弟子は魔王

第14話 魔導王国マゼンタ5

　ベルとメグミが魔導学園エスカトーレに入ることが決定し、二人は入学に向けて、文字の読み書きの勉強に勤しんでいる。

　だが、問題が起こった。

　それはおれ自身が教師になってしまったことだ。

　一応、魔法開発研究所にいる俺の信頼できる部下に、教師になったら、俺の仕事の量を減らすように指示をした。

　そうしたら、なぜか所長は俺が辞めると思ったらしく、研究所内は大騒動になり、そのせいで全体の流れが滞り、所長からも辞めないでと涙を流しながら、懇願されるという事件もあった。

　ただでさえ、魔王討伐の際の仕事が大量に残っているのに、仕事がさらに増えたのであった。

　それはともかく、今回の入学に際して、ベルだけでなくメグミの分の身分証が必要になった。

　二人は一応、俺の屋敷で暮らしているからな。

　正直生徒と教師が一つ屋根の下で暮らすのは、何かと問題になると思われていたため、急遽必要になった。

　とりあえず二人は俺の妹ということにして、それぞれリーパーの家名を名乗らせることになった。

　本当は親子にしようかとも思ったが、

「旦那様。ベル様はともかく、さすがにメグミ殿とはどうみても、親子には見えないと思われます」

　とクリスに言われて、それもそうかと親子関係は却下され兄妹という設定になった。

　ちなみにそこら辺のめんどくさい作業はうちの有能執事（クリストファー）がやってくれた。

　本当にいてくれて助かるよ。

　そしてベル達が俺の家に来てから三ヶ月が経って、今日は入学式の前日だ。

　『魔導学園エスカトーレ』

　この学校は世界で一番大きい魔法専門の学校であり、この魔導王国マゼンタの機密文書もいくつか保管されているらしい。

　この学校には、初等部、中等部、高等部があり、それぞれ制服が違うが、制服の胸元にはこの学園の校章でもある六芒星のマークがついてあった。

　ちなみにこの学校では優秀な生徒には飛び級という形で上に上がれる制度がある。

　しかし、逆に年の終わりの試験で合格出来なかった者は上がれないし、そのまま留年することもある。

　学年は基本的には年齢で分け、初等部は五歳から、中等部は十歳から、高等部は十五歳から入れる。

　五年かけて年齢やその者の技術にあわせて魔法を学ぶが、入学は基本的には年齢で分ける仕組みになっている。

　という訳で、ベルは初等部から、メグミは高等部から入学になる。

　メグミも高等部なら、俺の生徒になるかもしれないのか。

　さて現在の俺の状態を説明しよう。

　目の前に束ねられた仕事の書類の山がいくつも出来ている。

　俺がしっかりとした説明を研究所にした結果、研究所側の対応が、俺にしかできないと思われた書類や仕事をとりあえずいつもの仕事と一緒に持ってきたのである。

　これには、さすがの俺でも軽く殺意を覚えた。

　魔王討伐の際のたまった書類だって、まだ残っているのに、大量の書類と研究資料持ってくるあいつらはなんなの？

　悪魔なの？

　ベルやカトレアよりあいつらの方がよっぽど悪魔に見えたよ？

　もう無理です。

　起きていらんない。

　もう3徹なんです。

　おき続けるの無理です。

　寝ます………。

「起きて。お兄ちゃん。朝だよ」

　声が意識によびかける、その声を聴いたマルクトの意識は覚醒する。

　マルクトが目を覚まし、声がした方を確認する。

　そちらを見ると、耳元でベルが未だになんか囁いていた。

　ベルは俺が起きたのを確認すると、クリスとハイタッチをしていた。

　仲いいね君たち。

　ベルはクリスとハイタッチを終えると部屋を出ていった。

　え？　なにしに来たのあの子？

　外を見てみるとまだ真っ暗で、やっぱり朝ではなかった。

　時計を見ると十時だった。

　十五分しか寝せてもらえませんでした。

　せめて一時間くらい寝ていたかった。

　そう思いながら、仕事の書類の束を見て泣けてきた。