第19話 古城強行突破
「私は本当に反対なんですからね!」
キュイールが顔を上げて気難しい表情で言い放つ、このセリフももう三回目だ。いい加減しつこいし、めんどくさい。
「おいキュイール、それより何で爆弾なんか作れんだよ?」
キュイールは白い息を吐いて人差し指を立てた。
「従者の心得、一つ『従者たる者あらゆる状況にも備えておくべし』です」
キュイールはそう言って得意げな顔をする。まんざらでもなさそうだった。
「私は
「はいはい」
調子に乗りかけたキュイールにイラついた俺は適当に返事をした。
リリアは目を細めてキュイールの顔を見る、何か言いたげな表情だ。
ローセルの古城に着いた俺達は、まずどう侵入するか考えた。城の周辺に侵入出来そうな場所はなく、結局城門を爆弾で吹き飛ばし強行突破する事になったのだ。
爆弾を作る作業をしている間に、気まずい雰囲気もかなりやわらいだ。俺もいつまでも険悪なムードってのはウンザリする、だから積極的に話をする事で何とか空気を変えた。まぁ俺の責任だし仕方ない。
「ねぇ、ユウシ。やっぱりもう少し別の方法も考えてみない?」
リリアは珍しく弱腰だった。比較的にいつもは勝気な彼女にしては、どうも様子がおかしい。
「他にどんな方法があんだよ? それにこっそり忍び込んで
口を尖らせて不満丸出しのリリアは、下を向いてブツブツ文句を言っている。
「仁義だの流儀だの……全く呆れて何も言えないわ」
この作戦にリリアはキュイールより強く反対した、何か心配事があるようだ。
逆に口では反対だと言うキュイールは、妙に張り切っている。
「やっぱり危険だと思うんだけど……ほら古いお城だし、もしお城自体が崩れ落ちたらシーブルが心配だし」
「さっき調べたけど侵入出来そうな場所はなかっただろ? これ以外どうすんだよ。それに城門を破壊するだけなら
それでもリリアは納得いかない様子で頬を膨らます。
「なぁキュイール、リリアは何であんなに反対してんだ?」
キュイールは苦笑いをして小声で答える。
「子供の頃、リリア様のお誕生日にリリア様のお父上が花火を用意したんですが、その花火が爆発しまして……ケーキやプレゼントが全て燃えてしまったんです」
「ああ……何だ、トラウマってヤツね、爆発が怖いのか」
やっとリリアが爆弾に反対している理由に納得はいったが、この作戦は変更しなくても大丈夫そうだ。
大量の爆弾を城門に仕掛け、キュイールは
「耳を塞いで下さい!」
キュイールの掛け声で俺達は耳を塞ぎ、リリアは何故か息を止めて顔を歪めている。
朝日が昇り空が明るくなり始めた頃に、大きい爆発音が鳴り響いた。
「よし、侵入するぞ! キュイール、リリアのそばから離れんなよ」
俺達は爆弾で崩れた城門を通り、城の内部を目指し走り出す。
「リリア様をお守りするんだから、離れないのは当たり前です! それより爆弾の威力はどうですか! 何か感想があってもいいじゃな――」
「――あーすげぇよ! 今度褒めてやるから、今は集中しろ」
「もう爆弾は使わないでよね!」
リリアは不機嫌そうにキュイールに釘をさす。
城の中は妙に静かだった。モンスターがうようよしているのかと思っていたが、そんな事はなくむしろ綺麗で品格のあるものだった。
俺達は目的のローセルを探し進んでいった。天井が高く広々とした廊下には、羽根の生えた悪魔を形取った石像が飾られている。廊下を抜けると、広間のような場所に辿り着いた。
「これはこれは、随分と乱暴な侵入者ですね。城門を爆破するとは感心しません。どこのどなたでしょうか?」
全身黒ずくめでフードを被った男が現れた。フードと前髪で顔はよく見えない。
「お前がローセルかぁ?」
「いいえ、私はバレフォールと申します」
バレフォールは
「随分お行儀がいいじゃねぇか? 俺は瀬川勇史ってもんだ。今すぐローセルをここに連れてこい!」
「おお、あなたがユウシさんですか……残念ですがローセル様をここにお呼びするまでもございません。あなた方はここで死ぬのですから」
バレフォールは剣を抜き構えた。
「何で俺の事知ってんだよ」
神炎の加護発動【身体能力上昇】【属性解放】【俊敏上昇】【オートプロテクトフィールド展開】
有無を言わさずバレフォールが斬りかかって来た。昨日のバラクとは比べ物にならない程の動きだ。一瞬で距離を詰めて、目にも止まらぬスピードで空気を切り裂き、刃が襲いかかって来る。俺は何とか
かなり強い、昨日のヤツとは格が違う。こいつよりローセルって悪魔のが強いってのかよ、先行きが不安になるな。
「いい反応ですね、なかなかの物です。
すると突然白い大きな鳥が飛んで来て、目の高さまで降りてきた所で翼を残し人の形に変化した。
「ひゃははは! 『リリア・メイデクス』の方頂いちゃっていいのぉ!」
リリア達は真空の刃に襲われ、廊下の向こうに強風で吹き飛ばされていった。それをハルファは追いかけて行く。
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