極東アジアの朝ごはん
中華スープでちょっと思い出したことを書きます。
約10年前、私は
「日本はきっと中国に追い越される。その底力を感じに行こう!」
とかいう意識髙い系のスローガンを掲げて上海旅行に行ったのですが、このスローガンは意訳すると
「うまい中華料理が食べたい」
だったんだと思います。
何が入ってるかわからないですが、確かにどこで何食べてもおいしかったです。
あ、一つ例外が。
オフシーズンなのにオーダーしてしまった上海蟹は冷凍焼けした味がして臭くてまずかったです。
清潔とは言いにくい食堂に入って現地の人に混じってテーブルに着いてメニューを選んでいたとき、おハイソな感じの中国人女性たちが入って来るや否や
「あらやだ、ここエアコンもないの?」
と悪態をついて出て行きました。中国語はわからないので、大体のことを状況判断でそう解釈したのですが、全く間違っていなかったようです。
店内の人たちは
「何あいつ」
と言った顔で見送った後、レアな存在である日本人客の私に思い切り親切にしてくれました。
現地の人たちが食べているものがやたら美味しそうだったので
「あの人たちが食べてるのください」
と日本語と英語と指差しとでオーダーするとお店の人もお客さんたちもニコニコ。
他人が食べているものを見て
「あれと同じものをください」
というオーダー方法は日本ではあまりお行儀がよくないかもしれませんが、国際的には
「あなたの食のセンスは最高ね!」
という非常に礼儀正しい作法であるということは後日知りました。
海外、特にアジアでホテルの朝ご飯しか知らないのはちょっともったいない気がします。
中国都市部の朝の外食傾向はかなり強く、早朝に中国の街角を散歩すると、大きな鍋とコンロを店先に出して路上でいろんな朝食が売られています。
ワンタン入りスープやおかゆや油条や豆乳などなど。
まるでお祭りみたいな様相です。
私は油条を豆乳につけて食べるのが大好きなので中国や華僑の多い国では必ず朝食に選択します。
好き嫌いはあると思いますが、何といったらいいのか……異国文化を胃に入れたような感じがします。
仕事で行った韓国の釜山でも、ホテルを早朝抜け出してうろうろしていると、街ゆく人がフレンチトーストに似た美味しそうなものを手に持っているのを見かけました。
路地を抜けてその人たちが歩いてきた方向へ歩いていくと、小さな屋台が出ていて先ほどのフレンチトーストのようなものと生ジュースを売っていました。
メニュープレートに写真+英語表記があったので、
「エッグトースト?と桃のジュース下さい」
と英語と身振り手振りでオーダー。
屋台の脇の縁石に座って食べたのですが、エッグトーストはフレンチトーストに酷似した見かけにも関わらず、たっぷりのバター?マーガリン?で鉄板の上で焼いたトースト。食パンを焼いている横で千切りのキャベツ入りの塩味の卵焼きを焼き、それをパンに挟んで紙に包んで渡されました。
見かけよりあっさりしていてなかなかいけました。
その場でがーっとジューサーにかけて作ってくれた桃のジュースも美味しかったです。
「マシッソヨ」(おいしい!)
というと屋台のおじさんはとても喜んでくれました。
ホテルで上司たちと朝会食を摂ったときも、韓国風の朝粥を食べて「これ、中国風でも日本風でもない味がしますね!おいしいです」というとボーイさんがすごくうれしそうに作り方を教えてくれました。
よく吸水させた米をごま油でさっと炒めて、それからことこと水で煮てお粥にするんだそうです。
だいたい、どこの国でも「おいしい」と言うとお店の人は喜んでくれるので、おいしいときはおいしいと言うことにしています。
でもアメリカの人は大凡無愛想でしたが。
とにかく、日中韓の間にはお互いにわだかまりがありますし、それがどうしようもないことであっても、何もかもを十把一からげに貶すのは違うと思っています。
いい人はいい人だしおいしいものはおいしいのです。
ただし、いろいろ気を付けて。
実際、韓国の大都市の一つ、大邱で朝食後公園を散歩して、池を覗きこんでいるときれいな女性に突き落とされかけました。
明らかに池に落とそうとして、私の背後から両手で押してました。
何とか池に落ちずに済みましたが、その女性は何ごとか喚きながら連れの人に取り押さえられ引きずられてどこかへ連れていかれました。
きっと私の美貌に嫉妬したのだ、と思うことにしました。
恐らく日本では気付いてもらえない私の美しさに、海外の人は敏感に反応してしまうのです。
通りすがりの些細な悪意は、私の犯罪的なほどの美貌に起因すると思えば心安らかです。
その他にも、お腹壊したりとかすることもあるのでご注意。
私は都市部では壊したことはないですが華南の農村地帯では
「私もう死ぬんじゃ……」
ってくらいお腹壊しました。
あと何もかもが私の嫌いなパクチー風味でつらかった……
放し飼いされている鶏の茹で卵だけがおいしく食べられるという体たらくでした。
とにかく、いろいろな失敗談があっても、それでもです。
言葉が通じない国で一人で朝散歩して、身振り手振りで欲しいものを買って、朝の空気の中ざわめきはじめる街を見ながら公園で食事する充実感はすごいです。
多分、朝のひんやりした空気と動き出す街の息吹が最高のスパイスになっているのです。
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