第二部 訪問者たち
第一章 使徒襲来
プロローグ 訪問者来る
夏祭りの翌日、コハンの村に黒衣の魔法使いが二人、降り立った。
ガリガリノッポのポニーテール少女が、キョロキョロと辺りを見回している。
「目の前には湖が広がってて、その先には緑豊かな山脈もあるし!キレイな場所っすねヴァナモ先輩!」
「建物はお粗末だけど、飛び越してきた山の上には温泉も有るみたいだし、いい感じじゃない。でも、ひとっこひとり居ないわね?」
もう一人の方は、紫の長髪をなびかせた上品ぶったお嬢様系。
「出来たばかりの開拓村だそうですし。みんな作業に出払ってるんじゃないっすか?」
「困ったわね……。勝手に見て回って大丈夫かしら?」
「外だったら大丈夫っすよ! ちょうど裏の竈とか怪しいじゃないですか! 見て見ましょうよ」
「そうね。アルマちゃんがそう言うなら……」
こうして、ノッポのアルマとヴァナモ先輩はガラス窯の有る家の裏手に向かった。
時を同じくして、寺院で開かれている会合に参加しなかったクマとエルは山から帰ってくる所だった。
「なんで、温泉一緒に入ってくれないんだよー? 僕の事きらいなのー?」
からかうような感じでエルは質問している。
「入ったよ!」
クマは顔を赤くして反論した。
「入ったって、反対側のすっごい端っこじゃん! 遠くて叫ばないと声聞こえなかったし」
「クマちゃん恥ずかしいん!」
「何が?」
「……………」
プイっと横を向いてしまうクマ。
「裸になると心も裸になるって言うじゃん。クマちゃんって、ホント分かんないんだよなぁ~。心のガードも堅くて……ほんとに何考えてるんだか」
エルはお手上げといっ感じで天を仰いだ。
「話し声が聞こえる……」
アルマが木立の方を見て呟く。
「え? アルマの地獄耳に何か引っかかったの?」
「地獄耳って! もう、これでも音魔法使いの端くれなんで!」
「ごめん! ごめん! 怒らないでよー。でも、やっと村人発見ね」
「そうっすね。このガラス窯の事も聞けそうですし」
二人は、失敗したガラス片の入った箱と吹きガラス用の鉄管が転がったガラス窯を興味深げに見つめていた。
「あれは……。カレン枢機卿の修道会!! 隠れろクマちゃん! って、あぁ!!」
森の木立の間から、湖畔の家の裏手に立つ人物を見つけたエル。
しかし、彼女の忠告よりも早く、クマは謎の二人にめがけて突進して行った。
「どんな人たちなのかしらねアルマ……」
『クマー!!!』
「ギャー熊だー!!!」
「きゃー!!!」
いきなり現れたクマに圧し掛かられるアルマ。
とっさに上空へ退避したヴァナモ。
「あれ? 寝てるやん……」
クマは気絶したアルマを担いで家の中へ、そしてそのまま自分の部屋に入って行った。
「え? え? どういうこと? アルマがクマにさらわれた?!」
ヴァナモは上空でパニック状態に陥っている。
「一人だけなら、なんとか見られないように出来るか……」
エルは木立の影に隠れ、上空のヴァナモをジッと見つめていた。
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