ドラゴン狩りの訓練 教えてデリラせんせー

 一日の後半はデリラが担当する内容になる。


「最初に出会う最大の壁、ドラゴンブレス対策です。」

 なんか嬉しそうで楽しそうな雰囲気だ。前半で疲れた僕にはいいのかも知れない。

「それでですね。まず、アレン兄さんへのプレゼント。特別製の盾です。」

「ありがとう。デリラ。」

 楕円形で母体は上質な霊木製で金属製の縁取りだが、この盾の表面には赤い鱗‐多分レッドドラゴンの鱗が使われていた。

 このサイズと形状なら対人レベルであれば、盾で殴ったり捌いたりといった攻撃的な使い方ができる。

「この盾の基礎強化以外の特別な性能ですが、ブルードラゴンのブレスに対して2重の障壁を常時展開していて、さらに一時的に3重にすることができます。」

 レッドドラゴンの効果で熱に関しては強化されているようだ。ほとんど対ブルードラゴン戦特化兵器とは凄いな。


「あとはアレン兄さんが自力で二重障壁を発動できれば、五重障壁が展開可能になります。

 それだけあれば今回のドラゴン程度のブレスは受け流すことができます。

 本当はどの程度までの攻撃に耐えられるか分かって貰わないといけないのですけど、今回は目をつぶって進めますね。」

 確かにそうなのだ。どれだけの攻撃に耐えらるか理解していないから、いたずらに恐怖心が煽られる。

「なるほどね。半分以上を盾の効果で受け持つなら確かに盾の扱い方だけに習熟することで負担が減るってことか。障壁自体は既存の知識で展開すれば問題ないかな?」

「障壁は今までの魔術とさほど変わりません。障壁の形を変えて多重にすることで複雑化しますが、今回は二重化できればいいので他の課題ほど難しくはないです。

 余裕があれば三重化以上も挑戦してみて下さい。」

 それなら比較的問題はないかな。自分だけ守れる規模の障壁を二重なら、あまり複雑になったりはしないだろう。


「それじゃ、盾の使い方を教えてよ。」

「はい、それでは盾を正面に構えてください。

 他のアーティファクトに関しても同じですが、起動と効果発動に関して感覚的に使えるようにすることが重要です。

 では、いきますよ。」

 盾を正面に構えるとデリラが魔力を流すのが分かる。剣の時と同じようにアーティファクトと繋がっている感覚が発生する。

 盾の表面に障壁が展開されているのが分かる。

 一度経験すると感覚が理解できる。あとは起動を繰り返して慣らしていき、立上げのロスを解消していく。

 不便なようだがスイッチ式やコマンド式より実戦向きらしい。ある程度慣らしてから、次に一時強化の発動をしてもらう。

 大きな卵型を半分にしたような半球の三重障壁が展開する。正面の攻撃から完全に守ってくれる形になっている。

「これに被せるように障壁を展開するのか。」

 一つの障壁は作れたけど、二重だと思うように作れない。

「一度に全部はできませんよ。

 盾と二重障壁を個別に無理なくできるようになってから、同時に使えるようにして下さい。」

 いくら簡単とはいっても比較的ってことだな。順番に慣らしていこう。


「次は幻術ですね。簡単なものは使ったことがありますが、あまり実践的な訓練はしてませんよね。」

 魔術に関してはデリラと一緒にいる時間が長かったので、大体把握されている。因みに僕は武術と魔術を5:5、姉さんは5:3、デリラは3:5くらいの割合で学習している。

「そうだね。悪戯に使ったくらいかな。」

 デリラがクスリと笑う。

「戦闘用の幻影は質が異なります。細部まで作りこみ気配まで演出して、相手を欺かなければなりません。

 影や足跡などが無いだけで気付かれてしまいます。見破られる幻術はやらない方がマシといっても過言ではないのです。」

「そう言えば覚醒して直ぐの頃に姉さんと幻術合戦してたけど、あれの内容はともかく規模と精度は凄かったなぁ。」

 デリラの顔がみるみる赤くなっていく。恥ずかしいのは僕だけではなかったようだ。

「えっ、あっあれは、イメージを直接幻影として投影する戦闘の代用形式です。

 かなりの精度が必要で、技術的にも魔力的にも多くを要求されます。

 姉さんが最終的に馬で帰ったのも幻術の使い過ぎで消耗が激しかったのが要因としてあります。」

 なるほど、直接的な効果はないとはいえ高い技術とそれなりの魔力を消耗するということか。確かに効果ないならマイナスだ。


「幻影を使う用途として、相手から隠れる用途や誤った情報を与える用途、他に連絡やイメージの共有などがあります。

 今回の戦闘中に使用する場合は、得意なパターンを1つでも作るのが良いかと思います。」

 何か聞きたかったんだけど、話題が流されてしまった。

「一番大事なのはイメージです。今回は戦う上で使う幻影のイメージができるまでは基礎的な訓練をしましょう。」

「レッドドラゴン戦のイメージしかないけど、ドラゴンに有効な幻影ってどういうのがあるの。」

「重要な点として、ドラゴンは視覚以外も発達していて魔力の流れも感知します。一度疑念を持たれると看破されると考えて下さい。

 他に白兵でも広い範囲を攻撃できますので距離が大事です。」

「単純に隠れるのは効果が無さそうだね。仕掛けるタイミングも大事みたいだから、演習の中で探っていくしかないか。」

 基礎訓練で自分の幻影を作ったんだけど、何か所も見破られる弱点を見つけられてしまった。

 影がおかしかったり、動きについていけなかったり、アーティファクトを起動したままで幻影との差異に気付かれたり、他にも色々問題があって大変だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る