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その後の旅は順調そのモノだった。数体の魔物に遭遇したけど、手こずる様な強い個体もいなかった。一日歩いて着いた町ズーランはルクルクの町みたいなトラブルも無く宿で一晩過ごす。出発前に荷物の整理をする為にギルドへ向かう。
「なんだい。兄ちゃん達は冒険者か何かかい」
買取に出した魔物に驚いた職員に聞かれたので適当に肯定しておく。
「なら気を付けな、もうすぐ戦争が始まるって話だ。まったく物騒になっちまったぜ」
商人から王都が攻め落とされたという話が広まっているそうだ。王都と近くの砦に入れ墨をした奴らが集まって来ていると。
「嫌になっちまうぜ。ルクルクにも行けないから子供に魚も食わしてやれないしな――ってちょっと待て、兄ちゃん達どっちから来た」
どうやら困っていたらしいので、俺達が来たときはルクルクの魔物は退治されたと言っておく。
「本当か! そりゃあ朗報だ!」
大喜びの職員がやたらと感謝してくる。話がややこしくなる前に撤退する。
町を出た瞬間、ライトが大きな溜息を吐く。
「あいつら大丈夫だといいな」
おそらく、ミステルとダリル――主にミステルの事だろう。俺には大丈夫だという確信があったので頷いておく。
「大丈夫。ミステルに何かあればすぐにわかる」
「いや。ミステルに関しては心配してねーよ。加護がかかってる間は無事って事だろ」
恥ずかしそうに言い訳をしているが、バレバレだ。
「もちろん。ダリルも無事」
このまま、あの二人のスキルが増えない事を祈る。
「あと少しだ。早く戦争を終わらせに行こう」
「そうだねー」
元気に手を上げているカーミラだが、この戦いで一番辛いのは実は彼女のはずだ。心に誓う。
彼女は殺させない。何があっても。
「そうだな、さっさと行こうぜ」
頼りになる仲間と共にドランの端を目指す。
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