第1話 <前半>出会ってしまったのなら。
晴れた青い空。広大な大地。そこには植物や動物の面影はなく、ただひび割れ荒廃した地面が続くだけの場所。
その中を歩く2人の面影があった。その姿は全身すっぽり白色の布服を被り顔と手以外全身肌が見えないようになっている。
「あーもう疲れたぁ。歩くのめんどくさぁい!どうにか出来ないのぉぉ」
右側を歩く少女が嘆きつつ、フードを外す。その下にはショートの赤髪にピコピコした大きなネコ耳を持っていた。クリクリした好奇心旺盛といった澄んだ青色の目も合わせると活発な少女を連想させる。
隣で歩いていた少女もフードを外しつつ、今にも足を止めそうな彼女に励ましの言葉をかける。
「出来ない。あと少しで着く。我慢」
その声は無感情で、励ましとなっているかは不明であるが。
フードをとった彼女は白色と灰色がかった髪色をしており、肩までかからない程のボブで毛先はパーマをかけたようになっている、赤髪の少女と同じ青く澄んだ目を持っていたが、対称してネコ耳はなく、活気が少し足りないような目をしていた。
「もっと感情込めてよぉ…」
赤髪の彼女、フアンは無感情な声にショックを受けるような反応を示しつつ、これが相棒、ナシュのいつも通りであることを知っていたので、別に気にすることも無い、いつもの光景であった。
だが、その光景は突如豹変する。
目の前に突然突風が吹いたと思うとそれは瞬く間に砂煙となって2人の視界を奪う。
「いったぁ!目に砂がぁ!」
フアンが目を抑えて悶絶する。
「……」
ナシュは悲鳴を上げないもののフアンと同様に視界を奪われ、手で目に砂が入らないように抑えていた。
間もなく風は収まり、2人は目を開ける。
フアンはまだ目に入った砂が取れず苦しんでいた。
「フアン、涙出して、」
「ちょっとまってぇナシュぅ!今それどころじゃ」
「涙出せば取れる。」
「あ!確かにぃ」
納得した様子でフアンは痛みを堪えながら目を開き、落ち着くために呼吸を整える。
そして今まで何度も行ってきたように意識を目に向けた。
すると、瞳の色が一瞬透明に変わり、色が澄んだ青色に戻ると同時に少量の涙が流れ、ごみは取れたようだった。
「やっぱり涙は便利だねぇ。世界に涙がなかったらどうなってなんだろぉ。」
「涙がなかったら世界は出来てない。」
「もぅナシュは固いなぁ!もしものはなしだよもしもぉ。」
いつものような会話のペースに戻る。
そうしてまたいつも通りの光景が戻ってきた。
はずだった。
「何を…言っているんだ?」
突然の声に2人は驚き反射的に後ろを振り返る。
そこには今まで、生きてきたこれまでに一度も想像も出来ないような格好の男がいた。
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