第3話 魔王少女2
少女の身体から溢れでる魔力はとてつもない量で、俺は驚いた。
少女から出ている異様な雰囲気のせいで、周りの村人たちは恐慌状態に陥り、逃げ出す者もいた。
そんな中で少女の様子を見ていた俺はあることに気づいた。
これは
「まさか、暴走しているのか?」
もしそうだとしたら、この少女をどうにかしないと、ここら一帯吹っ飛ぶぞ。
そんな思考にかられ、少女に攻撃しようとしたとき、少女の先ほどの発言が気になった。
少女はただ友達を守ろうとしていただけなんじゃないだろうか?
それを俺は、少女が魔物だから、殴られて当然。
むしろ、あの腐った連中のために友達を守ろうとしている少女を魔物だから攻撃すべきだと考えてしまっていたのではないか。
「腐ってんなぁ、俺って奴は」
そう言ったマルクトの目は真剣なものになっており、どうやって少女を守るか考えていた。
あの暴走の原因は大規模術式に少女の技術が追い付いていないから、起こっているのは瞬時に見抜いた。
問題は少女の魔力の量、普通の人間の魔力とは桁外れ、一番手っ取り早くあの少女を助ける方法でやるしかないみたいだな。
「はぁ。危険だから本当はしたくないんだがな。」
そう呟きながら、俺は少女の前に立ちはだかった。
俺は、目の前の少女を救うために自分の魔力を放出した。放出した魔力は光った糸のように一本一本が細い。
その魔力の糸が、少女の周りを漂うように、少女を囲む。それはまるで繭のような
魔力で作られた繭を作りだした俺はその繭で少女を包み込んだ。
この魔法は、発動している魔力を吸いとり、少女の暴走状態を無理矢理抑えこんで、休眠状態にする魔法だ。
周りは唖然としている。
そりゃそうだ。
こんなの魔法に詳しい奴でもそうそうできるもんじゃねぇし。
俺は少女を繭から解き放った。少女は何事もなかったかのように眠りについている。
静かに寝息をたてる少女を見て、こんなに可愛らしい少女を蹴る連中を見逃そうとか、守ってやろうとかちょっと前の俺を殴りたいと思った。
柄の悪い連中はふと我にかえり、その中の一人が俺のほうに寄ってきた。
そいつはカラフルなモヒカンが印象的な三十代くらいのたくましい肉体をした男だった。
「おう、あんちゃん助かったわ。俺はこの辺仕切ってるもんで、ハイルケンいうもんや。とりあえずそんガキこっちに渡してくれや」
「断るよ。」
「あぁ?」
急に喧嘩腰になるハイルケンの顔をみて、俺は、黒髪の娘の方を見た。
黒髪の娘は泣きながら、俺の手の中に眠る少女を助けて欲しいと懇願してきた。
「俺にはこの子たちを守る理由ができた。助けを求める子どもを見棄てるなんて、俺には二度と出来ねぇよ」
そう俺が言った瞬間、地面から拳の形の土が盛りあがり、ハイルケンとその仲間の顎をうちあげた。
ハイルケンたちは、一斉に天高く舞い上がり、地面に頭から激突して悶えていた。
悶えている、ハイルケンたちを見下ろしながら、
「俺の名前はマルクト・リーパー、世界最強の魔法使いの一人だ。文句があるなら、俺に直接言いにきな。いつでも相手になってやる。ただしこの少女たちに次また手を出したら、その時は覚悟しろよ」
立ち上がったハイルケンたちは、顔を真っ赤にしながら、おぼえとけーとテンプレセリフを吐いて逃げていった。
なんかすっきりしたな。
とりあえず、少女と黒髪の娘の治療をするという名目のもと、面倒事に巻き込まれたくないので、彼女達を連れて、宿に戻った。
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