第二巻 第十一話
第十一話
だらしないおじさんは厳しそうな顔をして、穆炎が話したことを深く考えていた。「だけど、あなたは狼に襲われる可能性があるものか?襲われても死ぬことはないよ。これは彼女もはっきり分かっていると思う!」
その通りだ。だらしないおじさんの言った通りだ。诺雲は、穆炎が妖怪であることを知らないが、七カ国の戦乱を経て、また二人が匈奴と付き合ってきたこの数年間の間で、穆炎の武芸を十分知っている。人であろう、動物であろう、みなすこしも穆炎に傷をつけることはできない。だから、この点においては、诺雲が知っていることはだらしないおじさんより少なくない。
穆炎:「法力を使うようお願いします!」穆炎はいらいらして地面から立ちあがった。人にお願いするようなことは、彼はどうも得意ではなさそうだ。跪いてからちょっといらいらしてきて、完全に自分が他人にお願いしている立場を忘れたようだ。
だらしないおじさん:「だけど、わたしは神様で、勝手に。。。」
穆炎が見上げた金色の瞳が一瞬、褐色に変わったのを見て、だらしないおじさんは、すぐ言い換えた。「だけど。。。。よし。」
これを聞いて、穆炎の神経はようやく弛めてきた。「この恩情をわたしは一生、忘れることはありません。今日、別れて再びお目にかかれるには、後600年間かかります。わたしはここでお別れさせていただきます。」そう言い終わると、彼は深くお辞儀をして、頭をあげると、もう涙ぼろぼろだった。
穆炎:「恒诺雲のことはよろしくお願いします。」
だらしないおじさんは、感動の気持ちが胸でいっぱいになり、何も言えずただ頷いて小さい声で「安心ください。」と言った。
穆炎は頭をさげ土を見ると、なんだか胸中に悲しみが漂っている感じがして、一滴の涙が土に落ちた。「ありがとう。」
空気が震えるにつれて、穆炎は消えた。
匈奴の域内
穹庐の中の空気が震え、穆炎は現れた。穆炎はそっとぐっすり寝ている恒诺雲を抱きあげた。恒诺雲はすやすや寝ている。穆炎は彼女の頬を撫でているうちに、いつの間にか涙は泉のように顔からぽろぽろ落ちてきた。落ち着いて離れると思ったが、それは間違っていた。この時、彼は将来、自分が後悔すると思った。
長安の牢屋
蔡允を閉じ込めた牢屋の前の空気が震え、穆炎は再び現れた。先ほどの少年はもういなかった。
穆炎:「蔡允の命を救うために、わたしは今日、元の形に戻されても構わないのです。土地様がどうかわたしに教えてください。わたしは世世代代、ご恩情を忘れることはありません。」
穆炎は両膝が地面に跪いて、四つの方向に向かって叩頭した。
少年の声:「牢屋の結界は外からの進入を阻止するよう、四つの金剛によって守られている。ただし、中から、外に行く時は、障壁はない。 人が触るとすぐ死ぬが、妖怪仙人は触ると、法力があっという間に消える。妖怪仙人にとっては、法力が消え、元の形に戻される時は、楽に中に入れるチャンスだ。だけど、結界に触れる時の痛みは、まるで魚の鱗が落とされるようで、たまらないほどだ。せっかく小さな蛇が恩返しする心を持っているのだから、いい運を祈る。」その少年の声が牢屋中に響き渡っていた。
穆炎:「土地様、ありがとうございました!」穆炎は叩頭し、長く立ちあがらなかった。
翌日の朝、李雲知の家の下
雲知:「あら穆炎!こんなに早いのに、なぜここにいる!?ここでわたしを待っているのか?」
下に下りると、李雲知は、穆炎がビルの前に自分を眺めているのに気付いた。
穆炎:「ええ、わたしは、昨日あなたの家のベランダに面しているあの家に引っ越した。」穆炎は答えた。
雲知:「あら、そうか。。。」李雲知は頭をあげ、あの部屋のベランダを眺めた。
雲知は、「なるほど、彼はあそこに引っ越したか。そこから自分が見えるのか?彼は法力を使って、あそこを借りたのか?」雲知はぼうっとして.妄想をたくましくするようになった。
穆炎:「だけど、確かにあなたを待っている。」穆炎は事実通り答えた。
読心術を使う暇がなく、穆炎は、気まずいから、雲知が沈黙したと思った。もし彼はいま、雲知の考えを読み取れるのだったら、どう答えればよいか更にわからなくなるかもしれない。
千守:「お母さん、わたしは食べませんから、いってきます!」二人の耳から、ふい蔡千守のあたふと家を出た声が伝わってきた。
お母さん:「これは卵もちだよ、持って行きなさいよ。。。」お母さんはついて家を出た。
穆炎は、「あら。。。忘れた。千守は彼女の家の下に住んでいる。」穆炎はすぐ口元をあげ、微かに瞬きをした。
急に、お母さんから、「あら!」という声が聞こえた。
千守:「お母さん!」
お母さんと千守は二人とも驚きの声をあげた。その卵もちがなんと妙な路線で、お母さんの手から脱出し、千守の体に跳びついてきた。醤油が体についてしまった。だから、蔡千守はやむを得ず部屋にもどって着替えなければならなかった。
雲知:「え。。。行きましょうか。」雲知は、気がついて、穆炎を眺めた。
雲知は、「可哀そうな千守!これは穆炎がやったこと!?まさか、彼は千守を嫌がるのか?」
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