小さな彗星たち

 うちでは金魚を飼っています。

 庭にリサイクルショップで買った衣装ケースを置き、ボラ土を敷いて、季節折々の抽水植物を植えて水を張り、小さなビオトープにしています。


 うちにいる金魚は、どれも泳ぎが早くて丈夫な品種で世話は楽です。

 和金のしっぽが長く伸びたようなスタイルのコメット1匹、コメットの鱗が半透明化した変種の桜コメットが2匹、コメットによく似ているけれどひれがしなやかで、赤・黒・浅葱あさぎの彩りが美しい朱文金しゅぶんきん2匹です。

 彗星という名を持つコメットの方が泳力も気性も強く、朱文金は性格が大人しいので、コメットたちの方がビオトープの中で幅を利かせています。


 もともと朱文金は1匹だけだったのですが、コメット軍団の中でちょっと肩身が狭そうな感じがしたので、だいたい大きさがうちのと揃っている朱文金を買い足しました。

 先住朱文金はマスカラのように目のふちが黒くて別嬪なのですが、新入りは目のふちが銀色で目が小さく、藤子不二雄の絵柄に似てきょとんとした顔立ちです。


 これで朱文金にもお友達が出来てよろしかろう!


と思ったのですが、水慣らし後に新入り朱文金をビオトープへ放してやると、コメット軍団が追い回す追い回す。

「お前、どこ中や?」

みたいな感じです。

 見てたら、先住朱文金もコメットたちと一緒になって新入りを追い回してました。


 お前のために連れて来てやったんやぞ!!


と言いたくなりました。


 しかし翌朝からみんな何ごともなかったように仲良しで、みんなでエサをバクバク食べていました。

 新入りは、先住金魚たちに押され気味ながら何とか頑張って横に流れてくるエサを食べていて、なかなか健気でした。

 今までペットショップの澄んだ水で飼われていたところでいきなり自然のままの青水飼育になって、いろいろ驚いているはずですが、先住金魚たちが水槽内をぶらぶらしているときも追いすがってくるし、先住金魚が物陰でじっとしているときは一人でクレソンやクワイの鉢辺りを探検しているし、なかなかガッツがあります。


 ええ子や~!!


 そして3月終わりから4月初めにかけて、彼らは生殖活動を行っていました。

 なんだか、息子や娘が恋人といちゃついているのを見てしまったような気まずさです。

 とりあえず、産みつけられた卵を採集して隔離水槽で育てることにしました。


 4月終わりには孵化し始め、だいたい50匹くらいはいそうな感じでした。

 最初稚魚はすりつぶして粉末にした金魚のエサをパクパク食べて順調に育っていましたが、気が付くとだんだん減っていっています。

 死体もなく、消えていくのです。

 そのころから、同じように育てているはずなのに、3倍くらい身体の大きな個体が出現したりして、やっとわかりました。


 共食いです。


 共食いするらしいとは知っていたのですが、まさかうちの子が、と思うとショックでした。


 そんなこんなで、今小さいのは小さめのめだかぐらい、大きいのは4cm位になっていて、総勢10匹です。


 さらに、3匹ほどすでに色変わりしています。


 そのうち1匹は、全身真っ白で半透明鱗なので薄く肌が透けています。多分両親とも桜コメットです。


 残り2匹は、半透明鱗かどうかはまだわからないのですが、コメットにはオーソドックスな更紗(朱と白)です。両親は桜コメット、あるいは桜コメット×オーソドックスコメットだろうと思います。


 この3匹以外は、まだ鮒を黒っぽくしたような色で、将来どんな色になるかわかりません。

 もしオーソドックスコメットの子どもだとしたら、うちのコメットは3歳になった今でも色変わり真っ最中というイレギュラーかつレアカラー金魚なので、どういう発色をするか謎です。


「赤白の更紗が上品とされ、体色の全身白の個体は価値がなく、評価が低い」とかWikipediaのコメットの項にありますが、みんな充分可愛いです。

 こういう風にいろんな色柄が出てくるのを見ていると、楽しいし可愛いです。これが金魚を育てる醍醐味なんでしょう。


 このまま無事大きくなってくれますように。

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