第13話 ああいうのが人気?
俺は集団の中から外で待つ三人のもとへと戻った。
ちょっと予想外の状況だったので、この僅かな時間でも俺の心労は貯まりつつある。
「どうでした? 中の様子は」
「あ~……うん。あの中にいる一人の男が注目を集めているみたいだよ。モンスターから住人を助けた~すげ~みたいな感じで。後、最強なんだってさ」
「なんだそいつは」
「周りにいる人たち曰く勇気があってなんか頼りになるらしいよ」
「……なんだそいつは」
「俺もわからん」
どうやらその彼はもう行くようで、まるで人気芸能人のように住人たちに手を振られながら集団を後にしようとしている。
扱いは既に突如現れたスーパーヒーローだ。どうやらモンスターを倒したというのは本当のようで、先ほど俺が集団の中に行った時には渡が倒した時と同じように泡のようなものが消滅していくのが見えた。
彼の後を追う女性が一人、木の影で身を隠しながら彼の歩く姿を見つめている。時折、キャーなんて声もあげてしまっていたり。
「ああいうのが人気なのかな?」
「さあ? 私は望一筋ですのでわかりません」
蘭に聞いたのが間違いだった。真顔で自分を持ち上げられてしまったので反応に困ってしまう。
聞くならばレイナにしておくべきだったと後悔し、ならばと思いレイナにも同じ質問を投げてみることにした。
「はは、レイナはどうなんだ? ああいうヒーローっぽい存在って」
「えっ!? 私ですか? う~ん……ちょっとその場に遭遇してもいないし、お顔などもしっかり拝見したわけではないのでなんとも……。……どうでした?」
「あ、別にイケメンというわけでもなかったよ。……うん、渡のがいい顔していると思う」
「気持ち悪い。やめろ」
「そうですか……じゃあいいです」
「私は望の方が」
二人の反応は置いておいて、やはり第一印象となる顔というのは案外重要らしい。レイナの興味なさげな表情から判断するにそんな感じだった。
しかし、あの彼に黄色い声を上げている女性がいることも確かなので、こういうのは一概には言えないらしい。
「でも、おかしいですね。このエリアでこんなに頻繁にモンスターが姿を現すなんて」
「そういうものなのか?」
「はい、モンスターは人間に擬態しているとは言いましたけど、こんなに一日に何回も現れるなんてなかったかと思います。このエリアは比較的治安が良くて、そういう事件が起きることも少ないから、住人達がああいう反応をしてしまうのはちょっと納得かもしれません。現に私も先ほど皆さんに助けられた時もそんな感じでしたし」
「モンスターが姿を現す頻度が増えている……ということか?」
「ええ、今日だけ見るのなら間違いないですね。普段なら多くて二、三ヶ月に一回ほどなのですが……」
俺、渡、蘭の三人は互いに目を見合わせた。
これは恐らくあのケープの男が仕組んでいるに違いない。俺たちはアイコンタクトでその確認を取る。
モンスターの出現を活性化させ、ゲーム参加者である俺たちの動きを止めないようにゲーム自体を動かしているはず。三人の意見は完全に一致した。
「多分、これからもモンスターが出てくる頻度は増え続けるかもね」
「え!? 本当ですか……?」
「おそらくだけど。俺たちがあるゲームに参加させられているって言っただろ? 多分、それを仕組んだ人間がこの世界自体を動かしているのだと思う」
「そんな……」
モンスターにやられ命を落としてもそれは同じ敗北である。
ケープの男は参加者同士の争いだけでなく、モンスターとの戦闘も活発化させて常に死と隣り合わせの状況を作り出そうとしているに違いない。
ゲームマスターである彼は、この世界の住人をも巻き込んで血みどろの戦場を生み出そうというのだ。
つくづく、そこまでしてゲームを展開させたい意図がわからない。
「キャーーーーーーーーーーッ!!」
遠くで女性の叫び声が響き渡った。
声がした方向はまさしくあの彼が歩いていった方向である。既に彼を追っていた女性の姿はなく、もしかすると悲鳴の主は彼女たちかもしれない。
「行くぞ」
「ああ、さっきあいつが行った方向だ」
おそらくまたモンスターの出現だ。
俺たちはすぐに目を見合わせ、悲鳴が聞こえた方へと走った。
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