第11話 魔導王国マゼンタ2

メグミは、目の前に広がる光景に度肝を抜かれていた。

 三階建ての広い家、広くてよく手入れされていた庭、そして、庭の中心には噴水まであった。

(私ってもしかしてこんなに大きい屋敷でこれから働くの?)

 驚いて困惑しているメグミとは対象的に、ベルはとてもはしゃいでおり、今にも、庭を駆け回りそうな雰囲気を醸し出していた。


「ベル。悪いけど遊ぶのは後にしてくれ」


 マルクトの言葉にすねたように口を尖らせながら、ベルは渋々、マルクトについていき、他の二人も後に続く。


 マルクトに連れられて、家の中に足を踏み入れた瞬間、


「お帰りなさいませ。旦那様」


 十名程のメイド服を着た女性が並んでおり、その手前に一人の初老の男性が立っており、一斉に挨拶をしてきた。


「ただいま。皆に紹介するよ。今日からここに居候することになったベルと、ベルの側近のカトレア、そして今日から住み込みで働くメグミだ。皆仲良くしてやってくれ」


 マルクトの紹介に、ベルは手をあげて返事をして、カトレアは綺麗な仕草でお辞儀をして、メグミは慌ててお辞儀をしてそれぞれ挨拶していた。

 次にマルクトはメグミたち三人のほうに向き直り、


「次に使用人側の紹介だな。このいかにもできますよ的な雰囲気を醸し出している男が俺の執事、クリストファーだ。実際できるやつで、俺も重宝している」


「お褒めいただき光栄にございます。わたくしこの家の執事をしているクリストファーと申します。気軽にクリスとお呼びください。以後お見知りおきを」


 白髪のオールバックの男性がお辞儀をしてきた。


「何か困ったことや分からないことがあればクリスに聞いてくれ」


「「「よろしくお願いします」」」


 その他にも十人のメイドが紹介され、


「最後にクリストファーの娘のクレフィという子がいるんだが、彼女はエスカトーレの学生で今は授業中でいないんだ。帰ったら挨拶してやってくれ」


「わかりました」


 マルクトの言葉にメグミがそう言って、他の二人もうなずいたのを確認してから、続けて言った。


「すまないが、俺もまだ仕事が残っているから、街の案内は難しいだろう。クリス、三人の部屋への案内を頼む。それから、部屋への案内が終わったら、俺の部屋に来てくれ。ついでに、カトレアとメグミの指導担当も決めておいてくれ」


「承知いたしました」


 マルクトは、それだけ言うと、二階の自室に戻っていった。


「それでは、ご案内致します。どうぞこちらへ」 


 三人はクリストファーに案内されて三階の部屋に向かう。

 その道中、メグミが最近気になっていることをクリストファーに尋ねてみた。


「あの、クリスさん。クリスさんに一つ聞いてみたいことがあるんですけど」


「なんでしょう?」


「マルクトさんはどんな仕事をしているんですか?」


 メグミの質問にクリストファーは少し驚いた様子で、


「おや? ご存知なかったのですね。旦那様は、現在、魔法開発研究所の主任を勤めていらっしゃいます」


「魔法開発研究所?」


「はい。新魔法の開発や現存する魔法の研究を主体に行っている施設でございます」


「それでこんな広い屋敷に住んでいるんですか?」


「いえ。それはまた別の話でございます。申し訳ありませんが、さすがにその話は私の口からする訳にはまいりません」


 そんな話をしていると、目的の部屋に着いた。

 中に入ると、ベッドと机と椅子がおいてあった。

 ベルは自室にあるベッドの上で跳び跳ねて遊んでいた。


「わーい。ベッド! ベッド! ふっかふかー」


 と楽しそうな声が聞こえてくる。


「ではお嬢様。夕食の時間になったら迎えにあがります」


 そう言ってクリストファーは部屋の扉を閉めた。


「ではお二方は、着替えて、仕事にとりかかっていただけますか? リーナ、手伝ってさしあげなさい。それと二人の指導係はリーナにお任せします」


 クリストファーがそう言うと、クリストファーの傍らに控えていた、緑髪のリーナと先程名乗っていた二十歳くらいのメイドが前に出る。


「わかりました。私がお二人の指導を務めさせていただきます。ではまずは、採寸を行いましょうか」


 そう言うとリーナと名乗るメイドはやや興奮気味に、二人を引っ張っていった。


「では私も旦那様の元に向かいますかな」



 少女採寸中…


「……大きいですね」


「……ですね」


 リーナとカトレアは目の前の巻尺に記された数字を見て驚いていた。


「……Gカップですか。なぜ十五歳の身でそれほどまで成長なされたのか」


「何食べたらそんなに大きくなったんです? わた…いえ、全国の貧乳で悩まれている方に教えて差し上げるべきですよ」


「もうやめてください!!」


 メグミは顔を真っ赤にして叫んだ。

 メグミの叫びに我にかえったリーナは、メグミに対して謝罪した。


「これは失礼。取り乱してしまいました。一応サイズにあった服はなんとかありましたので、それにお着替えください」


 とクローゼットからメイド服を取り出して二人に渡した。

 二人はメイド服に着替え、リーナの指導のもと、仕事を開始した。

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