第十二話  再会

第十二話


穆炎は思わずにっこり笑って、瞬きをした。「先ほど、お嬢様を投げ倒し、痛めたその技だよ。。。。今日は。。。。習いないのか?」


诺雲:「習いたい!」诺雲はすぐ元気が出てきて、目が輝いていた。


穆炎は手を伸ばして、诺雲の顔にかかってある涙を拭き取り、「じゃ、やろうか。」と言った。

诺雲はふとこの振る舞いには驚いた。幸いなことに、诺雲は小さい頃、兵営と将軍の宅の外の山野で育てられたから、礼儀を沢山知っているわけではない。彼女は心に温かい感じがして、思わず穆炎をちらちら見ずにはいられなかった。


その穆炎もどんぐりの背比べだ。彼は男女の違いを知っているにもかかわらず、非人類の存在としては、始終、タブーなんかを重視したことはない。だから、女の子の涙を拭き取ることなんかは、彼にとって、極当たり前のことだ。


いま、穆炎はもじもじしなかった。诺雲も立ちあがり庭の中に向けてすたすたと歩いて行った。

この様子をみると、穆炎は「そうか、先ほどわたしを騙したのだ。」と思った。それから、立ちあがって、明かりのある所まで诺雲を案内して、立ち止った。


穆炎:「先ほどあなたを投げ倒した技は、匈奴人が最も得意な相撲だ。彼たちは三歳ごろから、毎日遊んでいたから、我々中原の人よりはるかにすごいのよ。ほら、このように。」こう言いながら、彼は诺雲を自分の身の近くまで引っ張ってきて、足を伸ばして、诺雲の両足とクロスさせた。


诺雲は驚いて、慌てて頭をさげ穆炎の歩調を見るばかりで、ばたばたと避けようとした。しかし、腕が穆炎にしっかりと押さえられので、すぐバランスを失ってふらついた。

穆炎はにやにや笑って、ついでに腰の側面で诺雲を持ち上げて、空高く回転させた。


诺雲:「あら!あらあらあら。。。!」诺雲は生まれてから、このような扱いされたことはないが、この時、穆炎にしっかり押さえられ、空高く回転された。。。彼女は「わあわあわあ」と子供のように叫びだした。


しかし、穆炎はどういう「人物」か。彼は女の子をあわれみいつくしむことを知らず、投げだそうとしたところ、诺雲のわあわあという叫び声を聞いたとたん、一時うろたえてしまった。彼は目を細めて、诺雲を持ち上げてまた一回旋回させた。


诺雲:「あら。。。。わあハハハハ。」二回目旋回された時、诺雲は、穆炎がただ力を使って自分を飛ばしただけで、自分を投げ倒し、傷をつけるつもりはない、ということがふと分かった。

彼女はほっとした。いっそのこと、悠々と空を見上げることにした。星空の下、月の明かりが照らし、微風が吹いて、二人の髪を乱した。目が回って面白いねえと思って、かえってけらけらと笑いだした。


穆炎はこの時も言葉で言えないほど嬉しかった。「あれ?なんて急に旋回させたねえ?。。傷をつけたら、まずいので、次回教えようか。ハハハハハ。。」と思った。

そうすると、庭中の花、草は、穆炎が诺雲を持ち上げて、飛ばしているのを見守った。一回、二回、三回。。。



蓬莱公園


穆炎は、ぼんやりと笑いながら、木の枝に座って遠方を眺めていた。彼はひとりごとを言った。

「ハハ、ばか!」


この時 摩靳


趙永安:「この呪文は。。。本来、神様しか使えないのだが、あなたの事情は特別だから、仏様も許してくれると思う。こっちに来て、千守、教えるから。」趙永安は千守が近づくようと指示した。

千守が近づくと、趙永安はすぐ手まねをし、頭をさげ呪文を唱えた。

あっという間に、文字の列が相次ぎ、千守の耳の中に送り込まれた。


入力が終わると、趙永安は髭を撫でながらゆっくり言った。「あなたは人間の夢に入りたい時、この呪文を唱えればよい。穆炎がいない時だけ使える。約束を守れるか?」


千守:「だけど。。。」千守は難色を示した。「穆炎はずっとそばにいるからねえ。いない時はないじゃないか。」


趙永安:「これは、わたしと関係ない。とにかく、あなたは、必ず穆炎が知らない時だけ、この呪文を使えること。」


千守:「よしよし。わたしは何とかするから。」千守はとりあえず承知した。しかし、彼女はちょっと考えてから、またこう言った。「でも、穆炎は人間の夢に入れるからよ。彼はわたしを連れて入ったことがある。。。雲知の夢って、彼がわたしを連れた時に、見たのだから!」


趙永安:「え?」趙永安は眉をつりあげた。


千守:「但し、その時、元々穆炎が自分で作った夢の中で、雲知と対話するつもりだったが、結局、雲知が風邪薬を飲んで効いているから、ぐっすり寝てしまったとは!。。。それで、我々は彼女の夢にずかずか入ったわけだ。」


趙永安:「あなたたちは雲知の自分の夢の中に入った?!じゃその後は??」趙永安は若干驚いたが、淡々としゃべっているふりをした。


千守:「その後。。。。。とにかく、その時は混乱状態にあった。わたしと同じような古代の服装を着ている人が現れた。穆炎はこれが雲知を混乱させるって言ったから。。。」


趙永安:「穆炎はこのようにあなたに言った?」趙永安は口を挟んだ。


千守は頷いた。


趙永安:「だから、あなたたちは雲知と話せなかった?」


千守:「はい」


趙永安:「ほほほほ。。。。ばかな子。あなたは、穆炎はあなたたちが先方と話せる能力を持っていると思っているか?」


千守:「違うのか?!だけど、当時雲知の夢は古代の夢だし、わたしは現代の姿で現れたから、確かに雲知を混乱させる。だから、彼女を邪魔しなかったの。」


趙永安はしばらく考えてから、「穆炎は自分が作り出した夢の中でのみ、人間と話せる能力を持っているが、人間の自分の夢の中で、先方と話せない、ということは、ひょっとすると穆炎自分も知らないかもしれない。」と言った。


千守:「どうして!!?」


趙永安:「それは。。。」趙永安はにっこり笑った、「人間自分の夢の中にいる時、人間はあなたたちが見えない。あなたたちが彼らの夢の中にいる時、。。。」趙永安はちょっと間をおいて、千守を見ながら悠々と言い続けた。「ただ空気なのだ。透明なもの。」


千守:「なに!!?」千守は目を大きくした。


趙永安:「ほほ。」趙永安は頷いた。「だから、穆炎のやり方だと、自分が作った夢の中でしか先方と話せない。或いは。。。先方の夢の中で、当時の夢を確認する。」


千守:「つまり、雲知の夢の中で、当時、彼女はわたしたちが全然見えないということ!!?」千守は驚きながら、ぼんやりとした顔をしていた。


趙永安:「はい。」趙永安は頷いた。



蓬莱公園 午後


穆炎は相変わらず羊の皮を抱えながらぼんやりと微笑みを浮かべていた。空気が急に震え始め、そばに千守が現れた。穆炎は頭を向けず、眉をつり上げるだけだった。「そのおやじは、わたしがここにいることを教えた?」


千守:「はい。」


穆炎はにっこり笑った。「タイムスリップもよくできたねえ。よくそこから、ここまで来られた。。。」


千守:「忘れた?」千守は目の前にある周りの土地を勝手に指差した。「ここはわたしの地盤だよ。あなたがいま、座っているこの木の位置を、夢の中でも容易く見つけられるからさ。」


穆炎は黙って頷いた。しかし、実際は、千守の到来によって、穆炎はもう落ち着くことができなくなった。千守が生まれたばかりの頃、穆炎が自ら三生石の前に行って見た言葉は頭の中に浮かんできた。この目で見たその言葉は四つ文字だった。「妻、李雲知。」


穆炎は黙った。


そばにいる千守も、同じように痛ましい思いをした。先ほど、趙永安と自分の会話を思い出した。

千守:「雲知と彼女のお兄ちゃん雲燦には、わたしはもう会わせる顔はない。これから、どうしよう。。。」

千守はため息をついた。


千守はふと何かを思い出したように、胸に期待を膨らませて趙永安を眺めていた。「彼達に前世のことを思い出させないために、何か方法はないか?わたしが人間の世界に戻るまで、これら前世の記憶をすべてストップさせる方法はないか?」


趙永安は頭を振った。「これは時空の割れだから、もう直せない。あなたと関係するすべての人は、近い将来、少しずつ、あなたと関係する前世のすべてのことを思い出す。実際は、李雲燦と雲知があなたとの間、あるべき恩と仇は、時空の割れがなくても、この一生のうち決着をつける。ただそのやり方は、今から見ると、予想外のことだ。あなたはちゃんと準備しておかなければならない。

しかし、すべて悪いことばかりではないのだ。一つよい情報がある。それは、前世の破片を掌握することは、あなたが1/3の魂に戻り、人間の世界に戻る鍵であること。だから、千守、勇気を出して恩と仇を解け、あなたの人生を遂げよう。」


この時、燃えるような霞が空の果てまで延々と広がっていた。


千守:「穆炎、わたしは戻りたくない。」


穆炎:「なぜ?」


千守:「戻るのが怖いから。。。」千守は苦しい顔をして、「穆炎、なぜ三生石の上には、李雲知の名前が刻まれているか?」と聞いた。


穆炎は振り返って空の果てに広がった霞を見て、相変わらず黙った。

「そうだねえ。。。なぜか?」


穆炎:「あなたは彼女を愛しているか?」穆炎は表情を顔に出さず、突然聞いた。


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