48
宿に帰ると無人のカウンター前にマールがいた。こちらに気付いて近づいてくる。
「お出かけだと聞いて待たせて貰っていました。査定が終わったのでこれを」
渡された小袋を確認すると、中には金貨がぎっしりと詰まっていた。
「全部で金貨50枚あります。ご確認を」
正直相場よりも高いだろう。それにこんなにいらないけど、返すのも何なので貰っておく。
「確かにいただきました」
「それで、討伐の件なのですが――」
「ああ、どっちにしろ北に向かのでご協力しますよ」
「ありがとうございます。何から何まで頼ってしまって」
そうなる事が分かっていたかのような姿勢に引っかかる。嫌な感じだ。
「それでは私は今から大仕事がありますので」
頭を下げて出ていくマールの後を追う様に女将が奥から出てくる。
「あんたかい。少し空けるから何かある時は戻ってきてからにしておくれ」
デカいカゴ持って飛び出して行ってしまった。
「別にー用事なんて無いよー」
カーミラが言うも、まるで聞いちゃいない。
「とりあえずライトを起こして作戦会議かな」
ライトは起こすまでも無く、俺達部屋にいた。
「荷物持っていくにして貰う鍵ぐらいかけていけよ」
椅子に腰掛けながら呆れた顔をしている。
「ああ、以後気をつける」
「気をつけまーす」
ビシッと敬礼したカーミラ見てライトの口元が釣り上がる。
「なんだよ、ミュートが選んだのか。いいセンスだな」
「いや、希望は言ったけど選んだのは店の人。それで、報告なんだけど――」
北の魔物を倒すのが決まった話をする。嫌な顔すると思ったけど、案外あっさりと承諾してくれた。
「まあ、どっちにしろ北にはいくしな……それって今外が騒がしいのは関係あるのか」
ライトが窓を開けると、さっきまで数える程しか人がいなかった道が混み合っている。
「この町ってこんなに人いたんだー」
そこじゃない気もするけど、確かに凄い数の人だ。
「討伐部隊でも組むのか」
「いや、これは――皆、籠を持ってギルドの方に……確かに原因は俺達」
「なんだよ。肉目当てか」
これほどの人数だ、俺達に持ち込んだ肉が大量だろうとすぐに底が見える。
「早い所何とかしないと」
万が一、こんな状況でダークスの兵攻めて来たらひとたまりもないし。
「よし、それじゃあ。明日の朝には出発だな」
「だね――でも魔物の情報が欲しい」
この町の戦力が分からないけど、ほぼ全滅だったはずだ。敵も思ったより強いのかも知れない。
「ここに来てビビっても仕方ないだろ。ドラゴンに比べりゃ怖いもんなんて無いだろ」
「ビビってるんじゃ無くて慎重」
ライトはよほどドラゴンが怖かったのか。あんなに良くしてくれたのに。
「つーか、戦った奴らも重症者が多いみたいな事言ってたして。いって何とかするしかないだろ」
確かにそうだ――いや、待て。
「なら、その重症な人を治せばいいだけ――ちょっと確認してくる」
すぐに部屋を飛び出す。
「待ってよー」
カーミラは短杖を持ってついてくる。素早く行動してくれるのはありがたい。
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