都会育ちにゃわかるまい
こんにちは。
ここに文を寄せるのは、昨年の8月以来です。
久しぶりすぎて、どういう雰囲気で書き綴ればいいのか忘れてしまっています。
まあ、いいか。
好きなように書いていけばよかろうなのですよ。
かっこよく書こうと思ったって書けないんですもの。
さて。
先日、商店街で野菜の行商のご婦人から立派なフキを120円で買いました。
三日前はスーパーでセリを一株50円で。
今日は激安が売りの八百屋チェーン店で五株で39円の三つ葉をゲットしてほくほくしておりました。
でも、こういうものを買うと、帰宅してから賢者タイムが訪れて綿菓子を作る機械のように胸の奥からもやもやが噴きだしてきます。
私は里山のすぐ近く、のんびりした田園地帯で育ちました。
田んぼの畔で春の七草がすべて揃うのは当然のこと。
近所の川や農業用水路にはセリやクレソンが生い茂り、その土手には野生化した大根やからし菜が花を咲かせます。私はノビルが好きで、春になるとあのころんとした塊茎がでてくるまで熱心に掘っていました。酢味噌で食べると最高ですよね。
春の風物詩のつくしも、炒め煮になってよく食卓に並んだものです。ハカマを取るのは面倒ですが独特の香りがあって季節の到来をしみじみ感じます。草餅を作りたくなれば、そのへんの道端でヨモギのきれいな芽が手に入り、お吸い物の青みが欲しくなれば、庭から勝手に生えてきた三つ葉を摘めば事足り、それが当たり前であると信じて疑わなかった日々でした。
そういう育ち方をしたものですから、市街地に住みエディブルな野草と縁遠くなった今も、三つ葉やセリ、フキやツワブキをスーパーで見ると
「何で雑草にお金出さなきゃいけないの……」
と思ってしまいます。
ほんとに、あのころはセリも三つ葉も、食べられはするけどしょせん雑草だと思っていたんですよね。
市販のつくしや七草のパックなどはびっくりするようなお値段です。スーパーの店頭で見かけるたび、誰がこんなのに金を出すんだと思っていました。
でも、食べたいという思いがけち臭さを凌駕してしまうので、今はお金払って買ってます。育てて出荷して下さっている農家さんのおかげで街中でも食べることができるのはありがたいことで、とても感謝しております。
でもでも、買ってきたセリや三つ葉を手に取ってじろじろ眺めては、湧き上がる
「雑草!」
という思いはアイキャントストップ。その思いとともに、買ってきた「雑草」を冷蔵庫の野菜室へしまいます。食べても食べてもすぐその辺で採取できたあのころとは違うので、大切に大切に食べます。
でも、そこにちょっとだけ楽しみがあります。
水耕栽培で育てられた抽水植物である彼らは根付きで売られているので、育てれば蘇るということ。
茎を少し長めに残して食べたあと、根元を高く掲げて
「これ欲しい人!」
と言うと、娘が挙手するので厳かに渡してあげます。
すると、娘はガラスの空き瓶に水と液体肥料を少し入れ、恭しくそれを挿します。
youtubeか何かで、野菜のきれっぱしをそうやってするとおしゃれに可愛く育つと聞いたらしく、今TV台にいくつかそんな瓶が並んでいます。
大きく育ったら、裏庭に植え替えるつもりのようです。
植物栽培が上手なことを英語で「緑の指(green thumb)」と呼ぶのは有名ですが、対義語で何を育てても枯らしてしまうことを「褐色の指(brown thumb)」や「黒の指(black thumb)」と呼ぶそうです。
私も娘も黒い指の持ち主でして、何の種を撒いても発芽率が異常に悪く、何の苗を植えても枯れてしまいます。
なのに、性懲りもなく色々植えてみては枯らすというのを繰り返しているチャレンジャー親子です。
そんな人間が育てて申し訳ないのですが、エディブルな雑草出身の植物たちには、野草魂を発揮してどんどん茂ってもらいたいです。
お金を払わなくても食べられるようになることを、わりと切実に祈ります。
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