第三巻 第四話
第四話
この二日の練習の中で、みんなが感じたように、千守は大きな変化があった。彼は元々ポイントガードだったが、いまは相手からカットでき、まっすぐランニングシュートできて、本当に奇跡だった。まるで神様に助けられたようだ。彼の実力はスタンドにいる高年生にも注目されるようになった。今年は、学級の制限が外されたので、各学級のチャンピオンは遠山中学校の男子バスケットボールの総決勝戦のために、お互いに競いあう。この時、スタンドにいる李雲知は、千守をじっと見ており、何も言わなかった。
午後 男子バスケットボール総決勝戦 高一3組VS高三2組
蔡千守は入場し、先方のチームの中で一人見慣れた姿が目に入った。雲知のお兄ちゃん、李雲燦。李雲燦も同じようにガードのポジションにある。
高学級のチームに対抗するため、蔡千守、狄子裴と仲間たちは全力を尽くし、相手のポイントをしっかり噛みつくようにしている。点数は全体ではそんなに離れていなかった。
蔡千守は、学級チームの試合の状態を保っており、ミスをして相手の攻めを防げなかったが、カットとバックボードによるダンクでは多くのポイントを得られた。このように見ると、普通の高校生と差がない。最後の2分間では、79対81、81対84、84対86と、高一3組は相変わらず負けていた。
最後の10秒だった。ハンドリングしている狄子裴は相手に迫られて動けなかったので、やむを得ずスリーポイントシュートをしたが、残念ながらあたらなかった。千守と李雲燦は一瞬、同時に跳び上がり、バックボードを争おうとした。
李雲燦は千守より背がはるかに高く、先にボールに触れようとしたところ、千守の右手はそっと李雲燦の左手を避けて通って、彼の胸を軽く押した。
その一瞬、李雲燦はふい頭には、夢の中の画面が浮かんできた。
西漢 兵営における腕比べ
数メート離れるところに立つ穆炎は、怒なった声をあげ腕比べ台にのぼり、右手で恒裕杭の下顎にまっすぐ攻撃をかけようとした。これは、左手で先方の頭を押さえ、右手でその下顎をひねるという意図がある。ひどい場合は、首が切れるが、軽い場合は関節が外れるという致命的な技である。
しかし、恒裕杭は譲らなかった。彼は、左手をあげ、肘を曲げ胸に当て、虎口(親指と人差し指の間.人体のつぼの一つ.)を上にさせて、先方の右手を受けた。穆炎はこれを見ると、まさに思うつぼにはまると思って、右手で逆手で、恒裕杭の左手の虎口を押さえ、それを外に出した。それから、足踏みして、体を傾けて先方の後に来た。
ここまでくると、竹をわけたような勢いで、成敗は既に決まったようだ。穆炎は、すこしも躊躇わず、左手を稲妻のように先方の顔に向かって襲ってきた。恒裕杭はふんと言って右手をだした。
この時、彼の左腕はもう穆炎に胸の前にくぎ付けされているので、手の脈が痛くて、思わず体全体が穆炎について左の後側に移動してしまった。
恒裕杭は諦めず、すべての力を右手に集め、穆炎と固く対抗し、勝負をつけとうした。穆炎はにっこり笑って、左手でフェイントをかけて、体を後ろに後退させたら、恒裕杭はむだ足を踏んでしまった。恒裕杭は顔が真っ青になってふらついて、バランスを失って前に倒れた。一瞬、ガタンと言う音が聞こえ、穆炎の胸前にくぎ付けされている左腕が折れてしまった。
李雲燦:「その技は、先ほど千守の技とそっくりだ!」李雲燦は驚きながら、着地した。「ファール!」と鋭い呼び子の音が伝わってきた。蔡千守はファールと言い渡された。スタンドでは、李雲知ははっきり見た。「千守!。。。」
最終的に、高三2組が男子バスケットボールの決勝戦では優勝した。
当日午後 運動会終了後 家に戻る道にて
雲知:「千守!」
千守は振り返って見ると、真正面から歩いてきている李雲知を見た。
雲知:「今日は、本当にすばらしかった!高三との対抗だけど、全然恥ずかしくなかった。」雲知は嬉しそうに千守のそばに走ってきた。
千守:「しかし、わたしは、それがファールだと分からなかった!」千守はとても悔しかった。
雲知:「わからなかった?」
千守は驚いて、慌てて頭を振った。「いいえ違う。それは知っているけど、その時は感情を抑えられないので、なんと忘れてしまった!」
雲知:「ええ。。。可哀そうな千守。だけど、あなた今日のスコアポイントを考慮すると、最後の僅かなミスを嘲る人はいないと、わたしは保証できるのよ。」
千守:「そう願うけど。。」千守は頭を下げ、明らかにこの話題を続けて議論したくなかったようだ。
雲知:「もういい。くよくよしないでね。先日、お父さんは福建省からいい青紅を持ってきたので、今日はあなたに一本をあげる。」
千守はちょっとぼうっとしていたが、「靑紅ってなに?」と聞いた。
雲知:「忘れた?昨年あなたの誕生日の時、お父さんはご家族に送ったの。甘くて、美味しいって言われたのよ。」
千守:「ええ。。。すいません、名前を忘れただけだ。じゃ、ありがとうね。」
雲知の家の前
雲知:「ちょっと待って。いますぐ青紅を持ってくるから。」
千守:「はい。」
千守は門の前にぼうっとして待っていた。間もなく、雲知は小さな瓶を抱えて出た。
千守:「これは。。。一つの瓶を全部わたしにあげる?!」
雲知:「ええ。あなたには足りないと思うから。あなた一人で飲んでも構わない!」
千守は、「こんなにお酒に強いのか?!」と思った。瓶をもらって、千守はぶつぶつ言った。
雲知は、「この瓶だと、あなたは酔っぱらわないことはないと思う。」と心の中で思ったが、別の思惑がある。
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