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 山に比べると困難もなく、4時間程でルクルクの町についた。後半2時間ぐらいは魔物どころか、獣にすら遭遇しない順調っぷりだった。

 町の規模の割には人はそこまで多くはないが、必要なものは揃いそうだ。

「活気のない町だな」

 渋い顔をしたライトが言う。

「そうかな。別にそう感じないけど」

「いやいや、ここは港町だろ? なのに屋台も空いてないし客も全然いない。普通もっと観光客とかで賑わってるはずだろ」

 言われるとそんな気もするけど、別にどうでもいい気もする。

「俺たちに関係無い。とりあえず宿を探そう」

 探すまでも無くすぐに見つかった。ライトの言うように観光地なのかそこらにあった。数件ミテ回って風呂付きの宿にする。

「一泊一人銀貨3枚」

「高ぇよ! 3人でほぼ金貨一枚じゃねーか!」

「嫌なら帰んな」

 宿の女将はムッとしているけど、面倒は起こしたく無い。

「お騒がせしました」

 軽く頭を下げて、俺たちは宿を後にする。

 他にも宿があるし、俺たちには最悪テントがある――そう思っていたけど、いくつかの宿を回ってこの町がおかしいことに気付く。

「どこも怖ろしく高ぇ。なんなら初めの宿が一番良心的ってどういう事だよ」

「町単位で何かトラブルでも抱えてるのかもね」

「まあ、そうだろうな。こんな町は通過だ通過」

「うん。でも、袋の中は整理したい。獣とかで一杯。安くても良いから売りに行って、後はカーミラの服を買おう」

「それは賛成だ」

 ゆっくり休めると思っていただけにダメージが大きい。

「今日もテントか」ライトの呟きが虚しく響く。

 ギルドは町のど真ん中にあった。しかも結構大きい。

「やっぱりおかしいな」

「何が」

「普通、こんなデカいギルドがあったらもっと賑わってる。なのに冒険者の一人もいねー」

「暇な時期なんじゃ無い」

 ギルドに入ろうとせずに入口前でライト考え込む。

「なあカーミラ、ダークスの奴らはここまで来てる可能性は無いのか」

 その可能性にドキリとしたけど、カーミラは首を振る。

「それは無いかなー。立地が辺鄙過ぎるし、攻めるとしても最後の方になると思うよー」

「まあ、そうか」

 納得したのか、少し安堵したような表情を見せる。

「こんな所、さっさとおさらばだ」

 ギルドに入ると、中には受付の男しかいない。態度も悪い。

「今来ても依頼は――ってなんだ、子供じゃねーか。一体何のようだ」

 しかめっ面を向けられるけど、だんだん慣れて来た。要件だけ伝える。

「買い取って欲しいモノがあるんです」

「すまねぇが、今この町は買取なんて――」

 俺が山狼を一匹取り出すと、男の目の色が変わる。

「お、おい! お前らもしかして流れの冒険者か!」

「急になんだよ。まあ、そうなるのか」

「そうか! これはもちろん買い取らせてもらう! だから少し待ってくれ」

 やたらと早口でまくし立てられ、奥に引っ込んでしまったと思ったけど、すぐに戻って来た。身なりの良い男を連れて。

「どうも、ルクルクのギルド長のマールと申します」

 きっちりとした挨拶をくれたので、こちらも挨拶しておく。

「コジカの言う事が良く分からないので出て来ましたがこれは中々」

 山狼を一瞥すると、関心したように頷いている。

「旅のお方。他にも魔物や獣の肉をお持ちですか」

「ある、つーか出来ればほぼ買い取って欲しいんだけどな」

 ライトはそう言いながら、自分の持っている拡張袋の中から全ての肉を取り出す。

「それは、こちらとしてもありがたい提案です。もちろん全て買い取らせていただきます」

 そう言ってくれたので俺も袋から全て取り出す。

「あんたら凄いんだな! こんな量を!」

 コジカと呼ばれた男が嬉しそうに一つ一つ確認していく。

「申し訳ございませんが、一旦こちらで査定させていただきますので奥でお待ち頂いても宜しいですか」

「構いません」

 出来れば手早く済ませて欲しいけど、仕方ない。

 奥に案内され進んだ先はやたら豪華な部屋だった。

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