第20話 聖女の存在意義
「リリア! キュイール!」
「よそ見してる暇はありませんよ」
ダークスキル・
フレイムスキル【火炎障壁】
バレフォールの突きが雨のように襲いかかる。火炎障壁が
「くそ……こりゃヤバイな」
「お見事、やりますね。闇属性のスキルは闇魔法と違って毒のように作用する特性があります。一太刀でも受けたら命取りですよ、充分お気を付けて下さい」
「そいつはどうも」
フレイムスキル・炎斬撃【
剣を横に振ると、炎の刃が扇状に広がる。バレフォールは剣で炎を切り裂き、炎を無効化する。
俺は間髪入れずバレフォールに斬りかかった。
闇魔法【
俺の動きを読んだバレフォールは、カウンターで黒い弾丸を浴びせて来た。
バレフォールの魔法を加護で無効化出来ず、黒い弾丸は俺の脇腹をかすめ血が噴き出し手で押さえる。
「くそぉ……痛えな」
こいつ、剣技も戦闘経験も俺より遥かに上だ……やっぱり龍神の加護を使うしかないのかよ。でも、この後の事も考えるとあまり気が進まない。
「お仲間の事が心配ですか? 焦りで攻撃が直線的で動きが読みやすいです。あなたは能力に頼り過ぎてるんですよ。大きな力の差がないと加護のみで無効化は出来ませんよ?」
「ペラペラよく喋る野郎だな……てめーは俺の先生かなんかなのかよ!」
俺は逆上してバレフォールに何度も斬りかかる。しかしバレフォールは、難なく俺の撃ち込みを受け流した。
「太刀筋が雑になってますよ。精神面をもっと鍛えないといけませんね、ほら行きますよ!」
ダークスキル・闇斬撃【
バレフォールの剣が、禍々しい黒いオーラのようなものに覆われる。黒い蛇が巻き付くようにウネウネと動き、うめき声のような不気味な声が聞こえてくる。そして
このままやり合ってても勝てる気がしなかった、こんなとこで終わる訳にいかない。
「出し惜しみしてる場合じゃねぇな」
龍神の加護発動【身体能力上昇】【自然治癒力上昇】【俊敏上昇】【属性解放】【オートプロテクトフィールド展開】
身体を半回転させて剣を受け流し、バレフォールの喉に向けて剣を突く。
バレフォールは身体を後ろに反らし回転して華麗に回避した。
「
「てめー何でそこでベルゼの名前が出てくんだよ?」
「ククク、おっと失礼。失言でしたね」
ドレイクスキル・龍神斬撃【
白い炎をまとった剣でバレフォールを斬りつける。
ダークスキル【
瞬時に作り出された黒い盾で俺の斬撃は弾き、バレフォールは剣を鞘に収めた。
「ふむ、やっぱり勝負は一旦預ける事にしましょう。ローセル様に勝てるといいですね、それでは失礼」
「待てこの野郎!」
バレフォールは宙に飛んでから姿を消した。
「どういう事だ。でも助かった、このままやり合ってたらヤバかったかも知れねぇ。それよりリリア達を助けに行かねぇと!」
そう思った時、やはり全身に痛みが走る。しかしあのドラゴンをやった時程じゃない。龍神の加護の発動時間が短かったからか?
念のため神炎の加護に切り替えて、自然治癒力を高め、脇腹の傷を回復させながらリリア達の元に向かって走り出した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
リリア達は風の刃で斬りつけられ、吹き飛ばされる。リリアは勇気の加護を発動させ、何とかそれをしのぐ。
キュイールは全身を鎧で守らせていたので、何とか致命傷は避けられた。
「ひゃははは!! ゆっくり殺してあげるよぉ。楽しみたいからさぁ!!」
ハルファは背中の翼を振り回した。ナイフのように研ぎ澄まされた硬い羽が、無数に飛んでくる。
ブレイブスキル【
リリアはキュイールの前に立ち、ハルファの羽を聖障壁で全て弾く。ユウシはいない、キュイールは戦闘が得意じゃない、それなら私がやるしかないと覚悟を決める。それに聖女ともあろう者が、ユウシに頼ってばかりじゃ笑われてしまう。
リリアはハルファに斬りかかる。しかし悪魔の形をした石像が動き出し、リリアの剣撃を受け止めた。
「ちっ、ガーゴイルか!」
「ひゃははは! 残念賞だな。ところで、そんな
振り向くとキュイールがもう一体のガーゴイルに襲われている。確かにキュイールを守りながら戦うのは、なかなか厳しいものがある。
ブレイブスキル・聖斬撃【
キュイールを襲っているガーゴイル目がけて、光の刃が飛んで行く。ガーゴイルは真っ二つに割れて崩れ落ちる。
「やるじゃんかぁ? ナメてたよ、リリア・メイデクス!」
風魔法【
巨大な真空の刃がリリアに迫る。同時にガーゴイルが鋭い爪でリリアを引き裂く。剣で爪を受け止め、聖障壁でハルファの魔法をガードした。
しかし聖障壁は破られ、リリアの腕に深く刃が食い込み血が溢れ出す。
ブレイブスキル・聖斬撃【
リリアは歯を食いしばり、ガーゴイルに無数の斬撃を食らわしガーゴイルを粉砕した。
「あらら、二体ともやられちゃったかぁ。でもその傷でまだ戦えるのぉ?」
リリアの腕から大量の血が流れ、血溜まりが出来る。
「くっ……これくらいで、退く訳にいかないのよ!」
「ひゃははは! いいねぇ、そういう一生懸命な人間を殺すのが楽しいん――」
ハルファは両手の鋭い爪を伸ばし、リリアに襲いかかる。
「――だよねぇ!!」
リリアはハルファの攻撃を受け止めきれず吹き飛ばされた。ハルファは、リリアにトドメを刺そうと近づいて行く。
「やめろ! リリア様に近づくな!」
傷だらけのキュイールが、リリアを庇うように立ちはだかり、ハルファを睨みつける。
「に……げて、キュイール!」
「聖女様……リリア様はこの世界の『未来』だ! 絶対に死なせる訳にいかない……わ、私が死んでも守るんだ! リリア様さえ生きていれば、それだけで人は希望を持てる!」
キュイールは死を覚悟していた、それはこの旅を始めた時からだ。今じゃない。でも、彼は怖かった、本当の意味で覚悟をしてたんじゃないのに気が付いた。聖女の為ではなく、リリアの為なら! と彼女の前に立ったのだ。
ハルファはキュイールを見て、身体を震わせて
「ひゃははは! 震えてるよ? いいね、最高だよお前! そういうの最高。そんなヤツが絶望に支配されながら死んでいくのが気持ちいいんだよなぁ!」
ハルファがキュイールを爪で切り裂こうと、手を振り上げる。
「じゃあ死んじゃおうか」
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