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下りは登りと違い過酷だった。
頻繁に出てくるロックリザードに加え、山狼の群れがいたのだ。それも山のように。
事実、全ての死体を積み上げると山になった。
「ドラゴンの加護が無かったらヤバかったかもな」
幸いだったのはドラゴンの加護がこの戦闘で判明したことだ。まるで3つ目の瞳が空にあるかのように、全体把握能力が増したのだ。これは俺よりもライトが喜んでいた。
「随分と気に入ったね」
「俺の能力と相性が良いからな」
確かに使いこなせば、これまで以上に精度が上がるだろう。
「頼りにしてるよ」
「おう、任せとけ」
魔物達の処理も終わり、更に下っていく。さっきの場所が一番の群れかと思っていたが、甘かった。
「止まって」
いつに無く真剣な声と表情のカーミラを見て俺達は息を潜める。近くにあった岩の陰に移動する。
あれだけいた山狼がさっきの二倍ぐらいいた。
「あれは無理」
一匹の強さはそれほどでも無いけど、群れると強い。一番の難点はこちらが休めない事だ。この半分ですら全滅させた時には3人とも肩で息をしていたのに。
「範囲魔法持ちがいないのが辛いな。せめてデカい木があればな」
「でも、この道しか無いからなんとかしないと」
もう数時間もすれば日も沈む。それまでには下山しておきたい。こんな所で足止めをくらう訳には行かないのだ。
「仕方ないなー。あんまり使いたく無かったんだけどなー」
カーミラはそう言って一枚の紙を取り出す。
「テントなんて取り出して何するんだよ」
「見てればわかるよー」
カーミラは一人岩陰から出て、山狼と対峙する。それに気付いた山狼達が一斉にカーミラに襲いかかる――前に突如、炎の渦がその群れを焼いていく。
「すげぇ」
炎の嵐が一瞬にして道を空けた。骨すらも残っていなかった。
「その紙、そんな事も出来るのかよ」
「うん。でもー、これは魔法を封じ込めた護符だから1回しか使えないんだー」
少し残念そうにしているカーミラを見ると貴重なモノだったんだろう。
「ありがとうカーミラ。おかげで先に行ける」
下を向いてるその頭を撫でると、少し機嫌を戻してくれた。
その先は何度か魔物に遭遇したけど、手こずる程のヤツは出てくる事も無かった。空が赤くなる頃、俺達は無事に山を攻略した。
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