第5話 魔王少女4

 現在俺は、魔王城の最奥の部屋にいます。

 おそらく、ここが魔王の部屋だと思われる。

 そうふんでこの部屋に先程入ったのだ。

 ここに来るまで、魔王軍の大勢と連戦したり、魔王軍の大幹部であるスクアーロという魔人との激戦があったが全カットだ。

 なぜなら、魔王の部屋と思われる場所に入ってみると金髪碧眼の先日あった少女がでかい椅子に座っていたではないか。


「あれ? お兄さんなんでこんなところにいるの?」


 俺は頭をかきながら、


「それはこっちの台詞だ!!なんでベルがこんなところにいるんだよ」


「え? だって私魔王だし」


 とふんぞりかえっていた。

 衝撃の新事実である。

 街の破落戸から助けた少女は魔王だったらしい。


「あの、お知り合いの方なのでしょうか?」


 とベルの傍らに立つ銀髪のセミロングで凛とした女性がベルに質問していた。


「うむ。昨日できた新しい友達のマルクトだ。手を出すなよ」


「あの方が……わかりました。お初にお目にかかります。私は魔王ベルフェゴール様の世話係をしているカトレアと申します」


 カトレアと名乗る女性は俺に丁寧な仕草でお辞儀してきた。


「あなたのことは、シズカ様からお聞きしております」


 カトレアの言葉に聞き逃せない単語があった。

 シズカ様?


「シズカを知っているのか?」


「はい。ですがまずはお席にご案内致します」


 そういって二人はテラスにあったテーブルと椅子に俺を案内し、席に座るように促してきた。

 正直魔王討伐にきた俺と、魔王が一緒の席に座るなんて思いもしなかったな。

 カトレアは、紅茶をついで俺たちの前に置き、話を始めた。



 シズカたち勇者一行は当時の魔王、グリルと戦うも、魔王によってシズカ以外全滅。

 魔王をさすがに一人ではどうにも出来ないと悟ったシズカは魔王に殺されると覚悟した。

 だが、魔王は戦意を失ったシズカがベルフェゴールに懐かれたため、やむなくシズカを歓迎した。

 そして、シズカは魔王城にて1ヶ月程暮らす。


 そんなある日、数人の天使という存在を引き連れて大天使サリエルと名乗った緑色の長髪をなびかせた男性が天から現れた。

 天使たちは、魔王はこの世には必要ない存在だと宣戦布告をし、魔王と戦い始めた。

 魔王グリルは、天使たちを圧倒してはいたものの、大天使とは互角だった。

 そんな二人の悪魔と天使の戦いをベルと近くで見ていたシズカ。

 二人に圧倒されていたシズカのもとからベルが父親の元に駆けていく。

 大天使サリエルはベルの姿を見て、魔王の娘の危険性をすぐ理解した。

 危険な芽は先に摘む。

 生かしてはおけないと考えた大天使サリエルはベルに向かって大技を放つ。


 しかし、ベルは生きていた。

 なぜなら、魔王グリルが己を盾にして娘を守ったからだった。

 魔王をうんよく瀕死状態にして調子に乗る天使。

 天使は何発も魔王に攻撃を撃ち込み、ついに魔王は力尽きた。

 魔王を倒したことを確信した天使は魔王を無駄死にだと嘲りながら、天使は再度父の死を嘆くベルに攻撃を仕掛けようとする。

 そんな時に視界に入る人間。

 シズカである。

 シズカは最愛の師に別れを告げて、天使の前に立つ。

 天使はなぜ人間であるお前が悪魔を守ろうとするのかを問う。


「ベルちゃんは私にとって妹のような存在。仲間の死を経験して絶望していた私を支えてくれた大切な存在。だから命をかけて守る価値がある」


 シズカはそう言い放つ。

 その瞬間、シズカの周りに魔力がものすごい勢いで凝縮されていく。

 天使の目は彼女が自分の許容量以上の魔力を使用していることを見抜いた。

 魔力とは血を媒介にして魔法を発動するために必要なものである。

 魔法を使用する際、魔力が足りなければ、魔法は発動しない。

 しかし、己の血を魔力として変換すれば、発動することが可能である。

 それはつまり、己の死を引き換えに魔力を得ているということ。

 天使にしてみれば、やってる行動の意味が分からない。

 しかし、彼女の発動しようとする魔法は自分の命と引き換えに発動しようとしているせいで、大天使サリエルでもまともに受ければ死をまぬがれないであろう一撃だった。

 ここにいては、危険だと判断した大天使は

 

「ここは一時撤退ですね。魔王の娘などいつでも屠れる。君たちは、私のゲート守ってね。よろしく」


 そういった大天使はゲートを開いて中に入るその前に立つ天使たちに向けて放たれるシズカの決死の一撃。

 シズカはベルフェゴールにほほえみ、そして、灰になった。

 シズカの決死の一撃を受けた天使たちも、その場で倒れていた。

 こうして、魔王と大天使の戦いは終わった。

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