44

「ようやく越えた」

 ライトが息も絶え絶えな様子だ。すぐに休息を提案すると、二人とも賛成してくれた。今日は初めから2つのテントが並べられ、ライトも当たり前の様に俺達と別のテントに入って行く。

「じゃあな、今日はさすがに休めよ」

 言われまでも無くそのつもりだ。実際問題、心身ともにクタクタだ。風呂に入ってベッドに倒れ込むと睡魔に負けた。


 朝、肉の焼ける匂いが空腹を刺激して目が覚める。隣に温もりが無い事に気がついて外に出ると、予想通りカーミラが肉を焼いていた。視線バレたのか、すぐに気付かれた。

「ミュートおはよー」

 肉をひっくり返しながら手を振ってくるので振り返しながら近づく。

「ご飯作ってくれてるんだ。ありがとう」

 朝から肉か。とは思ったけど、それは封印だ。重いとは思うけど、食べれない事もないし。その作業を眺めていると、ライトも出てくる。

「朝から肉とか天才かよ」

 嬉しそうにな表情を見ると大丈夫なようだ。

「もう出来るよー」

 その言葉通り、数分もしない間にカーミラはいい感じに焼けた肉を皿に盛った。

「美味いな」

「うん。絶妙」

 料理下手そうだと思っていた訳じゃないけど、焼いただけの肉は焼き加減も味付けも素晴らしいかった。あまりの美味さに忘れそうになったけど、次の行き先を相談だ。

「山を越えたから、次の目的地はこの町だな」

 ライトが指した場所は海に面するルクルクという町だ。

「とりあえず、袋の容量もいっぱいだし、ちゃんとした休みも取りたい。後はカーミラの服も何とかしないとな」

 その意見は賛成だ。

「えー。この格好気に入ってるのにー」

「そういう問題じゃ無くてだな。まず目立つんだよ」

 今は他人に出会わないからいいけど、人が

いるところでは目を引く。

「ここらは馬車道だし、歩きやすいからすぐ着くぜ」

 魔物は多くは無いけど強いらしい。ただし、越えてきた山ほどでは無い。

「それじゃあ、腹も満ちたし行くか」

 片付けを手早く済ませてまた動き始める。歩いている間は暇なので作戦会議や、知識のすり合わせをする。

「俺達が向かってる間に戦争が激化しないといいな」

「それは大丈夫だよ。あの砦を取るのに私達も結構消費したし。しばらくは回復と補充で忙しいからー」

 確かに、あの砦はに強者が沢山いた。敵も無傷な訳はないか。カーミラの説明で一つ思い出した事ある。

「そういえば、ダークスの人達は回復が早いの?」

「え? そんな事ないけどー。どうして」

「俺達が戦った奴の傷の治りが以上に早かったから」

「それはそいつの加護だよー」

「スキルは無いんじゃ無かったのか」

「スキルじゃ無くてー、私達の加護はそんな感じなの」

 言われて見ると、ダークスの奴らの加護は"生命"だとしか聞かされていなかった。

「そうか、一人ひとり違うのか」

「そうだよー。私は人よりも身体能力が高いの。さっき言ってたのは回復が早い奴。後は違う人に変身出来る奴がいたり、やたら耳が良い奴とか、パパは凄く頭が良いし色々いるの。でも、本来の加護は他の国の人よりも長生き。千年くらい生きる人もいるよー」

「それは寿命長いってだけ?」

「痛みとかにも強いかも、ミュート達じゃ死んじゃう怪我でも、多分私達なら耐えれるかなー」

 なるほど、思ったより厄介そうだ。

「でもー不死身って訳じゃないから、攻撃し続けたら大丈夫ー」

「大丈夫っつてもな――おっと、前方に魔物だ」

 ライトが素早く銃を構えて俺たちも戦闘準備をする。

「コアトルだ。毒に注意――」

 ――魔物に手こずる事も無く、俺たちは順調に進んで行く。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る