配置転換
現在P336要塞エリアの内部に鎮座しているアストライア。
アシアを護るための要だ。
本来はシルエットベースに戻る予定だったが、リュビアの拒否により実現しなかったのだ。
戦闘指揮所内部でアキと一緒にオペレーターを行っているのはにゃん汰だった。
「コウは過保護すぎるにゃー」
相打ち覚悟で電子励起爆薬を使った散弾を使用したにゃん汰だが、その後が問題だった。
コウに呼び出され、配置転換。エポナ二機はともにアストライア内部に格納されている。
電子励起爆薬の威力も問題視されるようになった。
威力調節が困難な以上、直撃でもないのにエポナすら半壊する威力の弾頭で事故があった場合、やはり問題だ。
アンチフォートレスライフルも封印された。
むろん安全装置はあるが、もし誘爆したら味方に甚大な被害を与えることは間違いない。
そんな危険性を改めて実証してしまった結果だ。
「内心嬉しいくせに……」
にゃん汰の姿をみて安堵したコウは彼女を抱きしめたのだ。
ジト目になるエメとアキ。
だがその後、無茶な戦い方をたっぷりと叱られ、配置転換でオペレーターと兵装開発を命じられた。
それ以来にゃん汰は配置転換の不満を口にしては、にへーと頬を緩ませるのだった。
アキは姉に対して嫉妬を隠そうともしない。
「そんなことないにゃー」
と言ってる傍から頬が緩んでる。
「にゃん汰。聞こえるか」
「! 聞こえてるにゃ」
今日はコウが五番機の新兵装を装備して、実戦テストを行っていた。
「
以前試作したスピンコック装填のショットガンをコウに見せたところ、「使うなら俺も全自動のほうがいいかな」と言われて軽くショックを受けたにゃん汰。
刀剣以外の戦闘に関しては趣味を入れないところがコウらしいと思い直し、全自動ショットガンを作成したのだ。
散弾はネメシス戦域ではもっとも非効率な武器ながら、弾頭の工夫によって使える武器ぐらいには引き上げることができったのだ。
「斬る間合いから微妙に離れた敵には有効のはずにゃ」
ツインリアクターに換装されたラニウスC型のなかでも、コウの五番機はとくに問題を抱えていた。
アークブレイド二本装備しているなか、射撃武器は限られる。
装甲が強固になった敵勢力に対し、AK2の優位性が薄れてきている。AK3はその解決策だが、弾薬が共通しているため威力が向上したわけではない。
アンチフォートレスライフルも巨大マーダー用。多数の敵が群がる戦場には不敵だ。コウなら斬ったほうが早い。
かといって敵の群れのなかに特攻させるわけにもいかない。
コウの苦手な射程を克服するべく、日々頭を悩ましているのがにゃん汰とアキだ。彼は実弾兵装にこだわる。そして彼のための一番の実弾兵装を用意できるのは自分たちなのだ。
「とはいってもこれ、バリー向けの兵器じゃないかなぁ」
射撃に徹したほうが強そうだというのがコウの感想だ。
ただ、軽量機体には向かないだろう。反動が強い。これもまた装甲筋肉があって初めて運用できる兵器といえた。
「かもしれないにゃ。バリーはコウほどブレードに対するこだわりはないにゃ」
「ショットガンを機関砲みたいにできないものか」
「対人ならありだけど、兵器相手にあまり意味ないにゃ。弾をばらまく以上、散弾に近い効果はすでに得られているにゃ」
「それもそうか」
五番機はショットガンを構える。
「射程を重視するか命中率を重視するか、か……」
「長射程のライフルも現在開発中にゃ。もう少し待つにゃ」
「わかった。では戦闘に戻る」
「了解にゃ」
通信が途切れた。
「アキ。例の砲身はどう?」
「コウと話せたからといって急に切り替わらないでくださいね、にゃん汰。もう完成しています」
いきなり溌剌と働き始めるにゃん汰に呆れるアキ。
「ありがとう。早めに仕上げないと」
戦線は膠着状態。拮抗している以上、大規模な戦闘が発生するのは間違いない。
来たるべき日に備えるべく、二人もまた兵装の開発に急いでいた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ビッグボス! そっちに向かった!」
アサルトシルエット隊と行動を共にしているコウの五番機。
新手のアベレーション・アームズと戦闘中だ。
低空を滑空するように飛び回る。
滑空を主にするタイプであり、尾にあたる部分を振り回し旋回性能を上げている。
「こういう相手なら!」
五番機が両手に構えるフルオートのショットガンが火を噴く。
大粒の
「あんなのを操縦するなら飛行機でいいだろうに」
隊長のジェイミー。彼もまたラニウスのC型に移行している。
「MCSの問題だろう。戦闘機モードや戦車モードよりも感覚的に操縦できるみたいだ」
「とはいっても兵装も少ない。兵器としての効率はあまりよくなさそうだ」
「実際そうだと思う。だから数が少ないんだろう」
アルゴフォースがアベレーション・アームズを試行錯誤しているのはよくわかった。
戦線は停滞中だが、小規模の局地戦は頻発している。
双方、新兵器が投入されているのが現状だ。
「テストか。向こうも手探りなのがわかりますね」
「翼竜型が増えるようなら、低速域の戦闘機がもっと必要になるな」
「そこまで警戒することはないでしょう。あれは地上対空部隊でも対処できますね」
他の翼竜型もファミリアが操縦する対空車両に撃墜されていた。
左右の大型のガトリングと対空ミサイルを装備した、ロボットみたいな対空車両「スカイスィーパー」だ。
航空機に対しての対空ミサイルはもとより、大口径ガトリングは有線式ミサイルに有効だ。
大口径ガトリングの水平射撃による対地攻撃も侮れない。
「この感覚、敵のマーダー猛攻にも似ています。在庫処分的な」
「そうだろうな。次、大量に現れるヤツが本命だ」
それはコウも思っていたところだ。
「アベレーション・シルエット、か」
さらなる兵種の登場に嫌な予感がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます