第十八話 空母「ハーミス」撃沈

 南雲司令部はコロンボに続いての今回のトリンコマリー空襲では、艦爆隊全機を残すことに決めていた。艦爆隊の搭乗員からは不満の声が爆発していた。英巡洋艦二隻撃沈のこともあり、今回も獲物がいないとは限らないのだ。

「いつもいつも柳の下にどじょうなどいるものか」

 艦爆隊の士官は捨て台詞で艦橋から降りていく。

 しかし、榛名からの電報は、司令部の決定に幸運をもたらしていた。

「直ちに右回頭、敵に向かう」

「敵航空母艦が見つかったぞ」

「空母は『ハーミス』型だ」


 空母「ハーミス」は英国で一九二四年に就役した航空母艦として建造された艦である。日本の空母「祥鳳」と同程度の規模である。要目は次の通りである。

  基準排水量 一〇、八五〇トン

  全長 一八二・三メートル

  最大幅 二一・三メートル

  出力  四〇、〇〇〇馬力

  最大速力 二十五ノット

  航続距離 一八ノット・二、九三〇浬

  搭載機数 二〇機

  四五口径一四センチ単装速射砲 六基

  四五口径一〇・二センチ単装高角砲 四基

  三ポンド単装砲 四基


 司令部には緊張と喜びが蔓延した。

 旗艦「赤城」からは信号が発せられた。

「艦爆隊及所定艦戦出発準備を為せ。空母攻撃」

 爆弾搭載が完了している艦爆はすぐさまエレベーターで飛行甲板に上げられ、発艦準備を急いだ。

 艦爆八十五機、零戦九機が発進していった。

 指揮官は高橋少佐である。


総指揮官 高橋赫一 少佐

空母 赤城 

  九九式艦爆 十七機(二五〇キロ×十七)

  指揮官 阿部善次 大尉

   第一中隊

    第一小隊 一番機 操縦 阿部善次 大尉

             偵察 斉藤千秋 特務少尉

         二番機 操縦 秋元 保 一飛曹

             偵察 土屋陸邦 一飛曹

         三番機 操縦 菊池五一 三飛曹

             偵察 飯田好弘 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 田中義春 一飛曹

             偵察 大渕珪三 中尉

         二番機 操縦 西宮伊佐男 三飛曹

             偵察 佐藤直人 二飛曹

         三番機 操縦 芥川武志 一飛

             偵察 佐々木三男 一飛

    第三小隊 一番機 操縦 鈴木 要 一飛曹

             偵察 前川賢次 飛曹長 

         二番機 操縦 武居一馬 一飛

             偵察 原田嘉太男 一飛曹

         三番機 操縦 長島善作 一飛

             偵察 西山 強 三飛曹

   第二中隊 


    第一小隊 一番機 操縦 山田昌平 大尉

             偵察 野坂悦盛 一飛曹

         二番機 操縦 望月伊作 一飛

             偵察 土屋亮六 二飛曹

         三番機 操縦 石井信一 二飛曹

             偵察 山下敏平 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 高野秀雄 一飛曹

             偵察 清水竹志 飛曹長

         二番機 操縦 向後 栄 二飛曹

             偵察 山本義一 一飛曹

         三番機 操縦 山川光好 一飛

             偵察 青木豊三郎 二飛曹

    第三小隊 一番機 操縦 古田清人 一飛曹

             偵察 川井 裕 一飛曹

         二番機 操縦 大野 孝 一飛

             偵察 長谷川菊之助 一飛

    掩護制空隊

         一番機 木村惟雄 一飛曹

         二番機 高原重信 二飛曹

         三番機 羽生十一郎 一飛

空母 蒼龍

  九九式艦爆 十八機(二五〇キロ×十八)

  指揮官 江草隆繁 少佐

   第一中隊

    第一小隊 一番機 操縦 江草隆繁 少佐

             偵察 石井 樹 特務少尉

         二番機 操縦 山崎武男 二飛曹

             偵察 遠藤 正 一飛曹

         三番機 操縦 須藤一郎 二飛曹

             偵察 山口 積 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 小井手護之 大尉

             偵察 山本 博 飛曹長

         二番機 操縦 朝倉 暢 一飛曹

             偵察 石田重吉 一飛曹

         三番機 操縦 山中正三 二飛曹

             偵察 土屋嘉彦 二飛曹

    第三小隊 一番機 操縦 菅原 隆 飛曹長

             偵察 山口幸男 飛曹長

         二番機 操縦 池永 弘 二飛曹

             偵察 高橋秀吉 二飛曹

         三番機 操縦 藤田辰男 三飛曹

             偵察 金賀五郎 一飛曹

   第二中隊 

    第一小隊 一番機 操縦 池田正偉 大尉

             偵察 寺井 栄 飛曹長

         二番機 操縦 土屋庚道 一飛曹

             偵察 藤田多吉 一飛曹

         三番機 操縦 藤田辰男 三飛曹

             偵察 金賀五郎 一飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 中川紀雄 一飛曹

             偵察 栗原一彌 中尉

         二番機 操縦 井後茂雄 三飛曹

             偵察 寺元英己 一飛曹

         三番機 操縦 遠藤定雄 一飛

             偵察 水谷廣恵 三飛曹

    第三小隊 一番機 操縦 山田 隆 一飛曹

             偵察 船橋金三 一飛曹

         二番機 操縦 加藤 求 一飛

             偵察 土井安松 二飛曹

         三番機 操縦 小瀬本國雄 一飛

             偵察 高野茂雄 二飛曹

    掩護制空隊

         一番機 杉山武夫 一飛曹

         二番機 野田光臣 一飛曹

         三番機 吉松 要 二飛曹

空母 飛龍

  九九式艦爆 十八機(二五〇キロ×十八)

  指揮官 小林道雄 大尉

   第一中隊

    第一小隊 一番機 操縦 小林道雄 大尉

             偵察 小野義範 飛曹長

         二番機 操縦 﨑山 保 一飛曹

             偵察 前田 孝 飛曹長

         三番機 操縦 坂井秀男 一飛

             偵察 福永義暉 一飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 下田一郎 中尉

             偵察 住吉 語 一飛曹

         二番機 操縦 山田喜七郎 一飛曹

             偵察 内ノ村 保 一飛曹

         三番機 操縦 中尾信道 三飛曹        

             偵察 岡村栄光 一飛曹

    第三小隊 一番機 操縦 中川静夫 飛曹長

             偵察 吉川啓次郎 飛曹長

         二番機 操縦 土屋孝美 三飛曹

             偵察 宮里光矢 二飛曹

         三番機 操縦 関 政男 一飛曹

             偵察 田中国男 一飛

   第二中隊

    第一小隊 一番機 操縦 西原敏勝 飛曹長

             偵察 山下途二 大尉

         二番機 操縦 大石幸雄 一飛曹

             偵察 田島一男 飛曹長

         三番機 操縦 黒木順一 三飛曹

             偵察 村上親愛 三飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 中沢岩雄 飛曹長

             偵察 中山七五三松 特務少尉

         二番機 操縦 瀬尾鉄男 一飛曹

             偵察 安田信恵 一飛曹

         三番機 操縦 近藤澄夫 一飛

             偵察 清水 巧 三飛曹

    第三小隊 一番機 操縦 川畑弘保 一飛曹

             偵察 石井正郎 飛曹長

         二番機 操縦 池田高三 二飛曹

             偵察 板津辰雄 三飛曹

         三番機 操縦 渕上一生 一飛

             偵察 水野泰三 一飛

    掩護制空隊

         一番機 松山次男 飛曹長

         二番機 牧野田俊夫 一飛曹

         三番機 千代島 豊 一飛

空母 翔鶴

  九九式艦爆 十八機(二五〇キロ×十八)

  指揮官 高橋赫一 少佐

   第一中隊

    第一小隊 一番機 操縦 高橋赫一 少佐

             偵察 野津保衛 特務少尉

         二番機 操縦 篠原一男 一飛曹

             偵察 染野文雄 一飛曹

         三番機 操縦 福原 淳 二飛曹

             偵察 鈴木富三 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 山口正夫 大尉

             偵察 中 定次郎 特務少尉

         二番機 操縦 上島 初 一飛曹

             偵察 甲田 力 一飛曹

         三番機 操縦 小田桐忠造 一飛

             偵察 横田益太郎 一飛

    第三小隊 一番機 操縦 三福岩吉 中尉

             偵察 小板橋博司 二飛曹

         二番機 操縦 中所修平 二飛曹

             偵察 長沢重信 二飛曹

         三番機 操縦 加藤熊一 三飛曹

             偵察 大浦民平 三飛曹

    第四小隊 一番機 操縦 伊藤勇三 一飛曹

             偵察 国分豊美 飛曹長

         二番機 操縦 白井五郎 一飛曹

             偵察 九島作次郎 二飛曹

         三番機 操縦 原島正義 一飛

             偵察 元俊二郎 二飛曹

   第二中隊

    第一小隊 一番機 操縦 前田久良 大尉

             偵察 長岩 雄 飛曹長

         二番機 操縦 鈴木敏夫 二飛曹

             偵察 今田 徹 一飛曹

         三番機 操縦 塙 明重 一飛

             偵察 山内 博 一飛

         四番機 操縦 杉浦敏雄 三飛曹

             偵察 富樫勝介 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 松田幸徳 飛曹長

             偵察 小泉精三 中尉

         二番機 操縦 池田 清 三飛曹

             偵察 野辺武夫 一飛曹

         三番機 操縦 大川豊信 一飛

             偵察 吉永四郎 一飛

空母 瑞鶴

  九九式艦爆 十四機(二五〇キロ×十四)

  指揮官 坂本 明 大尉

   第一中隊 

    第一小隊 一番機 操縦 坂本 明 大尉

             偵察 井塚芳夫 飛曹長

         二番機 操縦 中西義男 一飛曹

             偵察 藤岡寛夫 二飛曹

         三番機 操縦 酒巻秀明 二飛曹

             偵察 根岸正明 二飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 葛原 丘 中尉

             偵察 小山 茂 飛曹長

         二番機 操縦 加藤清武 二飛曹

             偵察 福垣実美 三飛曹

         三番機 操縦 菅崎正生 二飛曹

             偵察 瀬市軍三 一飛

   第二中隊

    第一小隊 一番機 操縦 江間 保 大尉

             偵察 東 藤一 飛曹長

         二番機 操縦 稲垣富士夫 一飛曹

             偵察 石川重一 一飛曹

         三番機 操縦 江種繁樹 一飛

             偵察 川添正義 三飛曹

    第二小隊 一番機 操縦 安藤五郎 一飛曹

             偵察 大塚禮次郎 中尉

         二番機 操縦 井方作男 一飛曹

             偵察 白倉耕太 二飛曹

    第三小隊 一番機 操縦 福永政登 飛曹長

             偵察 川瀬孝治 一飛曹

         二番機 操縦 堀 健二 二飛曹

             偵察 上谷睦夫 二飛曹

         三番機 操縦 松本芳一郎 一飛

             偵察 辻 四郎 一飛

 

 攻撃隊を掩護する戦闘機は九機と少なかったが、ハーミスの上空には英戦闘機の姿はなかった。ハーミスの搭載機は、トリンコマリーに陸揚げしていたのだ。

 高橋少佐は一三五〇時に空母「ハーミス」を発見した。付近には駆逐艦一隻と商船一隻を認めたにすぎない。高橋少佐は自身の翔鶴隊を爆撃降下地点へと導き、「ハーミス」に対して、高度四千メートルから急降下を開始した。二五〇キロ爆弾は面白いように飛行甲板に吸い込まれて行った。一部は外れて舷側におきな水柱を立てているが、大方命中していた。瑞鶴隊が続いて降下を開始し、これまた命中弾を挙げていった。飛龍隊、赤城隊が攻撃中に「ハーミス」はあっけなく沈没してしまった。高橋少佐は一三五五には

「敵空母沈没残りは北二〇浬の巡洋艦に向え」

 と命じた。


 オンスロー艦長含む士官十九名、兵員二百八十八名が運命を共にした。生存者は病院船「ヴィータ」に救助された。蒼龍の江草少佐は直ちに空母に対する攻撃を中止し、残る濠駆逐艦「バンパイア」と商船「アゼルストーン」(五、五七一トン)に対して突撃を命じ、こちらも瞬く間に撃沈してしまった。小型のコルベット「ホリーホーク」も撃沈された。


 再びこの攻撃に参加した飛龍隊の板津二飛曹の手記を引用してみる。

『私たちは、今日こそは敵空母め出て来いよ、腕を撫して待っていたが、索敵機からの報告は何も入らない。

「もうツリンコマリの攻撃はおわったころだろう」

と話し合っているとき、搭乗員室の拡声器が鳴った。

「空母攻撃、艦爆隊および所定艦戦隊出発準備をせよ」

 私たちは「それ!」と飛行甲板へ駆け上がった。飛行機が次々と飛行甲板へ揚げられる。攻撃隊の空襲終了直後の午前十時五十五分、「榛名」から索敵に出ていた水偵が、セイロン島東岸に「ハーミス」と随伴駆逐艦を発見したのであった。午前十一時四十三分発艦。攻撃隊は一時間でセイロン島の東岸に達した。しかし、目標は見えない。水偵からの第二報が敵艦の針路を百八十度と伝えていたことから、沿岸沿いに南下しながら探すが、いない。二十分ほど南下して、指揮官機は北に反転した。十数分。いたいた。前方に「ハーミス」を先頭に、駆逐艦、商船の順で必死に北に向かって走っている。海岸から十マイルほどの地点だ。

「ハーミス」は前夜、「セイロン島の東方に機動部隊発見」の報に、駆逐艦「バンパイヤ」や商船、艦隊付属の小艦艇とツリンコマリから南方に退避していたが、日本軍の攻撃終了の報告を聞いた基地南方六十五マイルのあたりで、「榛名」の水偵に発見され、急ぎ帰港ところだったのである。

「突撃準備隊形作レ」

各母艦艦爆隊は、めいめいに狙いを定めながら緩降下で、単縦陣をつくりながら目標上空を左り左りへと旋回を始めた。「ハーミス」の甲板上には一機の飛行機もいない。前甲板に日の丸を記して擬装しているのが哀れだ。高角砲を撃ち上げてきた。

 一番飛行機が突っ込んで行った。初弾命中。艦尾から十五メートルぐらいの所に白煙があがった。後続機の爆弾も一番機につづいて後甲板を直撃している。私は艦橋下部の火薬庫付近を直撃しようと思った。

「前部の火薬庫をねらうぞ」

 前席に声をかけて、左旋回しながら母艦に見入っていると、「カン」と音がした。前を見ると、エンジンの直前に砲煙があがっている。もう五十メートルも前進していたら、直撃を受けるところだ。余裕はない。機をひねって降下して行った。爆弾は狙いどおり艦橋前に直撃した。

 機を引き起こして旋回しながら、後続機の爆撃状況を見守った。新たに目標ができて、全弾が艦橋付近中央部に集中しはじめた。敵空母はよろめくように左へ傾きはじめた。と、艦中央部からも物凄い火柱が噴き上がった。大爆発だ。火薬庫が誘爆を起こしたのであろう。船体が真っ二つに折れて轟沈した。時計を見た。午後一時五十五分。初弾が命中してからわずか数分間である。』

             (板津辰雄著、前掲書)


 艦爆隊の未攻撃機はまだ相当残っていた。蒼龍隊に至っては誰も投弾していない。

 攻撃途中で、索敵機からの電報が入った。

「更ニ敵ラシキ空母一隻見ユ 〇度三〇浬」

 蒼龍隊は索敵情報に基づき

一四〇〇「空母二隻ナリヤ一三一四攻撃隊北ニ向ウ」

 と江草少佐は打電し北の敵空母を求めていった。一三一四とは一三(蒼龍隊)一四(飛龍隊)のことである。

 そして一四〇五江草少佐は、

「敵空母ノ位置知ラセ」

 と打電した。しかし、報じてくる場所には商船以外発見できないので、再び

「商船ノ誤ナラズヤ」

 と返した。

一四五八、筑摩機は貨物船の見誤りと打電してきた。

 やはり、目標の空母は商船の誤報であった。爆撃隊は油槽船「サージャント」と商船「ノルヴィケン」を爆撃してこれを撃沈し帰途についた。が、空母「ハーミス」の応援要請を受けて出撃したハルマー艦戦八機が日本の爆撃隊を発見したため、九九式艦爆と英戦闘機との空戦となった。九九式艦爆は爆弾を投下した後で身軽であり、機首に機銃を二挺装備しており、しかも空戦性能も高いのが特徴である。江草少佐以下の蒼龍隊の各機は格闘戦を演じて、五機を撃墜、二機を撃墜不確実したとしたが、江草隊も四機が自爆した。英軍は三機撃墜し、二機を喪失したとしている。蒼龍艦爆隊は、朝倉一飛曹機、菅原飛曹長機、金賀一飛曹機、寺元二飛曹機の四機が被弾して自爆、小井手大尉機が被弾大破、江草少佐機含め三機が被弾していた。


 艦爆隊が出撃した後、南雲艦隊は忍び寄る英軍爆撃機に全く気が付かなかった。日本軍の記録によればブレニム爆撃機九機(英国側では八機)が襲来し、源田参謀の手記によれば、見張員の「利根方向水柱」の報告があり、しばらくすると空母「赤城」の周囲に水柱が立ち昇り、奇襲を受けたことに気づいたのである。上空の戦闘機隊も全く気がつかなかった。全く冷や汗ものである。回避行動をとっていなかったのだから、英軍の照準が正確であったならば、被害を受けていたことは否めない。爆撃機のうち五機(実際は四機)は上空の零戦が撃墜したが、蒼龍の熊野大尉が被弾し自爆したのは惜しまれる。遁走した四機は帰還してくる飛龍艦爆隊を掩護する零戦三機が遭遇攻撃し一機を撃墜し、一機に損傷を与えたが、牧野田一飛曹機が被弾自爆した。また、赤城の艦爆隊もこの爆撃隊と遭遇し、二機を撃墜したとしているが、英軍側は二機帰還となっているので、零戦隊と艦爆隊の共同で一機を撃墜し、一機は被弾のため飛行場に不時着したようだ。


  

 南雲中将は、目的を達成したと判断し日本へと艦隊の針路を向けた。そして、連合艦隊司令部宛てて報告した。


 一、八日一八〇〇ツリンコマリの一〇五度四五〇浬ニ於テ触接セル敵飛行艇ヲ

  発見追撃セシモスコールノ為之ヲ逸セリ

 二、九日一〇三〇艦攻全力艦戦三七機ツリンコマリ攻撃レアンダー型軽巡一隻

  大破(多分沈没)、商船大二小一撃沈、海軍工廠及同桟橋附近施設、高角砲

  台、長官官舎、兵舎三棟、油槽群一爆破炎上概ネ壊滅、陸上飛行場大型格納

  庫二棟爆破炎上、火薬庫大爆発ヲ誘起シ飛行場施設壊滅ス 空戦ニ依リハリ

  ケン三八、ブレニム二、スーパーマリンウオラス一撃墜(内三機後不確

  認) 地上機中型一、小型三銃撃炎上、被害飛龍艦攻自爆一、機上戦死二、

  重傷一、艦船自爆瑞鶴二、翔鶴一三、錫蘭島東方海面捜索中ノ水偵ハ九日一

  〇五五ツリンコマリノ一四七度七〇浬ヲ南下中ノ敵航空母艦ハーメス及駆逐

  艦ヲ発見接触艦爆全力、艦戦九ハ一四〇〇之ヲ攻撃二隻共撃沈 余剰兵力ヲ

  以テ附近行動中ノ大型商船三ヲ撃沈ス 

  水偵ハ別ニ小型商船一隻撃破 帰投中艦爆隊ハスピットファイヤー九機

  ト交戦其ノ七機(内二機不確認)ヲ撃墜セリ 被害蒼龍艦爆四機スピットフ

  ァイヤートノ空戦ニ依リ自爆

 四、九日一〇一六接触中ノ敵飛行艇一機撃墜 一三五〇敵プレネム型九機来

  襲 空戦ニ依リ其ノ七機ヲ撃墜(五機ハ上空直衛機、二機ハ帰投中ノハーメ

  ス攻撃隊ニ依ル)

  赤城、利根爆撃ヲ受ケシモ被害ナシ

 五、所見

  敵ハ錫蘭島防御ノ為相当ノ兵力ヲ集中シツツアリ対策ヲ講ズル要アリト認ム

 

 以上の報告を受けた大本営は報道部を通じて大々的に発表した。


『四月十三日午後三時五十分発表

 四月五日以来、印度洋に作戦中の帝国海軍部隊の戦況並に綜合戦果左の如し

コロンボ方面 四月五日 航空部隊を以てコロンボを急襲し、スピットファイア、ハリケーン、ソードフィッシュ、デファイアント等敵五十五機を撃墜、港内船舶十六隻を撃破すると共に飛行場格納庫三棟、修理工場一棟、その他軍事施設数箇所を大破又は炎上せしめたり。尚、附近洋上に於て敵大型飛行艇PBY二機及アルバコア一機を撃墜せり

コロンボ方面洋上 四月五日 セイロン島南方百数十浬の洋上に於て高速退避中の英甲巡ロンドン型一隻及コンウォール型一隻を発見、機を逸せず航空部隊を以て之を攻撃し、忽ち両艦を撃沈せり

ベンガル湾方面 四月五日 コロンボ方面の攻撃に呼応し、ベンガル湾に進攻せる部隊は同方面航行中の英国船二十一隻約十四万噸を撃沈、七隻約四万噸を大破せり

印度東岸方面 四月五日 印度東岸の英国重要軍事拠点ビザガパタム、コカナダ等を奇襲し所在の艦船、諸軍事施設に大損害を与えたり

トリンコマリー方面 四月九日 航空部隊を以てトリンコマリーを強襲し、ハリケーン、ブレニム、スーパーマリン(ウォーラス)等約四十一機を撃墜、四機を地上炎上し、更に英巡リアンダー型一隻を大破、敵船大型二隻、小型一隻を撃沈、海軍工廠、大型飛行機格納庫二棟、火薬庫、兵舎、油槽群等敵重要軍事施設等を破壊し、特にその飛行施設を覆滅せり

トリンコマリー洋上方面 四月九日 トリンコマリー東南洋上を南下中の敵航空母艦ハーミズ並に駆逐艦一隻を発見、航空部隊を以て直ちにこれを攻撃撃沈、又航空部隊の一部は、付近航行中の敵船四隻を撃沈せり。尚、同方面作戦中、敵スピットファイア、ブレニム等十五機を撃墜せり

其他 本作戦中、帝国潜水艦は敵船七隻を撃沈、一隻を大破せり。

 右諸作戦中、コロンボ及トリンコマリー方面に於て我が方十七機を失える他、艦艇には微塵の損傷なし。』

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