は引きちぎられるんじゃないかと激痛の中、恐怖すら覚えた。


「はぁ、はぁ、死ぬかと思った」

「やっぱ、私には無理かぁ~」


 薄暗がりの中でも、うなだれているシギの様子がうかがえる。

 シギは、呟くようにしゃべり始める。


「昔の私は引っ込み思案で自信が無かった。村の仲間にも打ち解けられなくて、いつも一人で遠くまで飛んで行ってた。そんな私に、カルミアが、「シギくらい上手く風を操れるのは大陸にもなかなか居ないから自信持ちなさい」って励ましてくれたの。飛ぶことしか出来なかった私に、風を色んな事に使えるのを教えてくれたのも彼女。あんなに美しい女の人も初めてだったし、カルミアのような人になりたいって。憧れがいつのまにか恋愛感情になって、そんな私の思いも彼女は受け入れてくれたの」

「あの、僕がカルミアさんと子作りすることどう思ってるんですか?」

「本当はイヤ。でも、カルミアは望んでいるわ。だから、出来た子どもは、二人の子として大事に育てようと思ってる。私自身は妊娠したいわけじゃないけど、そのうち自分で産んでみたくなるかもしれないし、今は分からない。あ、そこまで、聞いてなかったか! とにかく、襲われても、アソコを握り潰せばタスクは言うこと聞くのが分かったから安心ね。じゃ、お休み~!」


 なにか、とんでもない弱点を僕は晒したんじゃないかという恐怖と共に、僕は涙ながらに眠りについたのだったが……。


 「ぐぬぬ重い……、どうなってるんだ?」


 深夜、上からの圧力を顔に感じて、僕は目を覚ます。

 入り口から差し込む月明かりで状況を把握しようと目を開けると……。


「く、唇が! 目の前にぃー!」


 シギが僕の上に乗っかってきていて、ちょうど眉間に唇を載せる格好になっていたのだ。


 「アゴに当る、柔らかい感触はもしや……。シギさんのおっぱい!?」


 さらに、上へとズレていくシギ。

 その寝相の悪さで、小ぶりなシギの胸が僕のアゴのあたりまで登ってくる。

 そして、アゴに引っ掛かってずり下がる胸元の布地……。

 僕の下半身は、すでにテント内で二重のテントを建てていた。


「あとちょっと、あとちょっとで! クソッ! ギリギリ届かない!」


 縛り上げられた僕の両手は、自らの股間の少し上にあった。

 おっぱいに気を取られていた僕は、縛られた両手が危険なポジションに来ていることに気付く。

 そして、ズボンとパンツが降ろされたまま眠ってしまった事も。


「待てよ? この親指の空白はもしや! 魔のデルタ地帯(ゾーン)!! 腕を持ち上げれば……、いや、それではズリ落ちてしまうぞ!! 考えるんだ! 考えるんだタスク!」


 ちょうど縛り上げたヒモの上にシギのクレバスが乗っかり、危険地帯(デンジャーゾーン)との直接接触が回避されている。

 僕のデルタフォースは、縛り上げられながらも危険地帯の突端へ決死の突入を試みようと格闘していた。


「はぁ、はぁ、あん……。はぁ……」


 ……こ、これは! こすってる?!


 下降し始めたシギの身体がヒモの段差を捉え、僕の顔に熱い吐息がかかる。


「くぅん! あ、あ、あ、あう……カルミアもっと!」

「カルミア?」


 シギは、寝ぼけて僕の事をカルミアだと思ってるのか、夢でカルミアと相手をしているのやら?!

 シギの激しい上下動で、僕のむき出しの地対空ミサイルが発射体制へと昇って行く。


「ヤバい、生の、生の太ももが!!」


 太ももの狭間で押しつけられる小刻みな振動が、僕の地対空ミサイルを直接刺激し、遂には臨界点に達した。


「あ、あぁ……、もうらめぇー!!」

「僕もダメーーー!!!」



 翌朝。


「なにこれ? ヤダ~! お股がカピカピになってる~」

「おはよう。どうかしましたか? シギさん」

「タスク、あんた寝てる間に何かしたでしょ~?」

「嫌だなぁ! 縛られてるのに何も出来るわけないでしょう」

「そ、そうねぇ……」


 スッキリした目覚めをした僕は、縛られている事を盾に無罪を主張したのだった。

 途中、もう一泊を挟んで、気球は目的地にたどり着いた。

 砂白金の採取方法はこうだ。

 まず、川をアレクサの冷凍魔法で凍らせて堰き止める。

 そして、干上がった下流の川底の砂をシギが空中に飛ばして分離する。

 白金は比重が20以上もあり重たいので下の方に溜まるのだ。

 一週間以上砂白金集めをしたが、集められた白金はホントにごくわずかだった。


「スプーン一杯も集まらなかったわね」

「でも、これだけ集まれば十分ですよ! 近くの鉱山からは水銀も手に入ったし、今回の遠征は大成功です」


 なぜ、僕はそんなに白金が欲しかったか?

 それは、白金触媒を使って、硝酸を作りたいからだ。

 すでに、洞窟から採れる硝石から硝酸を作る出していたが、採掘できる量には限りがある。

 硝酸から作られるダイナマイトは、これからの鉱山開発の拡張に向けて重要なものなのだ。


 コハンの村に帰ってきた僕は、早速、白金触媒と装置を作り、原料のアンモニアを取りに行く。

 寺院の地下に作ったアンモニア製造所。

 ここには、学校のトイレから管が繋がっていて、秘密裏に女学生たちのオシッコが大量に保管熟成されていた。

 オシッコが発酵して出来たアンモニアを、装置を使って白金触媒をくぐらせる。

 そうすると、アンモニアは白金触媒を通過するとき、酸素と結合して一酸化窒素に変化する。

 そして、不安定な一酸化窒素はすぐに二酸化窒素へ。

 最後に、終点にある水と混ざりあって硝酸になるというものだった。


「よし、上手くいったぞ」


 出来上がった硝酸は原料のオシッコと変わらない黄色い液体だった。

 これで、ダイナマイトの原料不足は解消され、鉱山開発ももっと拡張していくことだろう。

 

 そして、ついにあの日がやってくるのだ……。

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