第七話 大本営政府連絡会議(二)

 一週間に亘る議論は第一から第十一までの問題点が提議され、それについてある程度の結論が出たのである。


 それぞれについて掲載する。

一、欧州戦局の見透如何

 これに対する説明として

 1 独軍は既に「モスコー」周辺に迫り欧「ソ」に於ける「ソ」野戦軍は

  甚大なる打撃を蒙り今次独「ソ」戦は独作戦の成功裡に一段落を告ぐべ

  しと雖「スターリン」政権としては対独屈服は自己政権を崩壊に導くの

  虞あるを以て今や比較的鞏固きょうことなりたる其政治的基礎に

  依拠し不十分ながら「ヴォルガ」以東の資源と米英よりの支援とに頼り

  消極的抵抗を策すべく一面独「ソ」戦が民族戦の様相を呈しつつある事

  実に鑑みるに「ソ」民族の抗戦意識は当分急速に衰亡せざるべし

  独としては従来其首謀者が漏したる所に依れば共産主義に対する徹底的

  打倒を期すべく又「ソ」に対し再起反撃不可能の状態に迄打撃を与うる

  に非れば今次対「ソ」開戦の意義無かるべく寛容なる条件を以て媾和す

  るが如き公算尠しと謂うべし

 2 英としては伝統ある国民性と大国たるの矜持きょうじとを有し且独

   「ソ」戦を利用せる国防弾撥力の恢復かいふくに依り戦争遂行上相当

   の自信を有すべく独に対し容易に屈服すべしとは予想せられず勢い独英戦

   も長期化するものと判断せらる

 3 然れども既に「ウクライナ」の宝庫を確保せる独は今後高架索の油田

   を掌握し進んで近東、「スエズ」を攻略し茲に欧州大陸を制覇して不  

   敗の態勢を樹立し欧州新秩序の第一段階を確立しうべきを以て必ずし

   も一挙に英国を撃滅するの要なく従って更に其れ以上の地歩を拡大す

   るの要なかるべく其対英本土攻略に着手し上陸成功するか若は対英逆

   封鎖奏効せば英に決意に動揺を与え「ソ」勢力の窮迫とも関連し欧州

   に媾和の実現を見ることなきを保せず

 4 尚独軍の対英本土上陸は不可能にあらざるも其危険性甚大なるを以て

   来春早々断行せられざる公算尠からず又独にして対英本土上陸に成功

   せる場合英艦隊が太平洋方面に逃避せんと説くものあるも四千七百万

   の母国同胞を見棄てて之を行うが如きは独が英国民に対する給養の責

   を負わざる旨意志表示せるに鑑みるも人道上起り得ざるべし


二、対英米蘭戦争に於ける初期及数年に亘る作戦的見透し如何

  右の場合支那非占領地区を利用する米英の軍事的措置判断如何

 1 陸軍作戦

  南方に対する初期陸軍作戦は相当の困難あるも必成の確算あり爾後は海

  軍の海上確保と相俟ち所要地域を確保し得べし

 2 海外作戦

  初期作戦の遂行及現兵力関係を以てする邀撃作戦には勝算あり

  初期作戦にして適当に実施せらるるに於ては我は南西太平洋に於ける戦

  略要点を確保し長期作戦に対応する態勢を確立すること可能なり

  而して対米作戦は武力的屈敵手段なく長期戦となる覚悟を要し長期戦は

  米の軍備拡張に対応し我が海軍戦力を適当に維持し得るやに懸り戦局は

  有形無形の各種要素を含む国家総力の如何及世界情勢の推移の如何によ

  り決せらるる所大なり

 3 米英の支那に於ける非占領地区の軍事的利用は主として飛行基地なる

  も現在の状況及将来の帝国の南方作戦に依る交通遮断に鑑み大なる顧慮

  を要せざるものとす尚支那沿岸の軍事的利用は帝国海軍の南方海洋制覇 

  に依り不可能ならしめ得べし


三、今秋開戦するものとして北方に如何なる関連的現象生ずるや

  「ソ」連は開戦頭初対日積極行動に出づる算少きも米は極東「ソ」領を

  軍事的基地に強用する算多く「ソ」連亦我に対し各種の策動をなすの覚 

  悟あるを要す

  尚爾後の情況によりては日「ソ」開戦を誘発するの可能性あり

     説  明

 1 「ソ」連軍需工業は「ヴォルガ」以西の地区を失うことに在りて二割

   五分を残すに過ぎざることとなり欧「ソ」赤軍は独「ソ」戦に依りて

   徹底的打撃を受け極東赤軍は之が増援の為今春来十一師団強、戦車少

   くも一千輌、飛行機一千二百機以上を欧「ソ」方面に西走し其戦力は

   物心両面に亘り低下しつつあり、加之極東「ソ」軍は今や「スターリ

   ン」政権に残されたる最後の総予備たる性質を有するに至れり、従っ

   て日本が南方進出を開始する場合英「ソ」間の提携も促進せられて米

   英は「ソ」連に対し対日攻勢を使嗾しそうすべきも我関東軍の厳存す

   る限り「ソ」連が進攻を敢てし来ることなかるべく只満州支那に於て共産

   党を利用する破壊的工作、思想宣伝等の謀略的工作を以て我を牽制する

   に止るべし

 2 然れども米は「ソ」に対し北方よりの対日攻撃拠点として極東「ソ」

   領の一部を飛行基地乃至は潜水艦基地として強制利用することあるべ

   く「ソ」としては之を拒否すること困難なるべく従て一部潜水艦飛行

   機等に依る策動を試むることあるべし斯る事が原因となりて状況の推

   移に依り日「ソ」開戦に導かるる危険なしとせず、我が南方攻略が長

   期戦に陥る場合若は「ソ」の内部的安定状態が恢復に向いたる場合は

   極東赤軍が漸次攻撃的姿勢に転じ来るべき可能性ありとす

    註 独「ソ」開戦後の日「ソ」交渉に於て「ソ」政府は

     ⑴日「ソ」中立条約を遵守す

     ⑵日本を対照とする軍事同盟は結ばざるべし

     ⑶極東に於て第三国に軍事的基地を与うる如きこと無かるべし等

      の意向を明にせるも右は独「ソ」戦に対処する「ソ」連の外交

      方針と見る可く日本が南方に進出したる場合には事態は著しく

      異り来るを以て此場合「ソ」連としては前述の見透に応ずる措

      置を採り来るものと見ざるベからず


四、対米英蘭戦争に於ける開戦後三年に亘る船舶徴庸量及消耗見込如何


五、右に関連し国内民需用船舶輸送力並主要物資の需給見込如何

(四、五とも内容に関する記録資料なし)


六、対米英蘭戦争に伴う帝国の財政金融的持久力判断

 軍事行動を遂行し且国民生活を維持するに必要なる物的方面充足せらるる 

 限り財政金融は持久可能なり

     説  明

物的方面に関し本文所掲の要件充足せらるる限り財政金融に関しては強度の政治力発揮の下に各種施策を総合的に実施することに依り之が持久可能なるものと認む

尚占領地に関しては相当長期の間一般民衆の生活を顧慮するの余力なしと考えらるるを以て当分搾取方針に立つの已むを得ざる事情に在り、但し治安の維持及現地勢力の使用を確保する為に必要なる最小限度に於ては物資の供給を為さざる可からず、尤も其の限度は現地住民の文化低きこと及天産比較的豊富なることに鑑み支那等に比すれば負担少なきものと認む


七、対米英蘭開戦に関し独伊に如何なる程度の協力を約諾せしめ得るや

  帝国が対米英蘭作戦をなす場合帝国として要望し得る事項は大なる期待

  をかけ得ざるべきも我決意を知らしめ作戦協定を提議する場合は差当り

  概ね左の程度を約諾せしめ得べし

 ⑴対米宣戦

 ⑵日独伊三国は英米を相手とする単独媾和を、又右三国は英の一国のみを

  相手とする媾和を為さず

 ⑶通商破壊戦に対する協力

     説  明

 1 帝国が対米英蘭戦争を開始する場合独伊に於て之を歓迎すべきは勿論 

   なるべきも戦争の勝敗を決するが如き作戦上の協同動作を採り得る範

   囲は比較的少き為仮令三国間に協定をなすも其の効果に大なる期待を

   懸け得ざるものと予期するを可とす

 2 帝国に執り必要なる事項は独伊が対米宣戦を行い米の戦力を極力大西

   洋に牽制すること並に媾和に関して共同戦線態勢を崩さざることの二

   点なりとす

   而して右は米独間の現状及「ヒ」総統の対英攻勢企図の現状に照し約

   諾拒否の態度に出ずべしと思われず

 3 作戦上の共同動作は各々の受持範域に於て可能なる事項に付之を協定

   し得べき独「ソ」戦今後の見透しとして独が近東方面に作戦する公算

   は比較的大にして近東作戦の依る対日呼応は帝国の南方作戦と時期的

   に実現可能なり

   通商破壊戦に関する協同動作は太平洋、印度洋等を主要舞台として之

   を実現し得ること論を俟たず


八、戦争相手を蘭のみ又は英蘭のみに限定し得るや

  米英は不可分にして戦争相手を蘭のみ又は英蘭のみに限定すること不可

  能なり

    説  明

 1 政略上の理由

   英、米、蘭には帝国の対南方武力進出の場合に於ける共同防衛に付了

   解あるは殆んど疑なき所にして米英の実際採るべき態度は帝国の武力

   的南進の時期方法当時の国際情勢、米英両国の国内事情に依り多少の

   差異あるべきも結局に於て戦争相手を蘭又は英蘭のみに限定すること

   は到底不可能なるべし現情勢を基礎とする米英両国に対する判断左の

   通

  (イ)英国(豪州、加奈陀を含む)

    従来の英国側言動に鑑み帝国が蘭印に進出する場合英国は自衛の為

    直ちに帝国に対し武力的に対抗する決意をなすこと略確実と見ざる

    ベからず

  (ロ)米国

    前項の如き場合英国は直ちに米国の援助を求むべく米国は即時参戦

    せざる場合に於ても急速に軍事的措置を強化しつつ一応各種の牽制

    示威の段階を経べく況んや帝国との関係に於ては独逸に対し採れる

    態度に比し其の参戦態度著しく急歩調なるべきを予期せざるベから

    ず蓋し米国は

    ⑴南西太平洋を以て自国の発言権圏内と思考しあること

    ⑵同方面よりの物資(「ゴム」、錫等)を必要とすること

    ⑶比島に対し重大脅威を受くること

    ⑷支那問題に対する米国の発言権を全面的に失うに至るべきこと

    ⑸欧州戦に比し与論の刺激大なること

    等の事情ありて対岸の火災視し得ざるを以てなり

  2 作戦上の理由

  (イ)米英両国を措いて蘭印作戦を遂行せんとし或は米を措いて対英作

     戦にのみ終始せんとするが如きは我より求めて敵に割中せらるる

     の戦略態勢を作為するものにして新嘉坡、香港(比島)等に対し

     作戦線の弱点たる側面を暴露するものにして作戦実施上為し得ざ

     る所なり

  (ロ)対英作戦対米作戦は現状に於ても既に先制攻撃に依るに非れば実

     施極めて困難にして対蘭戦を開始せる後に於て対英対米戦を開始

     せざる可らざることとならば我が先制攻撃は不可能となる現在の

     彼我兵力比に於て既に然り況んや米英今後の急速戦備増強の可能

     性大なるを想わば先制攻撃の要愈緊切なり

  (ハ)馬来及比島を除外しては我強固なる戦略態勢は確立し得ず


九、戦争発起を明年三月頃とせる場合

 ⑴対外関係

  帝国の国際環境よりすれば明年三月頃とするを有利とす

   説  明

 (イ)独蘇戦の結果欧蘇軍は殲滅的打撃を蒙り今冬より明春に亘り再建に

    忙殺せらるべく従って極東蘇軍の移動も担当程度予想せられ且国内

    の動揺も益々増大すべきを以て国力は弱体化するも日米戦の場合蘇

    米の連携を容易ならしむる態勢となるべし

 (ロ)情勢の如何に依りては蘇独和平の斡旋を為す等蘇連を中心とする外

    交措置を講じ得る機会も絶無にあらざるべし

 (ハ)独軍の冬期作戦は「アフリカ」近東中亜方面を目標とするものと予

    期せらるる処英国は同方面の防戦に努めざるベからず又独軍の英本

    土上陸作戦に備うる等欧州方面益々多事となり従て東亜に於ける地

    位は自然弱められ独軍の牽制的役割は現在よりは効果的なるべし

 (ニ)米国が明年三月迄に参戦せざる場合にも参戦的態度は更に前進する

    こととなるべく従て国内的には内政上経済上の難問題輩出し他方軍

    事的にも太平洋に於ける勢力を分割せざるベからざることとなる可

    能性あり

 (ホ)明年三月迄の間に我方の経済的困難は寧ろ増大するものと認めらる

 (へ)軍事的には対手国にも準備期間を与うるの惧あり

 (ト)米英蘭支経済的政治的軍事的結合を益々強固ならしむ

 ⑵作戦上の利害

  作戦上よりすれば明年三月頃とする場合は極めて不利にして積極的作戦

  は不可能となるべし

   説  明

 1 日米軍備比は時日の経過と共に不利となる特に航空軍備の懸隔は急激

   に増大すべし

 2 時日経過せば米の比島防備及其の他の戦備は急速に進捗すべし

 3 米英蘭支の共同防備関係は更に進展し南方諸域の防備力は急速に強化

   すべし

 (イ)航空兵力

   比島、馬来、蘭印に於ける総合航空兵力は従来二ヶ月間に一割強の割

   合を以て増加しあり今後国交緊張せば増加率は益々増大すべし

   比島に於ては五ヶ所馬来に於ては六ヶ所の航空基地準備中にして本年

   末迄には略々完成すべし

 (ロ)陸軍兵力

   比島、馬来の陸軍兵力は増大しつつあり特に馬来に於ては一ヶ月四千

   名の割合にて増加せり

 4 明春以降となれば北方に於ける作戦実施容易なる季節となり南北同時

   戦となる算増大す

 (4)右を考量し開戦時機を何時に定むべきや

    右を考量し開戦時機は遅くも  となすを要す


十、⑴

  対米交渉を続行して九月六日御前会議決定の我最少限度要求を至短期間

  内に貫徹し得る見込ありや

 至短期内に我方要求を貫徹し得る見込無し

    説 明

  米国側従来各種の提言及態度に徴するに一方に於て軍備の整備完了に至

  迄は日米間に事を構うるを避くる為国交調整に名を藉りて交渉遷延策

  に出でつつありとの疑あり又他方帝国の真意、態度及其の意図する対外

  政策を果して平和的手段に依り遂行せんとするものなりや否やに付疑念

  と不安を懐き居り所謂四原則を固執する結果我方具体的提案中支那及仏

  印に於ける駐兵及撤兵問題を最も重視すると共に此等諸点に付日本側よ

  り満足すべき約諾を得る迄は交渉を成立せしむる意図なきものと認めら  

  る、依て我方案を至短期間に受諾せしむることは殆ど不可能と言うの他

  なし


十一、対米英蘭開戦は重慶側の戦意に如何なる影響を与うべきや

 1 日本の対米英蘭開戦は蒋介石をしてABCD陣の団結に依る対日長期抗戦

   の決意を益々強固ならしめ当初は志気を昂揚し米英等との提携を愈々

   鞏固にし飽迄対日戦に徹底し日支全面和平の成立は少くとも全戦局の

   終結迄延期せらるべし

 2 上海、香港等援蒋拠点の喪失、帝国の南進発展に依る緬甸「ルート」

   輸送途絶我南方作戦の成果維持に依り南洋華僑の援蒋中止等となり財

   政経済上の逼迫を促進して其の実質的抗戦力は漸滅し戦力の逓減と相

   俟って一般大衆は勿論重慶政権主流の継戦意志にも重大なる影響を及

   ぼし灰色将領中南京側に寝返るもの逐次其の数を増加し遂に重慶側統

   一戦線の分裂を来し蒋政権は愈々微弱化すべし


 十一月に入り一日(土)午前七時半より東條陸相と杉山総長は会談している。


東條 

一 本日は結論として

 第一案  戦争せず、臥薪嘗胆す

 第二案  直に開戦を決意して作戦準備をぐんぐん進め、外交を従とする

      もの

 第三案  戦争決意の下に作戦準備をするめるが外交交渉はあの最小限度

      にて之を進める

 の三案に就て研究するが総理としては第三案を採り度いと思う

二 関係各大臣と会談せしが一番問題となったのは、鉄で海相は次の如く主

  張せり

  来年度は四三〇万屯しかない、其中海軍八五、陸軍は八一、残余民需と

  予定して居りしところ海軍は十六年一三五万屯、十七年一四五、十八ー

  二〇年各々一三八万屯を要す十七年の一三五(一四五の誤りか)万屯は

  一一〇万屯迄は圧縮できるが此増加分は陸軍より出され度、尚海軍は此

  外に特殊鋼一八万屯民需により若干、陸軍より八万屯海軍に譲ることと

  し、海軍は一〇二万屯にて我慢出来ぬか研究せられ度いと述べたり

 (右の如く海軍の鉄其他に対する主張は突如最近になりて強きものあり其

  真意は奈辺にありや疑はざるを得ず

  大量の物を海軍の希望通り取得し得ずとして非戦の責を国力即政府に帰

  せしめんとするか或は陸軍が開戦を急ぐ此機会に海軍用物資鉄を奪取す

  る如く容認せしめんとするかの何れとするも海軍ありて国家あるを知ら

  ざるものと言わざるを得ず若し釈明の如く政府に海軍の必要の重大性を

  認識せしめんとするなれば大決心の直前に之を提出せるは不可なり)


 東條 各大臣の案に対する意見左の如し

    海軍、大蔵、企総、ともに第三案、外務は判然せず お上の御心を

    考えねばならぬ日露戦争よりも遥かに大なる戦争なるが故に御軫念

    のこと十分に拝察出来る

    又 お上は正々堂々やることをお好みになることも考えると、今開

    戦を決意し其後偽騙外交やることは、御聞き届けにならぬと思う然

    し此案を統帥部として成功せしめる自信あるならやられてもよろし

    い

 杉山 統帥部の考えは軍務課長より通じた通りです

 東條 右を通ず自信はありますか

 杉山 然し今日第三案で進むと言うことは九月六日の御前会議を、も一度

    繰り返すことになるにあらずや

 東條 之とは戦争準備を進めると言う点に於て差異がある

 杉山 若し外交うまくゆけば準備した兵を下げることとなるが之は困る、

    内地から二〇万支那からもやるべき作戦をやめて兵を送っておる、

    兵を南洋迄出して戦争しないで退けたら士気に関す、統帥部としては

   「㋑国交調整は断念する㋺戦争決意をする㋩戦争発起は十二月初旬と

    す㋥作戦準備をする㋭外交は戦争有利になる様に行う」を主張し度

    いと思う

 東條 統帥部の主張は止めはしないが、お上に御納得していただくのには

    容易でないと思う

 杉山 お上に御納得を願うことの困難は知って居る第三案は万已むない時

    にやるものだと考える 

 東條 お上はおききにならぬと思う

 杉山 対米交渉の時の最後要求は之以上低下することはないか

 東條 之は低下することはない軍及国民は承知しない

    尚本日は大義名分に就ても研究したい思うて居る


 この会議の様子を見ての通り、戦争をしない案も出されているが、大方は戦争準備をしながら、外交交渉をも進めていくという、戦争は避けられない方向に進んでいたことは確かである。

 この上で国策遂行が検討されたのである。

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