36
とりあえず目的が決まった所でカーミラが一枚の紙をライトに渡す。
「なんだよコレ」
「テント」
短くそれだけ言うとライトを見つめたまま固まる。
「はいはい、そういう事ね。これでもう一個テントを建てろと。そうだよな、さすがにさっき出会ったばかりの奴らは信用できないわな」
それに納得して俺も出ていこうと思い立ち上がると、腕を引っ張られる。
「ミュートはここにいて」
俯いて頬がほのかに赤くなっている。
「わかったよ。俺は一人で寂しく寝るよ」
何かを察したかのかライトが出ていく。
「ごめん、カーミラ。すぐに戻るから」
「絶対だよ」
ひらひらと手を振る姿を背にして、ライトを追う。
ちょっと離れた所にあるスペースにテントを設置していたライトを捕まえる。
「なんだよ、初めてでビビったのか」
いやらしい表情で茶化してくるけど、気にしてられない。
「ミステルはどうするんだよ」
「あいつには隙をみて親の所に帰れって言ってる」
「なんで――」
「いいんだ。これ以上危ない目にはあって欲しくないんだ。幸いスキルは常にかかってるしな」
その目を見れば分かる。ライトは覚悟を決めているんだろう。
「ありがとうライト。俺なんかに付き合って貰って」
「馬鹿言うなよ、これは全部俺の為だ。もうあんな思いは懲り懲りだ」
何の事を言っているかはすぐに分かった。それは同じ気持ちだ。
「ああ、俺もだ。一刻も早く戦争を終わらそう」
悲しそうに薄く笑うライトはテントに入って行く。
「早く戻ってやれよ色男」
何か言った方がいいのか分からずにテントの前で立ち尽くすが、結局何も言わずにカーミラの元に戻った。
「話は終わったの?」
いつの間にか用意されていたベッドの上で寝転がるカーミラだったけど、服装がさっきよりも軽装――いや、薄手になっている。透けて肌がほぼ見えている。
「いつの間に……」
誤魔化すように言うけど、どうしても目が行ってしまう。
「そこから出た所にお風呂繋いだよ」
カーミラが指した場所からは、確かに熱気が出ていた。身体はボロボロなのでありがたい。お言葉に甘えて入る事にする。
思ったよりもしっかりした作りで湯船まである。
「ダークスの技術は凄いな」
「そうでしょ。凄く便利なんだから」
一人で関心していると後から声が聞こえる。咄嗟に声の方を見ると裸のカーミラが立っていた。その引き締まった体に思わず見惚れる。
「あんまりジロジロ見ないでよ。エッチ」
「ごめん。一旦出るから先に入って――」
全てを言い終わる前に俺の口は塞がれる。息が出来る様になると、目の前にカーミラの顔が見える。
「もっとミュートの事が知りたい」
潤んだ瞳は真っ直ぐに俺を見つめてくる。俺の答えは決まっている。
「そんなの俺もだ」
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