第14話
「おいおい、ガキ一人捕まえるってだけのはずだったが?」
報告を上げている男は、生きた心地がしなかった。
隊長の残虐性と強さを知っているからだ。
アウトローやこちらに通じている警官に向けて懸賞金を懸けた。
発見し、捕獲すればいい。
大した力もない少女一人。それだけで大金が手に入る。
こぞって、少女を探しただろう。
自分は分かり切った結果を報告するだけ。
それだけのはず、だった。
「そ、それがですね。報告によると若い東洋人の男と、アメリカ人の女の護衛がついているとの事でして……」
「……ほう?」
片眉がつり上がる。
「報告を受けた時には首都にいるとの事でした。カメラの映像から、偶然かどうかはわかりませんが、例の村の方向に向かっているとのことです。ただ、その後の足取りは不明です」
「首都の方へ逃げたのは分かる。だが、わざわざ引き返して村に戻るだと?」
怪訝そうに尋ねる。
その報告を受けた際は、同じ考えに至った。
楽観、なんてできるわけもない。
近寄らないだけの理性は普通、誰にでも備わっているはずだ。
「ちっ、何かあるなこりゃ……。またあの村に戻ったほうがいいかもしれねえな」
何もないと切り上げたのは、つい先日の事だった。
「そいつは何者だ?」
「少なくとも、村の縁者ではないようです」
「……つまり、まだ何もつかめてないと、そういうことか?」
「……はい」
ゴクリと、喉が鳴る。
「まあいい。お前が追え。それで、俺のとこまで連れてこい」
「はっ!」
「抵抗するようなら生死は問わねえ」
「分かりました!」
隙のない受け答えをしつつ、内心で安堵する。
これなら、腹いせに殺されず済みそうだ。
「ああ、待て」
足早に立ち去ろうとした時、背後から呼び止められる。
「勿論、わかってるよな?」
いつも通りの口調だ。
だけど、急激に温度が下がったような錯覚を覚えた。
「失敗はしません」
「ならいい。行け」
「はっ!」
意地でも捕まえなければいけない。
単なる脅しではないと知っている。
自分は、前例に倣うつもりなどないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます