第十三話 転落
第十三話
この時、燃えるような霞が空の果てまで延々と広がっていた。
千守:「穆炎、わたしは戻りたくない。」
穆炎:「なぜ?」
千守:「戻るのが怖いから。。。」千守は苦しい顔をして、「穆炎、なぜ三生石の上には、李雲知の名前が刻まれているか?」と聞いた。
穆炎は振り返って空の果てに広がった霞を見て、相変わらず黙った。
「そうだねえ。。。なぜか?」
穆炎:「あなたは彼を愛しているか?」穆炎は表情を顔に出さず、突然聞いた。
千守:「愛しているか?。。。」千守はぼんやりとした顔をして答えを考えだそうとした。
穆炎:「そうだね、あなたは彼女が好きか?」穆炎は我慢強く問い詰めた。
千守の頭には、小さい時から雲知と付き合ってきた日々が浮かんできた。小さい時は、千守は殆ど雲知を苛めてばかりだったが、今は喧嘩しあうことまでになった。雲知が見かけ上、口数が少なく優しそうに見えるが、実際は自分には全然優しくないなあ。だから、正直に言うと、自分もとても腹が立っている。
「ええ。わたしはただふざけるだけだけど、本気に彼女が嫌い或いは好きではないということでもない。」
穆炎はため息をついた。「嫌いではない。好きではないじゃない。。。」
千守:「但し、わたしは、彼女が病院の廊下でお母さんに話したことには、驚いた。
わたしはよくウサギ、アヒル、亀を飼ったことや、野良猫を助けたことなど、彼女は全部覚えている。また、善い行いすれば、自分に返ってくると誉めてくれた。」
千守は当日、病院での画面を思い出した。
穆炎は額に手を当てた。二人がけんかして初めて生まれた感情か?
千守:「だけど、なぜ三生石にはあいにく彼女の名前が刻まれているか?前世の夢からみると、我々の間には仇があったはずだねえ!」千守はこれを思いつくと、思わず益々悲しくなった。
穆炎は眉をしっかりしかめた。「はい。不倶戴天の仇。」
遠山中学
放課後、雲知は黙ってかばんを背負って教室を出て、抜け殻のようにゆっくりと廊下を通した。
雲燦は後ろについて、「雲知!雲知!李雲知!」と叫んでばかり。
李雲知は反応せず、ひたすら前へ歩くばかりだった。
雲燦はやむを得ず、すたすた前に歩き、雲知のゆく道を遮った。
雲知はやっとお兄ちゃんが校内に目の前に話しかけていたことに気付いた。
雲知:「お兄ちゃん!?」
雲燦:「ここ数日間、あなたはおかしい!何かあったの?黙らず、わたしに言いなさい。」
李雲燦は真面目そうな顔をしていた。
雲知:「あ。何もないよ。いいのよ。」雲知は思えば笑いたくなった。「お兄ちゃん、なぜ、急にわたしのことに関心を持ってくれたのか?」
雲燦:「それじゃ、今朝はどういうことか?水切りはうまくできたねえ。どの男が教えた??」
雲知:「だれも教えていない!男なんかもいない!ところで、お兄ちゃん、今朝、わたしの後にずっとついてきた?」
李雲燦は答えず、ただ問い詰めるばかりだった。「では、なぜ河の岸辺で30分ほどぼうっとしていたの?まさか、恋に落ちたか?失恋か?」
雲知:「お兄ちゃん!違うのよ。だれがわたしのことが好きか?千守がいつもわたしを怒らせるほか、男の子の姿なんかは全然見えないじゃ?そうでしょう?」
雲燦:「これは。。。そうだが。。だから、もっとまずいじゃ!まさか、片思いか??」
雲知:「あら、NO!。。。。。。」雲知は白目をむいて、もうこれ以上何も言わず、身を向け離れようとした。
雲燦はこのまま諦めようとせず、雲知の手を引いて、「もし気分が悪かったら、絶対くよくよ考えないでね。実は、片思いってたいしたことじゃないから。」
雲知は雲燦が言い終わるのを待たず、引かれている手を懸命に振って、そして階段から下りようとした。
しかし、雲知はその手から抜け出せなかった。雲燦は言い続けた。「ねえ。水切りはよくできたよね!次回、わたしに教えてね!」
雲燦にこう言われると、元々ごちゃごちゃになった雲知は、目の前に夢の中で穆隊長が自分に御礼をしていた様子が浮かんできて、思わずふらついて、後ろの穆炎と一緒に、階段から転んでしまった。
雲知:「あら!。。。。」
蓬莱公園 木の幹
首を垂らし眉をしかめている穆炎は、なにかを感じたらしい。彼は急に頭をあげ、まわりの空気が猛烈に震えた。穆炎は一瞬、消えてしまった。そばにいる千守は穆炎の変な様子に気づいてはいるが、何か言う前に、穆炎は既に目の前に消えてしまった。
「穆炎!!」千守は空気に向かって叫んだ。
遠山中学 階段
「あら!。。。。」
足元から鳥が立つよう、雲燦も一緒連れられて転んできた。
危機一髪という時、時空が一瞬、凝固してしまった。雲知と雲燦の間の空気が微かに震え、穆炎は実際の肉体をもって現れた。彼は、低い声で呪文を唱え、後ろにいる雲燦に指差したら、雲燦はばあんと数メートル高く弾かれ、階段の上方の平地に戻った。
雲燦は穆炎が現れた一瞬、今朝湖の岸辺で頭の中に現れた幻影、つまり穆炎の横顔を信じられないほどはっきり見た。
ばあんと階段の上方に戻った後、雲燦は意識を失って、地上に倒れた。
この時、階段から十メートル離れている上空には、空気が震え、千守は身を隠し現れた。
雲知:「穆!。。。。。」雲知はいきいきした穆炎が目の前に現れたのを見て、何と呼べばよいかわからなくなった。雲知は彼が目の前から消えていくのを恐れるよう、穆炎をじっと見つめていた。
これ以上言葉はなかった。
空にいる千守は、雲知が穆炎を見る目つきを見ると、思わず驚いた。「まさか雲知は穆炎を知っているか??まさか!!?」
穆炎の呪文が、時空の進行を緩めた。漢の時代知って以来、穆炎は今回初めて雲知とこんなに近づいていた。彼は何もかも忘れて、雲知を見惚れてしまった。二人はふわふわ空を三回旋回して、そっと地面に落ちてきた。
雲知:「あなた、だれ?」雲知は目を丸くした。
穆炎はためらって、ちょっと眉をしかめた。瞳が褐色から黒に変わった瞬間、雲知はすぐめまいがして、目を閉じ寝てしまった。
雲知を下ろして、穆炎は空にいる千守を見上げた。彼は口を閉め何も言わなかった。千守はもじもじせず、自ら穆炎のところへ漂ってきて、先に口を切った。
千守:「ほら!さきほど、すべての思いを集中してあなたの名前を思うと、本当にあなたについてこちらに来られた!!!ハハ。。。すごいだろう!」
穆炎は賛同の表情を見せ、軽く頷いた。
穆炎:「この後はよろしくね。彼達を家まで送るようにお願いします。」
千守:「なに?わたし??。。。どうやって送る??」千守は目を丸くした。
穆炎は何も言わず、まわりの空気が震え、彼は再び消えてしまった。
千守:「なに!!!。。。。また行っちゃった?!家族を守る神様なんかじゃない!!?」
千守は空に向けて怒るように大きな声で叫んだ。
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