幸せのビッグバンーM夫くん、奇跡を起こすー
M夫くんは、ここだけの話、私と出会う前は1.5人の女性と申し訳程度にしかつき合ったことがない(小数点がついてるのは、私の判断)。
奥手だし、誰かに恋い焦がれるみたいな感情を一度も持ったことがないし、結婚もできると思ってなかったし、というのが本人談だ。
こんなこと言われたら、敬遠したくなる女性も多いと思う。たぶん、今も若いがもっと若かったころの私も、M夫くんを恋愛や結婚の対象にしなかっただろう。
昔は本当に男を見る目がなかった。いつもならここで、得意のタイムスリップで昔の自分に男を見る目というものを説きに行くところだが、しかしこの件に関してだけは見る目がなくてよかったのだ。じゃないと、最後の最後にM夫くんと出会えなかったと思うので。
いや、本当に運命なら、もっと前の段階でM夫くんに出会ってるかもしれないじゃん、という人もいるだろう。
けど、ダメだ。M夫くんは「自分が結婚するなんて最近までは想像もできなかった」と言ってるので、もっと前の時期に私が見た目で彼を気に入ったとしても、受け入れてもらえなかったということだ。万事、「機」というものがある。
また前置きが長くなった。
そんなM夫くんなので、「女性とはどういうものか」がまったくわかっていなかったようで、免疫も皆無、純粋無菌培養の理系クンだった。
そんな話をしていたら、うちの妹がのたもうた。
「てことは、お義兄さんは、○○(←私のこと)を見て女性を学んでいくってこと?」「それだと、○○=『いわゆる女性というもの』って刷り込まれちゃうよね」「かわいそう」
「かわいそう」ってナニよ。
私は怒ったが、断じてかわいそうではないにしても、一理ある。というか、慎重にやらないと、M夫くんが認識の偏った人になってしまう。責任重大だ。
以来、私はわが身をもって、女性とはどういうものかを示して来た。否、もう「(親密な)人付き合い」とはどういうものか。そこからだった。
具体的な話は追々書くこともあると思うので、ここでは省く。
今日書きたいのは、でもだからこそそれゆえに、M夫くんから私は思いがけないトキメキをたくさんもらったということだ。
私たちは、結婚を決めてから本格的につき合い始めたみたいなもんだったけど、それから同居するまでの間、とっくにトウが立っていたと言っても過言ではなかった私が、まるで中学生の少女に戻ったかのように純粋にドキドキさせられ、幸せのビッグバンを何度も起こすことになった。
その筋の手練れではない人、いや、おつきあいというものを主体的にしたことがない人が、こうしてみようとか一生懸命考えてくれて、勇気を出して、何かをしてくれること、その様。
M夫くんの、思い切って何かしてくれる時のちょっときごちない感じやドキドキ感に、こっちも引き込まれてしまうのだ。
初めて手を握ってくれた時は、私は大気圏を突き抜けて1週間くらい地上に戻って来られなかった。
初めてハグして軽くチュウしてくれた時は、銀河系を突き抜けたので、数週間は戻って来られなかった。
いいトシをした、その分それなりに酸いも甘いも経験して来た、このわたくしが、だ。
ある日、友だちに言ったもんだ。
「私、精神科に行こうと思ってるの」と。
つまり、幸せ過ぎて、毎日まったく眠れなくて真剣に困っていたのだ、私は。
友だちは大爆笑して、確かにそういうのもストレッサーになり得るかもね〜などと、大して真剣に取り合ってくれなかったけど、本当に困っていた。驚きだった。
そのころの気持ちを、次回もう少し書いておこうと思う。
M夫くんメモ:
初心者を侮ってはいけない。何も知らない分、とんでもないことをしでかしてくれる場合もある(ビギナーズラックとはまた違う意味で)。そして、本人は自分の起こす奇跡にほとんど無自覚なようだ。
こちらは、初心者を全否定しないように注意しながら、想定外のことへも備えを怠らず、受けて立つべきところは受けて立つべし。
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