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 案内された宿は初めに入ろうとした所だった。

「やっぱりあんたらだったかい」

 女将はつまらなさそうにいう。

「この際対応なんてどうでもいい。風呂があってきっちりしたベッドがあれば何でもいいぜ」

「ふん。あんたらがどんな客で何をしたか知らないけどね。こっちはギルド長の命令で仕方なくやってんだよ」

 鍵を2つ放り投げるように渡してくる。

「そうかい。それじゃあ、明日には俺達に泣きながら感謝するぜ」

「それが本当ならこの宿を永久にタダにしてやるよ」

 ライトの挑発に、呆れたように返してくる女将。この先この町での宿と飯はタダが確定した。もう一度来ることがあるかは分からないけど。

 俺達は言われた部屋に行くと、ライトが眠いから起こすなと言って一人で部屋に消えた。

「それじゃあ、カーミラの服を探しにいくか」

「うーん。私はこれでいいんだけどなー」

「駄目」

 ここに来るまでにも、町の住民だろう男共にジロジロと見られていた。

「もう少し露出の少ない動きやすそうなのを探そう。頼む」

 手を合わせて頭を下げるとカーミラは何故がいやらしく笑う。

「それじゃー貸し1つねー」

「分かった。それでいい」

「やった♪ じゃあ行こー」

 店の多い町だが、ちゃんとした服屋は1軒しか無かった。

「珍しいねこんな時に。事情を知らない流れの冒険者かい」

 出迎えてくれたのはロングヘアーのおしゃれな女性だった。他の人と雰囲気が違い明るい表情をしている。

「この子の服を選んで欲しいんです」

「ふーん。これは中々」

 カーミラの上から下までじっくり眺めると大きく頷く。

「よし、ご希望は?」

「動きやすくて露出は少ないやつ」

「へえー彼氏いいセンスしてるよ。この子はスタイルが絶品だからね――今は露出しすぎだし」

 女店員は迷う事無く上下を持ってくる。

「着てみな」

 促さててカーミラは仕切りの奥に引っ込むが、数秒後には出てくる。

 白い厚手の服は大事なところ以外が丸出しだった首から下を隠してくれていた。袖が無いのは動きやすさを重視してくれたんだろう。理想的だ。

 黒いズボンも言うことは無かった。カーミラの綺麗な脚の形が分からない程度にピッタリとしていて足首だけが見える。

「凄い動きやすいしーかわいいー」

 かわいいかは分からないけど似合っているのは間違いない。

「うん。素材が良いとシンプルに限るわ」

 全員が満足したので、それ即決する。

「毎度あり。それじゃあ銅貨5枚ね」

「安すぎません?」

「いいのいいの。好きでやってるから――それにぼったくったところで食料が増えるわけでもないしね」

 その善意だけを受け取る訳にはいかなかった。

「それじゃあ、銅貨5枚と……良ければこれも」

 カーミラの袋に入れていたバルーンバードを一羽取り出す。

「随分と気前がいいね。今この町の市場に持っていくと銀貨5枚にはなるよ」

「服を選んで貰ったお礼です」

「私だけ貰うってのも気が引けちまうね」

 少し困り顔の女店員だけど、そこは安心して貰うか

「それこそ好きでやった事です。それにこの町の食料問題はもう大丈夫だと思いますよ」

「それはどういうことだい」

「俺達が解決するんで」

 助けるつもりも無かったけど、これも出会いだ。死んでほしくない人が一人いただけで救う価値はある。

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