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 宿に帰ると無人のカウンター前にマールがいた。こちらに気付いて近づいてくる。

「お出かけだと聞いて待たせて貰っていました。査定が終わったのでこれを」

 渡された小袋を確認すると、中には金貨がぎっしりと詰まっていた。

「全部で金貨50枚あります。ご確認を」

 正直相場よりも高いだろう。それにこんなにいらないけど、返すのも何なので貰っておく。

「確かにいただきました」

「それで、討伐の件なのですが――」

「ああ、どっちにしろ北に向かのでご協力しますよ」

「ありがとうございます。何から何まで頼ってしまって」

 そうなる事が分かっていたかのような姿勢に引っかかる。嫌な感じだ。

「それでは私は今から大仕事がありますので」

 頭を下げて出ていくマールの後を追う様に女将が奥から出てくる。

「あんたかい。少し空けるから何かある時は戻ってきてからにしておくれ」

 デカいカゴ持って飛び出して行ってしまった。

「別にー用事なんて無いよー」

 カーミラが言うも、まるで聞いちゃいない。

「とりあえずライトを起こして作戦会議かな」


 ライトは起こすまでも無く、俺達部屋にいた。

「荷物持っていくにして貰う鍵ぐらいかけていけよ」

 椅子に腰掛けながら呆れた顔をしている。

「ああ、以後気をつける」

「気をつけまーす」

 ビシッと敬礼したカーミラ見てライトの口元が釣り上がる。

「なんだよ、ミュートが選んだのか。いいセンスだな」

「いや、希望は言ったけど選んだのは店の人。それで、報告なんだけど――」

 北の魔物を倒すのが決まった話をする。嫌な顔すると思ったけど、案外あっさりと承諾してくれた。

「まあ、どっちにしろ北にはいくしな……それって今外が騒がしいのは関係あるのか」

 ライトが窓を開けると、さっきまで数える程しか人がいなかった道が混み合っている。

「この町ってこんなに人いたんだー」

 そこじゃない気もするけど、確かに凄い数の人だ。

「討伐部隊でも組むのか」

「いや、これは――皆、籠を持ってギルドの方に……確かに原因は俺達」

「なんだよ。肉目当てか」

 これほどの人数だ、俺達に持ち込んだ肉が大量だろうとすぐに底が見える。

「早い所何とかしないと」

 万が一、こんな状況でダークスの兵攻めて来たらひとたまりもないし。

「よし、それじゃあ。明日の朝には出発だな」

「だね――でも魔物の情報が欲しい」

 この町の戦力が分からないけど、ほぼ全滅だったはずだ。敵も思ったより強いのかも知れない。

「ここに来てビビっても仕方ないだろ。ドラゴンに比べりゃ怖いもんなんて無いだろ」

「ビビってるんじゃ無くて慎重」

 ライトはよほどドラゴンが怖かったのか。あんなに良くしてくれたのに。

「つーか、戦った奴らも重症者が多いみたいな事言ってたして。いって何とかするしかないだろ」

 確かにそうだ――いや、待て。

「なら、その重症な人を治せばいいだけ――ちょっと確認してくる」

 すぐに部屋を飛び出す。

「待ってよー」

 カーミラは短杖を持ってついてくる。素早く行動してくれるのはありがたい。

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