理不尽に挑み非効率を究めた末に辿り着いた果て

 五番機とライムンドの機体はほぼ同じ時刻に目標地点に到着した。

 戦闘は双方の軍で中継されているだろう。とくにトライレームは世界中継に設定してある。


『敵シルエットを確認。智天使ケルビム級アスモデルです』

「了解」


 強敵ということだ。当時のシルエットのランクでいえば上から二番目。

 相手のほうがよほどラスボス機だ。


 一方ライムンドは五番機を探していた。

 海面ぎりぎりの低空飛行をしていることは把握している。


 レーダー性能は桁違いだ。敵の動きは手に取るようにわかる。


「目標捕捉。戦闘を開始する」


 射程に入り、ライフル状の携行型荷電粒子ビーム砲を放つ。

 一発でも命中すれば三百メガジュールに達する破壊力だ。レーザーと違い照射する必要もない。


 粒子ビームは海面で蒸発する。だからこそ五番機は海面すれすれを進んでいると思われた。時速百キロ程度の巡航速度で飛行している。

 ライムンドは目を疑った。目視できるのは海中を高速で進む、鯨のような巨影。


「海中だと! 光学兵器対策か。原始的な!」


 ただでさえ大気、海上では威力が減衰しやすい荷電粒子砲だ。海面にぶつかったら粒子は拡散するのみ。

 速度計を確認する。海中ならば五十ノット以上を叩き出している。 


「かなりの速度で潜航している。あの機体も水の中で高速機動ができるのか?」


 大気を吸い込み燃焼するタイプのジェットエンジンならば水中での稼働は困難だ。

 しかし五番機は爆轟波を利用したデトネーションエンジンを使ったスラスターを採用している。水中でも対策を施せば使用可能だ。


 アスモデルのスラスターは大気などをプラズマ化して推進するシステムだ。

 海水をプラズマ化してある程度の海中活動は可能ではあるが、現存のシルエットで似たようなことが可能だとは思いもしなかった。


「そこまで進化……技術を取り戻しているというのか。現在のシルエットは!」


 レーダーには映るが、視認できない。機体が蒼いので海の色に溶けているのだ。保護色のように働いている。

 海面の煌めきと、高速で移動する影を追う。


 アスモデルの右脚部に爆発が発生する。

 装甲に亀裂が入っていた。たった一撃で、だ。


 海面を拡大すると、Dライフルの砲口が、海から突き出していた。


「こ、この!」


 荷電粒子ビーム砲を再び放つ。海面に巨大な水しぶきが発生するだけだった。


 派手な水しぶきが邪魔で視界が悪くなる。レーダーを頼りに五番機を追おうとしたその瞬間だった。


 水しぶきのなかからロケットのように垂直上昇する五番機。得物をブレードに持ち替えている。

 そのままアスモデルのすぐ傍を駆け抜け、空に舞い上がる。

 切断音とともにアスモデルの左腕が飛び、ソニックブームがあとから襲う。


「何が起きたんだ?  なんだあの速さは!」


 アスモデルのプラズマ推進は高速戦闘に特化しており、大気圏内は地表近くでも時速千五百キロ。マッハ一・二まで出せる。エンジェルの五百キロに比べても破格の速度だ。

 それを上回る加速を、現在の機体が持っている。


 それでもさすがといったところか。右腕で確実に狙いをつけ、五番機を捉える。

 荷電粒子ビーム砲は五番機を直撃し、そして光が拡散する。


 ダメージは僅か。代わりに五番機の流体金属弾が次々と命中し、機体のダメージが蓄積する。一発は防ぎ切れても二発目からは、確実に内部にもダメージが入っている。


「うぉぉぉ」


 恐慌に駆られた。頭上の機体がすでにいないのだ。

 捉えた五番機は大きく離れている。すかさずバックパックの二門対空レーザーを展開し、同時に発射する。


 回避行動を取る五番機を追尾するように追いかけるレーザー。


「ホーミングレーザーか」


 コウは薄く笑う。アストライアに聞いていた通りだ。当然だが光はホーミングなどしないし、回避できる代物でもない。


 五番機は敵に補足されターゲットマーカーがセッティングされているのだ。熱出力のレーザー光を発射する前に、軌道を設定するレーザーで空気のトンネルを作り出す。

 高速に移動する目標に対しターゲットマーカーが追尾し、空気のトンネルもまた追跡する。この二段階式のレーザービームの原理によって、小さく弧を描いたレーザー光の軌道によってレーザーがホーミングしているように見えるのだ。


 CX型の超大型スラスターがありえない速度を叩き出している。時速は二千二百キロ以上。マッハ一・八。人型兵器の速度としては非常識とさえ言える速度域に達する。 


 大楯代わりのサイドスラスターに直撃するが、レーザービームは拡散した。


「何故レーザービーム砲が効かん? そんな装甲が今の技術で可能なのか」

「原理はアンティークの積層ナノセラミック装甲の構造と同様。技術はそちらが遙かに上だがな。日本の古い甲冑みたいな小札にみえるだろ。これは一つ一つがすべて対光学兵器用の対分子拡散ナノセラミックのタイルだ」


 これも彼の故郷の戦車にも採用されている拘束セラミック複合装甲からヒントを得て作り出された鎧。

 原理は同じだ。追加装甲用のチタン製容器に対弾用セラミックを強い圧力をかけ封入しタイル状に並べたブロック構造は軽量化と耐弾性の向上に寄与した。


「しかし無敵ではないはずだ!」


 レーザーの利点は連射にある。

 対空レーザーを多重に展開し最大解放。無数のレーザービームが五番機を襲う。


 五番機の機体が無数の雷光に包まれ、レーザービームが霧散する。


「無敵といったらどうする?」

 

 挑発するように嘯くウーティス。


 当然だが無敵にはほど遠いと自分では思い込んでいるが、強気な台詞を吐くと決めている。


「バ、バリアではない。ナノマテリアルの特殊フィールドなら貫通できるはず……!」

「そんなものではない。調整破片弾式による対レーザー防御。極小の鏡に似た破片弾をばらまいて可干渉性コヒーレント光を分散しただけだ」

「調整破片弾だと?」


 ライムンドが聞き慣れないのも無理はない。対空用の調整破片弾式防御機構。コウの故郷で開発された、無数の金属片を発射するアクティブ防御システムの一つ。金属ガラスなどで構成された小さな粒状の鏡面物質を大量に放出している。

 

「我が父の創意工夫。舐めてもらっては困る」


 アルゲースはその弾頭の材質に金属ガラス基と3Dキラル媒体を用いた。一粒一粒が無数の鏡と化し、鏡片弾のバリアとして五番機を覆っている。この金属粉はガラスのように収束されたレーザー光を拡散させる性質を持ち、機体が稲妻をまとっているように見えるのだ。

 これによって収束されたレーザー光は拡散。超高熱で貫通しようにも金属粉の壁が蒸発したその効果も相まって機体装甲に届くことはない。


 磁気によって一定時間は調整破片弾を纏うことができるのだ。それは光り輝くオーラのようにさえ視認され、雷光を纏う神々しさすら漂っている。

 調整破片弾の防御フィールドは荷電粒子砲やミサイルにも有効だ。欠点は回数に制限があることと、莫大な製造コスト。決戦用の追加装甲と言えよう。


「弾なら回数に限度がある。驕ったな! ウーティス!」


 今度はレーザー光を長時間出力に切り替え、最大出力で発射する。

 破片調整弾の防御フィールドを貫通するが、追加装甲を貫通することはなかった。


「何故だ!」

「これが貴様たちが嘲笑した工作機械たちの加護。彼らは常に俺の味方だ」


 アルゲースと工作機械たちが一晩で作ってくれた大量の小札を重ねた鎧状の追加装甲。ナノセラミックシートを数千枚にも重ねたタイル状の物質は加工が困難なほどの強靱性を誇る。

 それを強化チタンと金属ガラス基の複合装甲の拘束容器に封入している。アストライア艦内の工作機械たちの技術の結晶だった。

 これら一枚一枚が粒子を拡散し、ビームの収束を阻害し、超高温を遮熱する性質を持つ。減衰されたレーザービームが貫通できるわけがない。


 アスモデルはレーザーを連続して放つが、光り輝く金属片がぶつかっては消滅する。

 蒸発し磨り減った破片弾を補充するべく、全身を覆っている調整弾を均等に纏うようにコントロールされるのだ。


 レーザーは効果がないと判断し、ライフル型粒子砲を放つアスモデル。

 無数の粒が壁となり、装甲に届く頃には威力が減衰し切っている。


「ばかな……」

「稲妻の鎧。荷電粒子砲だろうが、レーザーだろうが無駄だぞ」


 対荷電粒子砲、対レーザー専用の金属粉体装甲。アスモデルが高威力レールガンや機関砲を所持していたなら貫通できただろう。

 稲妻アルゲースの名に恥じぬ神の武具が如き鎧。


 五番機が側面に回り込んで、アスモデルの腕がある右側面から斬りかかる。


「どこをみている?」


 五番機が真後ろに浮かんでいた。鳥の大羽根のように大型スラスターが六枚展開されていた。

 抜刀したかと思うとアスモデルの頸部が容易く切断された。


「速さがさらに上がるだと…… そこまで加速できるというのか?!」


 先ほどの加速をもとに再計算した速度を、さらに上回る五番機。

 彼の常識では何から何まで規格外の性能。彼らは時代に取り残されすぎていた。


「できるさ」


 現在五番機は大推力で機体をぶん回している。

 アスモデルはなめらかに加速し最高速に至るが、五番機は大型の爆轟波を用いたスラスター。この大型スラスターはさらに加速特化。最大加速は時速二千五百キロ――マッハ二を越える。

 アルゲースは超大型スラスターを一基、大型スラスターを六基装備させた追加装甲を作り出していた。


「貴様! そんな機体聞いたこともないぞ! 貴様、なにものだ!」

「だから言っているだろう。誰でもない者ウーティスだと!」


 機動力の差を見せつけられる。加速性能は五番機が遙かに上。パイロットの技量も高い。

 貴重なアンティーク・シルエットごと鹵獲しようと思えば出来たはずだ。それをしないのは見せしめであろう。


 理解した瞬間、冷や汗が止まらない。

 五番機はあえて距離を取り、今度はDライフルを連射する。


 続けざまの連射で被弾したアスモデルの装甲は剥がされていく。現在では製造不可能なマテリアルで造られた装甲も流体金属弾は有効だった。


「通じた……!」


 画像で戦いを見入っていたアキが呟き、にゃん汰が隣で頷く。

 彼女たちの開発したライフルは、惑星間戦争最強の一角ともいえる智天使級の装甲を撃ち抜いたのだ。


 アンティーク・シルエットには装甲筋肉も存在しない。装甲を抜いたら脆い構造だ。


「記録映像にあった特殊砲弾か! 実弾兵器ごときに!」


 思わぬダメージに驚愕するライムンド。威力偵察時にアンティーク・シルエットさえも蜂の巣にした戦闘記録映像を思い出した。あの戦闘で使われた正体不明の砲弾であることを確信する。


「光学兵器は欠点が多くてな。その発想が惑星間戦争最大の汚点であり、骨董品を使わざるえない貴様らの限界だ」


 ウーティスが常に死角に移動しながら告げる。


「かのフェアリー・ブルーが言った。最高のガンスミスと至高のワイルドキャットが造り上げたこの武器はたとえどんなランクのアンティーク・シルエットさえ撃ち抜いてみせよう」

「馬鹿な。実弾でそんな威力が出せるものか!」

「最強の実弾だぞ」


 薄く笑う。


「積層電荷シフト結合ナノセラミックを用いた複合装甲を抜く砲弾などありえん!」

「現アシアでは再現不能な装甲素材だな。超高温や超圧力で撃ち抜くぐらいしか対策はない。本来なら!」


 五番機は次々とDライフルの流体金属弾を直撃させる。


「いくら高次元投射装甲化しているとはいえ弾性限界を超えると剛性を急速に喪う物理特性までは変わるまい。光学兵器なぞとっくに陵駕しているよ」


 流体金属を直接ぶつける構造のDライフルは、砲弾が装甲に触れると流体のように振る舞う性質をさらに進化させたもの。

 最初から衝突する砲弾が流体ならばより効率的に装甲を貫通する。二層構造であり内部の液体金属はより質量があるレニウムを採用している最上級の砲弾だ。

 流体は金属水素であり弾そのものが爆燃を発生する特性に、装甲を貫通できなくても衝撃でのダメージを与えることができる。


「なんでそんなものが存在するんだ……」


 アスモデルは超AIが造った究極のバランス型。製造コストを含めての、だ。

 何かを犠牲にすれば、何かを尖らせることはできよう。しかし、当時の兵器運用者たちはそれを嫌った。


「オーバーテクノロジーで製造された最強の兵器。お前らから見れば無駄なこと。今あるシルエットは構築技士たちの試行錯誤の積み重ね――理不尽に挑み非効率を究めた末に辿り着いた果て! 届いただろ? 貴様らが駆るアンティーク・シルエットにな!」


 CX型は並外れた性能を持つ。この機体に辿り着くためには様々な構築技士たちの研鑽と、工作機械たちによる執念ともいえる工夫が生かされている。


 研究に効率や最適解はない。試行錯誤の繰り返し、一見非効率に見える作業の積み重ねだ。転移者や工作機械たちは、多くの失敗をもとに新たな形態のシルエットを生み出し続けたのだ。


「アスモデルを駆るお前を倒すことで、俺は現在の構築技士たちが辿り着いたシルエットの真価を証明する」


 アスモデルを十二分に破壊できることを見せつけたウーティスの機体は空中で静止する。

 攻撃を仕掛けてくる気配はない。それは余裕なのかそれとも――


「そ、そんなことのためにか! 命が惜しくないのか!」


 ここにいたってようやくライムンドはウーティスの意図に気付いた。

 彼は既存の技術をもって、彼自身とアスモデル。あらゆる既存の概念を上回るために命を賭けてここにいる。


 目の前の存在は決して、アスモデルを上回る技術力を誇っているのではない。

 現行で製造出来る技術とマテリアル全てを駆使して、アスモデルに対抗してきている。燃費やコスト、積載。様々なものを犠牲にしてなお、アスモデルの性能に迫ろうとしていることを証明するためだけに、ウーティスは戦っているのだ。


 惑星間戦争時代のアンティーク・シルエットの脅威と傭兵機構本部が持つ権威を失墜させるために。

 もはや勝利しているというのに命を賭けるなど正気の沙汰ではない。


「図に外れて死にたらば、犬死気違なり。恥にはならず」


 ウーティスは口元に笑みを浮かべ、呟いた。生死を超え、我を捨て事を為すにあたり最適解とするその心。犬死に物狂いとも思われようが、自分の信念を貫くという意味だ。


 生死で言うなら、とうに自分は死んでいる。惑星アシアに転移したその日に。

 生きているのはアシアや師匠、五番機。創造意識体たちが助けてくれたからだ。今回の戦いは彼自身単独で始めたもの。死ぬことを怖れていては為すことはできない。


 ライムンドにはウーティスの言葉が理解できなかった。だが本部をはじめとする彼らの言い分も主張せねばならない。


「我らに技術は残されていない! 我らこそ惑星間星系文明の継承者であり、勢力を維持しなければならんのだ! 理解しろ!」


 惑星間戦争時代の技術と、アシアの体制を否定せんとするウーティスに問いかける。

 ウーティスは思うところがあったのか、反撃してこない。距離を取り牽制するのみ。


「技術を封印されてなお、過去の遺産に縋りすぎたのだ。転移者と構築技士まで用意し再興する機会を与えてくれたオケアノスの好意さえ無にしてな。そのままだと惑星間戦争の繰り返しになるだけだ」


 人類は生存するためにネメシス星系に転移し行きすぎた技術で戦争を始め、その過ちを二度も繰り返した。

 それでも傭兵機構本部は過去の技術を崇め、縋っている。やり直しの機会は三十年以上前に与えられていたということに気付かずに。


「多様性を喪ったコストと効率ばかりで他の可能性さえ考慮もしない、ひたすら最適化された技術。そんな連中が残した遺産を有り難がって使っていることがお前らの限界だったんだ」

「我らに残された遺産はあくまで抑止力として揮うべきもの。本来行使する力ではない! ストーンズさえ来なければ……」

「現状を見ろ! そうやって目を背けているうちに惑星アシアの土地は奪われ、次は要塞エリアの資産。最後は多くの人命まで奪われていっている現状を! 貴様らの妥協の積み重ねがこの事態を招いたのだ!」


 ライムンドの釈明にも似た発言を遮るウーティスの声に怒気が籠もる。

 どこかのタイミングで、転移者と傭兵機構が手を取り合えばここまで戦況が悪化することはなかったはずなのだ。傭兵機構本部は転移者や傭兵を駆け引きの道具としてしか見ていなかった。


「何故その絶大な抑止の力を揮った相手がよりにもよって俺達なのか。戦うべき侵略者とは密約し、御しやすいところから奪っていく。あえて言おう。貴様らは売国奴だ。そして俺は皆の力を借りそれを正す」


 トライレーム全員が感じる不信を叫ぶ。むろん傭兵機構本部は国ではないが惑星を管理する行政機関が所属する住人を敵組織の犠牲にしている以上、売国奴以上に相応しい言葉はないだろう。

 戦いを見守る者たち全てが――傭兵機構本部の所属の者たちでさえ口には出せなかった疑念。 


「惑星間戦争に取り残された者たちが今の俺に力を貸してくれている。俺の後ろには多くの創造意識体がいる。彼らは理不尽にもマーダーの優先目標とされた」


 エメはじっと五番機を注視している。にゃん汰とアキの目頭が熱くなった。

 コウはアスモデルを通じて彼女たちの無念さえも晴らそうとしてくれているのだ。


 ファミリアも祈るようにウーティスを見つめている。マーダーの優先抹殺対象であるファミリア、そしてセリアンスロープ。その理不尽が初めて世界に言及されたのだ。

 この言葉はセリアンスロープや、アストライア艦内にいる作業機械たちも耳を傾けていた。


「構築技士たちもその脅威と戦うため自分たちにできることを常に模索し続けていた。工作機械やAIたちはそのイメージを形にすることに尽くした、その集大成こそがこの機体だ」


 ケリーが嬉しそうに鼻を鳴らし、頷くユリシーズの面々。


 圧倒されたライムンドは言い返すことが出来ない。


 目の前の機体が、模索とやらの集大成なのだろう。

 二機は空中で対峙している。


「遺言があるなら聞いてやるぞ」

「ほざけ。それはこっちの台詞だ」


 五番機は刀に持ち替え、アスモデルに突進する。

 

「格闘戦とはな!」


 接近を予測しすかさず武器を持ち替えるライムンド。シルエットの格闘戦は技量に露骨な差が出る。若造に後れを取るわけにはいかない。


 腰に備え付けた高周波電熱ブレードを展開。振り向きざまに五番機に斬りつける。

 そう思った瞬間、アスモデルのブレードは刀身なかばで切断されていた。斬られた瞬間、斬り返されたのだ。次の瞬間返す刀で右腕が吹き飛ばされる。


 こちらの振り抜くタイミングを完全に見切られていたとしか思えない。


「……完敗、か」


 圧倒的な技量差。敗北を認めざる得なかった。

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