転生貴族のお披露目
お披露目までもっと忙しいと思ったのだが、想定外に暇だった。普通は周辺貴族や親族などの同世代との交流が盛んになり、お茶会だの小規模なパーティだのがあるはずなのだが、全てエルダ姉さんとデリラがシャットアウト。
実は暇なのは僕だけで二人はアーティファクトの作成や転生貴族としての関係者に恐ろしい量の手紙を書き続けていた。
他にも色々あったみたいだけど、隙間をぬっては僕をかまってくれた。
凹んだのは、ダンスや礼儀作法とかの練習が必要なのは僕だけだった。何はなくとも前世での経験値で完璧なまでに磨かれた技術があるのだ。唯一の救いは、ダンスのレッスンで僕と踊るのを二人が楽しんでくれたことだ。
何だかんだで僕は二人が好きなので、出来るだけ楽しい時間が過ごせるようにして、修練を積んだ。
で、今は貴族の集まる成人のお披露目のホールの扉の前にいる。右手にエルダ姉さんが居て、左手にはデリラがいる。僕が最上級の主賓扱いらしい。
二人を同時にエスコート?する関係上、僕の立ち位置は二人に挟まれているが、絶対にエスコートになっていない。むしろ僕がエスコートされている気もして関係が逆転しているのではなかろうか。
二人は完成したアーティファクトを身に着けている。作り出したのはドラゴンのティアラで、ドラゴンの大型の鱗の中心部分にある澄んだ色彩の核の部分を削り出した素材は宝石のような光沢と輝きを持っている。それを潤沢に使って、角から削り出したパーツを片方のサイドに飾りとして付けている。ドラゴンの鱗を使ったとは思えない洗練されたデザインをしていて、エルダ姉さんとデリラのティアラの配色は完全に対象に作られている。かなり色々なデザイン論争があって時々は僕も巻き込まれていたが、最終的にこのデザインに落ち着いたらしい。
エルダ姉さんは誕生日のドレスを手直ししたものを予定通り着用して、深いワインレッドだけど重くない透明感のある色合いに見えるドレスで、以前より身体の線にそって色気がありながら優雅さもあるデザイン。
アクセサリーはドレスの色とぶつからない様にクリアな宝石と紫の宝石を主体として、耳元にはルチルだろうか金属質な輝きのインクルージョンのある石などを使っていた。
髪は丁寧に編み込んでアップでまとめられ、若干の赤みを帯びた金髪が光の具合で濃淡が出て綺麗だ。
デリラも同様に誕生日のドレスを手直ししたものを着用している。淡く光沢のある青と白のコンビネーションのドレスでドレープとフリルの組み合わせで柔らかなで印象を与えている。
アクセサリーは胸元の緑色の宝石、手や耳には別の色を配置して髪や瞳の色を各所に散らしている。
髪の半分は丁寧に編み込んでいるが残りを後ろから垂らしていて、耳のアクセサリーは見えるけど髪が邪魔しないし、動きで揺れるのを楽しむことができる。デリラの髪は赤みがなくて素直で透明感を感じる金髪である。
今、二人が身に着けているもの一式は、ほとんどアーティファクト化されていて、その辺りに時間のかかった原因があるらしい。あと、僕はドラゴン素材のベルトをプレゼントされて身に着けている。
2頭のドラゴンから一番きめの細かい鱗が生えている部位を選び出して組み合わせ、飾りの鋲やバックルはドラゴンの素材を削り出している。これもアーティファクトだ。礼服用と旅装兼戦闘に各1本いただいた。
扉の前でエルダ姉さんの菫色の瞳と目を合わせる。次いでデリラの緑色の瞳と目を合わせる。誰ともなくそろそろ行こうかという気持ちが伝わる。
僕らは三つ子なのだから、一緒に入るのが相応しいと開き直って扉が開かれる。
扉が開かれると会場の全員が一斉に僕らを見る。主要な王族が揃っているのが奥の方に見える。王と妃、王子に親族の公爵あたりは憶えていたので分かった。
王の近くにいる紋章官らしき人物が、僕らを紹介する声を張り上げる。
「煌めく曙光を纏い菫の眼差し持つ、アルダの再来、我らを導きし者、ブランダール伯の長女、マルデインの公爵にしてギーベンスの公爵並びにティエイラの公爵、ツァーリンク公爵、エレルディア・アルダ・ツァーリンク閣下。
輝かしき光輪を背負い新緑の眼差しを持つ、エレナの再来、我らと共に歩む者、ブランダール伯の次女、マルデインの公爵にしてティエイラの公爵、ヤーンバイン公爵、デーリエッラ・エレナ・ヤーンバイン閣下
青き眼差し持つ両閣下の兄弟、ツァーリンクに導かれし者、ヤーンバインと共に歩む者、険しき山にて氷竜を討ち取りし者、ブランダール伯の長男にしてブランダール子爵、アルガルド・ブランダール卿。
尚、本日の肉料理のローストは、ドラゴンの食材をご提供いただきました。」
そういえば成人したから従属爵位の子爵を名乗れるようになったんだ。まだシックリこないな。
キッチリとドラゴンスレイヤーが盛り込まれているほか、姉妹との関係まで網羅されている。たぶん、内容は二人がほとんど考えたんだろう。お陰で周囲のザワザワ感が半端じゃない状態になってしまった。
チラッと二人を見ると満足げに微笑んでる。僕らはそのまま奥まで歩いていく。
僕は打ち合わせ通りに国王へと挨拶をする。他にも数人の人物が僕たちを囲んでいる。
「陛下、お初にお目にかかります。アルガルド・ブランダールです。この度はお招き有難うございます。」
その後、姉妹が続く。
「現世では初めまして陛下。或いはお久しぶりです。エレルディア・アルダ・ツァーリンクとして舞い戻ってきました。マルデイン国王、随分立派になられましたね。」
「お初にお目にかかります陛下。デーリエッラ・エレナ・ヤーンバインとして舞い戻って参りました。ギーベンス国王、憶えていますか幼少の時にあったことを。」
転生貴族という存在を実感して、この中で一番驚愕しているのが僕だった。というか、参加国の国王を呼び出すってどうゆうことなのエルダ姉さん、デリラ。
マルデインとギーベンスの国王が何とも言えない味のある顔をしている。
後で知ったのだけどギーベンス国王は50歳を超えていた。
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