第27話 カギは土
「ちょ、ちょっと二人とも、もしかしたら土がカギかもしれないよ!」
二人の元へ戻ったすみれはやや興奮気味に叫んだ。
「土?」
二人が不思議そうに聞き返してきた。
「そうだよ、土! 学校で花壇の土を調達したというのはもしかしたら、隠し場所を掘って出た土かもしれない!」
「えっと、すみればあちゃん。それって畑の下に肥料が埋まってるってこと?」
すみれの勢いに押されて混乱した優太が聞き返してくる。
「違うよ、優太君。隠し場所を作るために穴を掘ればその分の土が出るでしょ? 今の畑や花壇の土はそれを使っているってことだよ。シャーロック・ホームズの赤毛連盟の時も読者から『掘った土はどこに?』なんて突っ込みがあったもの」
「美桜ちゃんの言う通り! だから、いつか言った穴を掘って隠した説が強いよ! さっきの話からして河田が来てから花壇が充実したというじゃないか! 推測だけど、先生だから何らかの理由で学校のセキュリティを切って、穴を仲間と掘って隠し場所を作っていたに違いない。それを適当にいろいろやって花壇や畑用の土として吉田先生に任せていた。
となると、校庭か裏庭のどこかに埋めて隠してる可能性が高い。空洞というか、周りと足音が違う場所が無いか慎重に探してごらん」
「すみれおばあちゃん、すごい。本当に安楽椅子探偵みたい」
美桜が関心する中、優太は苦々しい顔をしていた。
「じゃあ、苗や肥料をプレゼントしていた河田先生や、花壇を作っている吉田先生が反対派の連中なのか……。河田はともかく吉田先生はそんな風に見えない」
優太が落胆したように言うが、すみれは諭す。
「もしかしたら、吉田先生は知らずに河田先生に利用されているだけかもしれないよ。でも、探索するときはくれぐれも用心するのだよ」
「うん」
「ならば、私がこの町にいる間にもう一度サッカー教室を開く必要があるね。また梨理を呼ばなくちゃ」
すみれは意気揚々とプランを考え出す。
「そういえば、すみれおばあちゃんは黒崎選手とどういう関係なの?」
そう美桜から尋ねられたすみれは、一瞬驚いた顔を見せたがすぐに冷静さを取り戻して答えた。
「親友の孫なんだよ。だから私の孫のようなものさね」
「その友人ってどんな人?」
「わ、若い頃の仕事仲間さ」
「若い頃、何やってたの?」
「うーん。さて、私の話はそこまで! あとは校庭や裏庭の音がおかしい部分の探索だよ! でも、校内に河田先生を始め、容疑者がいるのは確実だろうから気をつけること!」
美桜が矢継ぎ早に質問を重ねるので、すみれは強引に打ち切った。元サッカー選手だったのは知られると面倒と思ったためだ。
「はい!」
本来の任務を思い出した二人は元気良く返事をした。
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